横浜アリーナの思い出、そして最後の大劇場公演のお稽古。
先日、退団公演『A Fairy Taleー青い薔薇の精ー』『シャルム!』大劇場公演のお稽古が始まりました。横浜アリーナでの『恋スルARENA』公演中も、千秋楽からお稽古集合日までは、もう卒業するんだというしんみりした気持ちをすごく感じていました。でも実際に集合してみると、前回の『CASANOVA』で、ゆきちゃん(仙名彩世)をはじめ、じゅりあさん(花野じゅりあ)やべーちゃん(桜咲彩花)などたくさん退団しましたし、相手役にはなちゃん(華優希)が就任したこともあり、新体制で挑んでいるような感覚を強く感じています。いままで積み上げてきたことの集大成でお稽古を進めていくことになると思っていましたが、新たな挑戦ばかり。そんな新鮮な気持ちでお稽古しています。
まだこれから深めていく段階ですので、また次回お芝居やレビューのお話ができればなと思います。皆様もぜひ公演を楽しみになさってくださいね。
さて今回は、6月25・26日に行われた『恋スルARENA』のことを振り返ってみたいと思います。まず、宝塚での稽古を終え、アリーナ入り。バンドの方々との音合わせのあと、音響チェックとリハーサルをして本番に突入したのですが、その間ずっと、私だけでなく全員が興奮状態。ホテルに帰ってからも皆でワイワイお化粧の練習をしたり、その後もあまり眠れないくらいのテンションで過ごしてきたので、千秋楽の翌朝は、「あれ? もしかして夢だったのかな」と。ただ体にはしっかり、かなりの量を走った痕跡が……(笑)。
舞台も広くて高低差もありましたし、階段を駆け下りたり上ったり、客席の通路を走り抜けたり、袖に入るまでも距離があったりと、通し稽古からずっと走り回っていました。そのお陰で、初日は緊張することなく迎えられましたが、とにかく走った量はすごかったのではないかなと思います。
初めて経験する広い空間でしたが、皆様のボルテージが最高潮だということが、幕開きでスポットが当たった瞬間に肌で感じられて、凄まじい光景でした。イヤーモニターをつけているので声はダイレクトではないのですが、お客様の歓声や拍手が足下から地鳴りみたいに伝わってくるような感覚。お客様のブレスレットライトもすごくきれいでしたし、それによってどんな時もお客様と共にあるという温かさを感じました。トロッコでの移動も、会場が広いためものすごい早さでドキドキ。スリルを感じつつも、空を飛んでいるようで気持ち良く、お客様に近くてより安心感がありました。
この公演からトップ娘役に就任したはなちゃんは、すごく緊張していたので、いかにリラックスしてもらうかを考えていました。でも本番では、緊張しながらも、自分の魅力を迷うことなく表現している姿を見て、これからどんどん頼もしくなっていくだろうなと感じました。そして、あきら(瀬戸かずや)やマイティー(水美舞斗)もいろいろと活躍してくれて、頼もしかったです。
いろいろな楽曲、女役でのパフォーマンス……。
30曲近く、本当にいろいろな曲を歌わせていただきました。オリジナルのテーマ曲「恋スルARENA」は、プロローグが終わって1人で歌い切るボリュームのある曲。たった1人でお客様を煽り、イメージにぴったりなキラキラした楽曲、歌詞の素敵さ、楽しさをどう見せていくのかと、最初は苦戦しました。でもすごく盛り上がっていただき、うれしかったです。
そして「青いベンチ」「サウダージ」「Love is …」と立て続けに歌う場面は、曲ごとにどう変化するのか、稽古場では迷ったところ。お芝居で歌うように、自分で「どういう人がどういう思いで歌っているか」と設定を考えてイメージしました。横浜にゆかりのある楽曲では、山崎まさよしさんの「One more time,One more chance」やサザンオールスターズさんの「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」などを歌唱。「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」では、なんともいえない横浜の雰囲気、大人の男の甘さみたいなものを表現できたらいいな、と。その後の浜田省吾さんの「さよならゲーム」のイメージとの差を出すことが楽しかったです。
