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 待機児童解消のための保育施設の整備は待ったなしだ。ただし、安心して子どもを預けられることが大前提だ。

 企業が主に従業員向けに整備する企業主導型保育所について、内閣府が審査の厳格化などの見直しを進めている。補助金をめぐる不正や大幅な定員割れなどの問題が相次いだためだ。

 安定的な施設の運営や質の向上に向け、改善を急がねばならない。

 企業主導型保育所は認可外施設の一つで、企業が設置する方式と、保育事業者が設置した施設を企業が利用する方式がある。主にその企業の従業員向けだが、地域の子供を受け入れることもできる。

 全国の企業の拠出金を原資に、施設の整備には認可施設並みの補助金が出る。このため16年度の制度導入以降、急速に増え、待機児童解消の「切り札」と言われた。「子育て安心プラン」(18~20年度)で目指す32万人分の保育の「受け皿」整備のうち、6万人分を占める。

 ただ、急激な増加に審査や指導・監督体制が追いつかず、経験が乏しい事業者の安易な参入も指摘されている。自治体の整備計画と無関係に企業がつくるため、地域の保育需要とのミスマッチも目立つ。

 このため、内閣府の検討委員会が3月に改善案をまとめ、施設を新設する保育事業者や、企業が運営を委託する事業者に、5年以上の事業実績を義務付けることが盛り込まれた。審査の際には書類だけでなく、必要に応じてヒアリングや現地調査を行うことなども求めている。

 手厚い助成を受ける以上、質の高い保育や安定的な運営が求められるのは当然だ。問題は、それをどう担保するかだ。

 例えば、審査時のヒアリングや現地調査はどんな場合に行うのか。それを実施できる人手をどう確保するのか。これまでは審査などを担う機関に任せきりだったが、審査基準を明確にし、国や自治体も関わりを強め、支援すべきだ。

 とりわけ自治体との連携は重要だ。今でも、事前に地域の保育需要を確認することになっているが、徹底されていない。自治体の関与をルール化することや、各施設が利用状況などを自治体に定期的に報告する仕組みが必要ではないか。

 事業者への指導・監督も、審査などを担う機関によるものと自治体によるものがあり、わかりにくい。検討委は改善案で、合同での立ち入り調査や情報共有の必要性を指摘した。度重なる指導をしても改善しない場合、国が直接、指導・監督することも求めている。いずれも具体化を急ぎたい。

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