8月13日は「左利きの日」だった。ざっと1割強といわれる左利きの人は、日常生活で不便を強いられている。その環境向上を訴える団体が存在するらしい。多数派の右利きにはわからぬ苦労。例えば本紙カメラマンに聞いたところ…。
「左利きでもシャッターを押すのは右手です。左用のカメラって、見たことないですから」。そんな話をしていると、偉大な左投手が目の前を通った。通算219勝の山本昌さんである。
「そろばんや字の書き順が難しかったり…。そんな日常生活のあらゆる不便を差し引いても、野球では左投げで助かったから。たまたま左でストライクを取れたから、僕はプロに入れた。絶対数が少ないからね。右だったら? 間違いなくプロになれてないよ」
謙遜も含まれているだろうが、自分の栄光があるのは左利きだったからだと力説した。左投手には希少価値がある。それは間違いない。野手だとどうか。大島は「僕、スポーツ以外は右利きです」と真顔で言った。驚くことに、プロ野球選手にこのケースは多い。そこで大島とは逆の「左利きの右打者」にも話を聞いた。「字を書くのだけ右。食べるのもテニスも卓球も左」と言うのは山崎武司さんだ。今だから明かせる32年前の真実。1年目の米国留学であまりにも打てなかった山崎さんは、帰国後に誰にも告げず、左打ちの練習をしたそうだ。
「センスがなくって半月であきらめたけどね。(右打者は)左手がハンドル、右手がアクセルなんて言われるけど、オレは利き手の左でコントロールもできたし、強く引くこともできた。それが(左利きで)よかったことかな」。通算403本塁打の長打力は、強い左手がもたらしたのかもしれない。
左利きの日に先発した左投手は、大野雄を含めて7人もいた。しかし、誰も勝ち投手にはなれず。ちなみに、何人かの左利きに聞いてみたが、最も不便なのはハサミとのことだった。