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【社会】

<つなぐ 戦後74年>忘れない 伝えたい 平成生まれ4人に聞いた

 元号が令和となって初の終戦の日を迎えた15日。平成生まれの若い世代は、家族から伝え聞いた戦争の記憶を引き継ぐ決意を語り、世界で今も続く戦争にも思いを馳(は)せた。(石原真樹、梅野光春、小倉貞俊、柏崎智子) 

◆父の思い受け継ぐ @文京シビックホール 松原瑠子さん(11)

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 東京都北区の小学5年松原瑠子さんは、父の義孝さん(54)が全国戦没者追悼式を毎年手伝っていることが不思議だった。祖父の兄は戦死したが、祖父は特攻隊で出撃する前に終戦になり、助かっていた。父に理由を尋ねるとこう返ってきた。「おじいさんは戦争で亡くなった方への思いが強かった。熱心に遺族会の手伝いをしていて、その気持ちを受け継ぎたいからだよ」

 15日、文京区の文京シビックホールで開かれた都戦没者追悼式に遺族代表として出席。追悼のことばでこのエピソードに触れながら「私も父の思いを受け継いでいきます」と誓った。

◆兵器使ってはダメ @十思公園 奈良英紀さん(13)

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 東京都中央区の中学1年奈良英紀さんは、友人と十思(じっし)公園(同区)の鐘つきに来た。10歳のころ初めて母と来てから、「戦争で亡くなった方の供養になるように」と毎年、足を運んでいる。

 近所に住む祖母から「戦時中は食料がなく、田舎の親戚からもらっていた」と体験を聞いた。小学5年で東京大空襲や学童疎開を学んだこともあり、「戦争があると民間の人も苦しむ。だからよくない」と考えている。

 戦闘機や軍艦を見て、かっこいいと感じることもある。「でも見ているだけでいい。兵器を使ってはいけない」と語った。

◆戦争の悲惨さ学ぶ @千鳥ケ淵 岡本拓真さん(14)

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 東京都大田区の中学3年岡本拓真さんは「戦争について、もっと詳しく知りたい」と昨年に引き続き、父の隆晴さん(47)と一緒に、千鳥ケ淵戦没者墓苑(千代田区)に足を運び、手を合わせた。

 海軍の兵曹長だった拓真さんの曽祖父の弟は、終戦の年の5月、南方の海域で戦死した。

 遺骨も残らなかったと聞き、「何て残酷なことが起きたんだ」と痛感。学校で学ぶだけでなく、戦争に関する映画や本を通じて理解を深めている。時代は平成から令和になったが、「決して忘れることなく、僕たちが伝えていかなければ」と思いを強くしている。

◆争い生む種身近に @中野の映画館 嶋田康平さん(28)

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 東京都中野区の映画館「ポレポレ東中野」で政治をテーマにした映画の特集を見に来た足立区の嶋田康平さんは「平成の間、日本で戦争はなかったが、世界ではテロや紛争が頻発し、自衛隊も海外派遣された。終戦記念日だから特別に考えるというより、戦争は今も続いていることとしてとらえている」と話す。

 高校時代、パレスチナ・ガザ紛争に衝撃を受け、大学生になるとイスラエルやルワンダを訪れた。卒業後は公務員になったが、今年7月に退職。「人と人の争いを生む種は、貧困など身近な生活にある。研究機関など解決に携われる仕事をしたい」

 

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