---------------------------
----N----117------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
(咲太郎)俺は 母ちゃんの子どもになれて本当に幸せだったな。
(亜矢美)何言ってんの 今更…。
母ちゃんに会えなかったら俺は 確実に死んでたからな。
母ちゃんが 俺にただ生き延びるためじゃなく生きることを教えてくれたんだ。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
母ちゃんが 俺にただ生き延びるためじゃなく生きることを教えてくれたんだ。
ムーランルージュに引っ張り込んだだけだろ。
いや それだけじゃない…いろいろあったことを忘れたのかよ。
あ… 忘れちゃったね昔のことは み~んな。
あ… だけど お前は確かに金もうけのことしか考えないマセガキだったね。
ねえ… 何で それ読まないんだよ。
こんなもん読むより体動かして 金稼がないと妹たちを迎えに行けないんだよ。
お前ね… お前が バカなまんまで妹たち迎えに行ったってどうやって養うの。
いいかい 頑張って これ読んでで もし 分かんない字とか言葉があったらいちいち これで調べるの。
それだけで だんだん世の中のことが分かっていくから。
そんなことより進駐軍の前で踊った方が手っとり早いよ。
バカ!進駐軍だってね バカじゃないんだよ。
お前の下手くそな踊りに喜んでいつまでも かわいがってくれるわけじゃないんだからね。
咲太郎 人を本気で楽しませたいって思うんだったら本気になって勉強しな。
母ちゃんがいなかったら俺は バカなままだった。
バ~カ。 まだ バカは治ってないんだろ。
あっ そうか ハハハ…。
大バカだもん。ハハハ…。
♪~(「鐘の鳴る丘」)こんな歌が はやってんだね…。
(鼻をすする音)
泣いてんのかい?
この歌聴くと 何か悔しくなんだよ…。
そっか… 孤児院の歌だもんね。
咲太郎。
こっち おいで。えっ?
ほら おいで。
ちょっと… 何すんだよ。いいから。
お前だってさ親を亡くした一人の子どもなんだからさ人に甘えて 泣いたっていいんだよ。
私をさ お母ちゃんって呼んでごらん。
いいよ…。
いいから 呼んでごらんって。
ここは劇場だよ… ムーランルージュ。
私たちは 何にだってなれるんだから。
演じられるんだから。
ほら 母ちゃんって呼んでみな。
母ちゃん…。
何だい 咲太郎…。
母ちゃん 母ちゃん…。
母ちゃん…。
♪「鐘が鳴りますキンコンカン」
♪~
母ちゃん…。うん?
母ちゃんと俺は 何も変わらないからな。
分かってるよ。これからも変わらず 偽物の親子だろ。
偽物じゃないだろ もう…今度は 俺に甘えてくれよ。
変に遠慮なんかしたら 承知しないからな。
だったら だったら じゃあ…また ムーランルージュを建てておくれよ。はあ?
あの舞台で また踊ってみたくなっちゃったな。
母ちゃん それは もう無理だよ。母ちゃん もう50だぞ。
だから 死ぬ前にもう一回 踊ってみたいんだろうが!
おい 母ちゃん…。ああ 踊りたい…。
よし 分かった。えっ?
俺に任せろ。 昔の俺とは違うんだ。
思いっきり 親孝行してやるよ。
そりゃまた… うれしいね。
♪「紅いルージュに」おお…。
(坂場)君の誕生日といえば…もうすぐ 8月15日か。(なつ)うん…。
いろんなことを忘れないためにあるような日だな。
うん… だからね私は 誕生日が来る度に亡くなった父や母のこと周りにいた人たちのことを自然に思い出す。
近頃 あれから何年がたつんだなって思うようになってる。
気持ちいい?(千遥)うん 気持ちいい。
おい なつ!どうしたの?
戦争が終わったみたいだ。えっ?
日本は負けたらしい…。
今日は8月15日 なつが生まれた日だな。
あっ そうだ…。
(信哉)そっか なっちゃん 誕生日か。
うん。
おめでとう お姉ちゃん。
♪~
ねえ…。うん。
どうした?
また 千遥に会いたくなっちゃった…。
今は 僕がついてる。
ねえ… もし 子どもが生まれて…。
私たちの子どもは 幸せになれるのかな…。
なるよ… なるに決まってるだろう。
♪~
うん…。
(荒井)やるか?お願いします。いや お願いしますって…。
茜さん 大丈夫ですか?
(茜)ちょっと 夏風邪をひいたみたいで…。
えっ。風邪薬をのめないからね 今は。
治りが遅いのよ。あっ ちょっと すいません…。
熱があるんじゃないですか。早く帰った方がいいですよ。
あ 大丈夫…今日中に この原画までは仕上げないと。
どないしたん? 何かあったんかい?
茜さん 風邪をひいてるんです。今日は帰らせて下さい。
風邪か。あ… 大丈夫です。
ほんま?ほんまじゃないですよ!
ただの体じゃないんですよ!すぐ帰らせて下さい。
いや せやけど…。茜さんの分は 私がやりますから!
ほんま?ほんまです!
呼んでくる。あ… ありがとう。
下山さん。(下山)おお どうした?ちょっと。
えっ? あっ ごめん。
下山さん 茜さん 風邪ひいて少し熱があるみたいなんです。
家に帰らせて下さい。
大丈夫?大丈夫じゃないですよ。
早く帰って休ませて下さい。
(神地)ねえ どうしたの?茜ちゃん 何かあった?
あっ いや ううん 何でもないから…。
下山さんが送って下さい。
私は 今 ちょっと仕事があって無理なんで…。
なっちゃん! 本当に もう大丈夫だから。ただの風邪だから。
でも…。
あんまり大げさにしないで。仕事を続けにくくなるから。
ごめんね 私の仕事まで押しつけちゃって。そんなことは…。
そこまでは送っていくよ。うん。
ごめんね…。
大変だな 働きながら子どもを産むのは。
♪~
それから 8月15日を迎えました。
♪~
(亜矢美)咲太郎 光子さんなっちゃん イッキュウさんこの4人の前途を祝して かんぱ~い!(一同)かんぱ~い!
ちょっと待って下さい!
亜矢美さんも おめでとうございます。何で?
お兄ちゃんの家族ですから。
(藤田)そうだ!よくぞ 咲太郎を ここまで育て上げた!
(松井)よっ 亜矢美母ちゃん!
(島貫)よくやった! おめでとう!(レミ子)おめでとうございます!
おめでとう。ありがとうございます。
ママ やっと これで面倒な子どもが片づいたね。
ハハ 本当。そりゃ そうだ 本当 本当 ハハハハ…。
母ちゃん 長い間 お世話になりました。
バカだね それは男のセリフじゃないだろ。ねえ ハハ…。
なつよ 母になるのも悪くはないぞ。