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![]() 【埼玉】<つなぐ 戦後74年>若者が思う戦争 埼玉大、体験者から学ぶ授業
埼玉大(さいたま市桜区)で、学生が戦争体験者から話を聞いて感じたことを議論する授業が、10年目を迎えた。今年は、さまざまな学年、学部の計41人が受講。学徒動員や沖縄戦、軍事教育などのテーマを学び、発表した。授業を通じ、今の若者たちは何を思ったのか。3人の受講生に聞いた。 (浅野有紀) ◆選択肢のない時代だったんだな 秦朱里さん(18)教養学部1年
「この世界の片隅に」など、戦争がテーマの映画を多く見る機会があり、関心を持ちました。授業では「女性が家を守る」ことが求められた時代を生き抜いた方のお話を聞き、「本当はもっと勉強したかったのに、できなかったのがつらい」という言葉が印象的でした。選択肢のない時代だったんだなと。戦争はだめだと分かっていても、憲法に自衛隊を明記するか否かの問題は、今のところは正直よく分からないです。どうして日本が戦争に向かうことになったのかをもっと勉強する必要があると感じました。 ◆「負の歴史」という視点足りない 磯田静菜さん(18)教養学部1年
英語の教師や日本語講師を目指していて、日本の戦争責任について知っておきたいと思いました。現在の義務教育の内容には、戦争は「負の歴史」という視点が足りないと考えます。教育基本法には「教育は不当な支配に服することなく(中略)行われるべき」とあります。不当な支配とは、軍事教育のように、政府が教育に介入してはいけないということのはずです。戦前、戦中と同じ失敗を繰り返さないよう、学習指導要領に縛られすぎず、教員が子どもたちに伝えたいと感じることを授業で取り上げても良いと思います。 ◆沖縄の基地問題、考えてみたい 樋口寛大さん(19)経済学部1年
体験者から戦争を学ぶ機会はなかなかないと思い、選択しました。沖縄戦の被害を調べ、集団自決すると知らされずに子どもが親の手にかけられた例などがあったことを知り、想像以上に恐ろしかった。今の私よりも幼い14~16歳の少年たちが、爆弾を背負って敵に向かって突撃したこともあったようで、現代の感覚では信じられません。沖縄に米軍基地が集中している現状は、「仕方ない」と深く考えたことはなかったですが、地元の人は許せないことだと分かってきました。授業を機に自分のこととして考えてみたいです。 ◆「非戦を考えるヒントに」 授業担当・田代美江子教授授業を担当する教育学部の田代美江子教授は「沖縄の基地問題や改憲など、戦争の歴史が現代の問題につながっていることを感じてもらいたい」と狙いを話す。 田代教授の研究テーマは、ジェンダーの視点からの教育史研究。戦争責任にも触れ、戦争体験者と非体験者の交流を促している日本戦没学生記念会(わだつみ会、東京)と長年、交流がある。その縁で毎年、会の協力を得て授業に戦争体験者を招いている。 授業は四~七月の四カ月間で、計十五回。これまでに延べ約七百人が受講した。 学生たちは、アジア・太平洋戦争で中国兵を殺害した元兵士などの加害体験や家を守る女性の視点でみた戦争、戦時中の性暴力など体験談を中心を学び、各自が感じたことを議論する。最終日には、テーマを決めてグループで調べたことを発表する。 体験者の高齢化で年々、話をしてくれる人を探すのは難しくなっている。それでも、田代教授は「これからの社会をつくる自分たちが、戦争をしないという未来責任を考えるヒントになる。できる限り続けていきたい」と話している。
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