2019年07月27日
その47哲学青年との最後の日後編
疲れ切った私と哲学青年は夕方まで眠っていた。そのとき地元の不動産屋から連絡が入って、いい物件があるとのこと。私と哲学青年は不動産屋に歩いて向かった。私たちは力を振り絞って生きている状態だった。
不動産屋の店に着いて、不動産屋は現地まで車で連れてってくれた。新居候補は駅から遠いけど素晴らしかった。空気はキレイで夜景も宝石を散りばめたよう、しかも新しいアパートだから作りはちゃんとしていて、階段も申し分ない。同じく3DK、最高だ。
ところでこんなにも安い優良物件にはマイナスの理由があった。お墓のそばなのだ。紹介されたアパートは2階だし、お墓といっても大きいものではないし、微妙だ。でも住んでもいいかもと思った。駅から遠くてもスーパーや薬局が近くにある。候補だ。
車で不動産屋のお店に戻って私たちはインド料理屋さんでカレーを食べた。哲学青年の元気がない。薬の切れた私より、哲学青年のほうが病んでいた。そして交番を避けて歩き、哲学青年のアパートに着いた。
明日は月曜日、哲学青年の仕事もあるし、だから早く寝なければならない。私たちは入浴して歯磨きをして寝ようとした。でも哲学青年、コンタクトレンズを外そうとしない。哲学青年は己の罪に苦しんでいた。私が哲学青年を抱きしめてなだめても哲学青年は苦しそうだ。セックスはその日も不完全だった。私たちの男女の営みは4日も失敗しているのだ。明日から平日なので私たちは眠った。
夜中、哲学青年は急に寝ている私を襲った。私の身体はボロボロで、そんなことしたら心臓が止まって死ぬかもしれないのだ。それでも構わずにセックスを強要した。私は逆らえなかった。哲学青年の眼は金色にギラギラ輝いていた。もう、この人は人間じゃない。変に抵抗すれば殺される。私は人形になるしかなかった。それまでの哲学青年との性行為に快楽は有ったが、このときばかりは苦痛以外何ものではなかった。時計をチラリと見て午前1時30分、午前4時30分、3時間かかってやっと男女の身体の関係は成立した。
哲学青年は野獣からもとの哲学青年に戻った。不気味なほど優しい。短い睡眠をとったと同時に私はわかった。この人は狂っている。自分の欲望のためなら私を殺してもいい人なのだ。その証拠に私の右足の足首に大きなアザができていた。