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【社会】

靖国、昨秋 天皇参拝を要請 創立150年向け 宮内庁は断る

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 靖国神社が昨秋、当時の天皇陛下(現上皇さま)に二〇一九年の神社創立百五十年に合わせた参拝を求める極めて異例の「行幸(ぎょうこう)請願」を宮内庁に行い、断られていたことが十三日、靖国神社や宮内庁への取材で分かった。靖国側は再要請しない方針で、天皇が参拝した創立五十年、百年に続く節目での参拝は行われず、不参拝がさらに続く見通しだ。

 天皇の参拝は創立から五十年ごとの節目以外でも行われていたが、一九七五年の昭和天皇が最後。七八年のA級戦犯合祀(ごうし)が「不参拝」の契機となったことが側近のメモなどで明らかになっている。一部保守層から天皇参拝を実現するためA級戦犯分祀(ぶんし)を求める声があるが、靖国側は応じていない。

 靖国神社の前身「東京招魂社(しょうこんしゃ)」は、戊辰戦争の官軍側戦死者らを弔う明治天皇の意向で一八六九年六月二十九日に創建。創立五十年の一九一九年五月に大正天皇、創立百年の六九年十月に昭和天皇が参拝している。

 上皇さまは在位中に参拝しておらず、平成は天皇参拝のない初の時代となった。関係者によると、靖国神社は昨年九月、平成中の参拝を促すため、宮中祭祀(さいし)を担う宮内庁掌典職に過去の天皇の参拝例を示し、参拝を求める行幸請願をした。

 掌典職は代替わりを控えた多忙などを理由に、宮内庁長官や天皇側近部局の侍従職への取り次ぎも「できない」と回答したという。共同通信の取材に対し、掌典職は「参拝について判断やコメントをする立場にない」としている。

 靖国側は「断られた」と判断、創立二百年の参拝も確約されないことから「将来も参拝は難しくなった」と受け止めた。代替わり後の再要請について取材に「(陛下の参拝を)お待ち申し上げる立場」と回答し、行わない方針だ。

 戦後に宗教法人となった靖国神社は終戦まで軍直轄だった。太平洋戦争などで戦死した日本軍の軍人らも含め約二百五十万人を祭る。天皇はじめ公人の参拝では政教分離が問題視されてきた。

 

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