「きみとぼくのラララ」は、小学生の時に卒業する6年生に向けて歌った曲。歌詞がすごく好きで、離れても絶対につながっていると思える曲で、静岡から宝塚に来るとき、宝塚でも先輩が辞められる時、仲間が卒業していく時などに、ふと思い出す曲だったんです。だから、齋藤吉正先生から好きな曲はと聞かれたときに、みんなで歌いたいと、前向きになれるこの曲をリクエストしました。
1曲は、女役として歌いました。男役の明日海りおと女役の明日海りおが映像でセッションするという齋藤先生のアイデアを、映像監督の高橋栄樹さんが興味を持ってくださり、実現しました。ただ私はもう……必死でした。いつものキーで歌ってしまうと、変化がないのでキーを上げてもらい、映像の明日海りおさんを男役として立てながら(笑)、差を出すために頑張って歌いました。
これまでは、女役をする場合は、男役として別のものを表現したいという思いがありました。ただ今回は、映像とのコラボというせっかくの機会でしたし、男役がやる女役を表現できるのも宝塚にいる間でないとできないことだということで、娘役さんとは全然違う種類の、かっこいいものをお見せできたらと思い、挑戦してみました。
そして、運動会の雪辱も果たすことができました(笑)。例え対戦相手がいなくても、走る距離が短かかろうが、みんなの目が真剣で、テンションが上がりました。当時の学ランを探したら、退団された上級生の方が大事に持っていてくださったのでお借りしました。そこに衣裳の先生やお衣裳部さんがキラキラの装飾をつけてくださり、愛を感じました。
空間はとても広かったですが、お客様とより心が近くにあったような感覚があり、うれしかったです。足を運んでいただいた皆様、映画館でご覧いただいた皆様、本当にありがとうございました。
『花より男子』チームに、いい刺激をもらいました。
アリーナに入る前に、れいちゃん(柚香光)主演の『花より男子』を観劇しました。みんながパワフルに生き生きと演じていたので、すごくいい刺激をもらいました。
れいちゃんは、道明寺役を素で演じているのでは……と(笑)。そう感じるのは、本人が体を役に預けて演じられているからだと思うので、楽しんでいるだろうなと思いながら観ていました。みれいちゃん(城妃美伶)もつくし役がすごく似合っていて、日頃から鍛錬された歌声、身体能力も抜群に生かされていて、お芝居もとても自然でした。つくしの魅力、人間力を大切に楽しそうに演じていたと感じました。
2人の最後のデュエットダンスも、踊りというより気持ちで繋がっているのが伝わりました。技術がないと成り立たないことなので、1人の観客として夢を見せてもらいつつ、先輩としてはすごく感心しました。
ゆーなみ(優波慧)も公演を支えようとする意気込みをひしひしと感じましたし、あすかちゃん(聖乃あすか)もソフトな役が合っていたな、と。舞浜アンフィシアターでのコンサートに最下級生で出てくれたらいと(希波らいと)も、気負うことなくのびのびやっている姿がかわいらしかったです。
そして先日、れいちゃんが次期花組トップスターに就任することが発表されました。れいちゃんが2番手になってから、いつかれいちゃんが花組を率いていくことを踏まえ、みんなが集結しやすいようにどうあるのか、どう舞台に向かうのか、芝居のことなど、日々感じたことを細々と伝えてきました。
私も就任するときは、まゆさん(蘭寿とむ)が築かれた伝統ある熱い花組を引き継ぐにあたり、不安ばかりでした。すぐにそれができるわけではなく、みんなと共にだんだんと新しい花組を作っていったので、れいちゃんも自分のカラーで、そこから生まれるもので作っていってほしいです。れいちゃん自身が楽しんでやってくれれば大丈夫だと思いますし、楽しみにしています。
※このメッセージは、7/17(水)に届いたものです。