2019年07月27日
その45身体はボロボロ
2016年8月下旬の土曜日、哲学青年と私は朝起床した。私の両足は薄っすらとアザができていた。哲学青年は肉体的暴力をしていない。断薬されたこと自体暴力ともいえるが……。私たちは身支度して不動産屋に行った。8月の終わりなので雨が降っていた。私たちは傘をさして歩いた。
何だろう、身体の感覚がおかしい。これは断薬による離脱症状だ。私は真っ直ぐに歩けなかった。哲学青年は不動産屋に行く道を遠回りにするように判断した。これは仮説だが、哲学青年は私をマインドコントロールの魔術を使って拉致監禁をしている。もし私が警察官に目が付いたら哲学青年は犯罪者となる。哲学青年は警察にばれないように交番を避けて遠回りしたのだ。
このころの私は大人しい。自分は断薬でおかしくなっていることは自覚していた。頼るべきは哲学青年の判断だった。だから周りから見れば貞淑な女性と意外と男らしい性格の哲学青年、古風な仲の睦ましい男女だっただろう。だから不動産屋に行って私たちは不動産屋の社長に気に入られた。哲学青年は初めて自分の名刺を不動産屋の社長に渡した。あれ?哲学青年、名刺持っていたんだ……。
後でわかったことだが、哲学青年は裏稼業に近い法務事務所に勤めている。だから哲学青年は安易に名刺を出してはいけない。ここで名刺を出すということは遊びではない証拠だ。哲学青年は犯罪級のことをしでかし私は重度のPTSDとなるが、哲学青年の唯一の救いは本気だったこと。哲学青年は犯罪を犯してまで私と結婚したかったのだ。これをひとくくりにいうと欲動という。
とにかく何故か私たちは不動産屋の社長に気に入られた。私と哲学青年の関係がロマンスに見えたのだろう。本当はホラーサスペンスですが。不動産の打ち合わせ後、私たちはいつものカフェに行った。カフェのみんなに祝福された。私は幸せだった。しかし身体の離脱症状がひどい。だから今夜も八王子の魔術師の医者に行く。
時間になって八王子駅に向かった。哲学青年は相変わらず駅ビルにあるアザラシキャラの専門店が苦手だ。何故こんなにも愛らしいアザラシの赤ちゃんが怖いの?哲学青年はこう言う。
「僕は攻撃しないものが一番怖い。」
私たちはもうすぐ赤ちゃんが産まれるカフェのマダムのためにそこで赤ちゃんのよだれかけを買った。
そうして八王子の魔術師の医者の診察を受けた。医者は私と哲学青年が痩せたことを教えてくれた。私の身体の離脱症状はヘルペスと身体に残っている薬のせいだと言った。これは完全にペテンだ。詐欺です。私と哲学青年の診察を終えてから医者は今日見た新居は良くないと言った。そして明日相模大野の不動産に行くことを勧めた。
病院を出てから私たちは韓国料理屋のサムゲタンを食べた。どんどんやせ細っていく哲学青年と私。少しでも栄養をつけなければいけない。この時期は本当に過酷な日々だった。断薬のせいで私は苦しかったが、マインドコントロールの魔術を使って私を拉致した哲学青年も犯罪のプレッシャーで苦しんでいた。
ただ性というものは充実していた。私は哲学青年がいるから女性らしく、哲学青年は私がいるから男らしく振舞える。本当に仲睦まじかった。しかしその日も男女の営みは不十分だった。哲学青年は悩み始めた。哲学青年は完全に契りをかわせないことに苛立っていた。