絶好機だった。ゴールのイメージもあった。前半5分。左クロスがこぼれると、カズがいた。左30度、GK朴と1対1。「上を狙った。うまく当てられればと思ったけど…」。朴の鋭い飛び出しを見極めた上で、左足を強振した。ボールはわずかに左上へ外れた。「決めたかったね」。天を仰ぎ、顔をゆがめた。
移籍後初先発の中村とカズが先発で初めて並び立った=写真。2人が最後に同時出場したのは、2000年6月6日のハッサン2世杯の日本-ジャマイカ戦以来、実に19年ぶり。合計93歳レジェンドコンビの令和初共演ダービーに1万2489人の観衆は沸き、カズは「幸せないい時間だった」と感慨深げだった。
ただ、2人は守備に追われ、パス交換、敵陣でのコンビネーションはほんのわずか。「カズさんのすごさは自分が一番分かっている」と自認する中村だったが、得意のラストパスを供給できず、「カズさんに出せなくて残念」と肩を落とした。
逸機が響き、前半だけで2失点。劣勢の雰囲気を押し返そうと、前半36分にはカズが和田と激しくやり合ったが、あと一歩、届かなかった。「次はリーグ戦でも勝てるように」とカズ。中村との共闘で、13年ぶりのJ1昇格だけを見据えた。 (松岡祐司)