三章 ユースティアが俺に屈服するまで 04

 ユースティアが奉仕を初めてから数週間が経って、解ったのだが、彼女は家事一切が出来なかった。

 それもそのはず。


 ユティは分家から預かった事はいえ、子爵令嬢なのだ。


 家事が出来ないのも当たり前で、作る料理は当然のように不味く、掃除をやらせても作業がどうしても甘くなる。

 とは言え、ルーカスはユースティアに対して家事能力など最初から期待していなかった。


 そもそも、掃除も料理も、魔法を絡めてルーカスなら簡単にこなせてしまうし、何なら巨万の富にモノを言わせて、プロを雇うのも良い。


 彼にとって、ユティのミスは、寧ろ格好のロールの材料になる。


 ユースティアが仕事をミスをして、そのたびにルーカスがお仕置きをする。

 そんな事が日常になりつつある。


 人間の慣れとは不思議なもので、そんな淫靡にて異常な日常を、ルーカスもユースティアもごくごく当たり前に受け入れるようになりつつあった。



                   ◇



 ルーカスが帰ると、割れたティーカップをユティが片付けていた。


 金貨十枚の、微妙に高いアンティーク。ルーカスは、このティーカップを自分で買ったのか、それとも誰かしらに貰ったのかは覚えていないが、しかし、いつになってもお茶一つまともに用意できない不器用なユティにため息の一つを吐きたくなる。


 熱く、それでいて期待のこもったため息を。


 もう、彼女がルーカスに奉仕してから数週間が経つのだ。

 如何に鈍くさいユースティアでもこんなに頻繁にミスを繰り返す理由はない。ただ、ミスを繰り返す度にルーカスから与えられる『お仕置き』が、ユティの成長を止めてしまう。


 思い出す度に身体が疼き欲してしまうのか。


 ユティは、好色を隠そうともしないルーカスの呆れた表情に歯がみしながら、それでも、これからのお仕置きを期待してしまっている自分に気付いて、非常に悔しい気分になる。

 ユースティアは、決してルーカスに屈したりはしない。


 いくら辱められて、身体が快楽を求めてしまうように調教されても、決して彼女の復讐を誓った気高き貴族としての魂は、ルーカスに屈したりなどしないのだ。


 きっと彼を睨み付けながら、負けん気が強く、歯を食いしばる。



               ◇



 ユースティアは、ルーカスの膝の上に載っていた。


 ルーカスの視座の上に腹ばいになる形で、四つん這いの姿勢に。

 薄手で扇情的な、メイド服のスカートの上から、ユースティアがかつて付けていた者よりも質の悪い下着越しに、尻を不躾に撫でられていた。


「ユティ。スカートをめくって、下着を下ろしなさい」


 ユースティアは葛藤する。

 今から、自分はルーカスに何をされるのか、自分がどんな目に遭わされるのか、想像は付いていた。


 彼の有無を言わせぬ雰囲気に、この状況になるまで何も言わずにしたがっていた。


 しかし、今まで彼にされるお仕置きは全て性的なもので、あまり苦痛の伴わないものばかりであった。

 主に、罵られながら犯されて。


 時に焦らされ、時に卑猥な言葉を、屈辱的なセリフを強要された。


 しかし、痛みを伴うモノはなかった。

 それでも、これからルーカスはユティの尻を打とうとしている。それは解る。その事への不安と恐怖が、抵抗しない事で、素っ気ない態度をとっていたユースティアの行動を大きく躊躇させた。


「自分で下ろさないなら、俺が下ろす」


「……自分で、自分で下ろします」


「それから?」


 下唇を噛み、苦悶の表情を浮かべつつ、スルリと、この体勢から、器用に下着を下ろしていくユティに、ルーカスは意地悪な笑みを浮かべる。

 ユースティアが、これから言わなければならない言葉を想像して。


 猫かぶりの彼女なら、きっと、ルーカスの期待に添ってくれると信じて。


 実際、ユースティアには、今ルーカスの求める言葉を言う必要があった。


 彼の機嫌を損ねれば待っているのは、更なる恥辱と苦悶のお仕置き。

 彼の出すクイズに答えて、最低限度のお仕置きで済ませる。しかし、ユースティアが見つけられる答えの全ては、彼女にとってとても口にしがたいものばかり。


 いつか殺す。


 噛み殺すように呟いてから、言葉を繋げた。


「……お兄様の大切なティーカップを壊してしまった、惨めな私の尻を叩いて、どうか、いけない私を教育してください」


 パチン!


 ルーカスの手が、ユースティアの尻を打つと、彼女の尻だけでなく子宮の奥にまで振動が響くような錯覚を覚えた。

 疼く、女の悦びをどうにか押さえ込もうとするユティの尻を三度ほど更に打つ。


「それで? ユティの望む通りに教育してあげたけど?」


「……あ、ありがとうございます、お兄様。もっと、私を教育してください!」


「……う~ん。今日のやりとりは、30点くらいかな? だから、30回数えて。数えるのを止めたら、最初からやり直しね」


「……い、いちっ! にっ! さんっ! んんっ、い、痛いですお兄様!」


「また一からだ、ユティ」


 ユースティアは、ぞんざいに尻を打たれ、そのたびに感じる痛みと、子宮の奥を揺さぶられる羞恥。

 そして、もう十五の淑女だというのに、蒙古斑の取れない子供にされるようなお仕置きを受けねばならない屈辱に軽く、泣きそうに成りながらも、数字を数えるために、歯を食いしばる事が出来ない。


 そんな状況だというのに、ユースティアの女の部分は、尊厳とかプライドとかそんなの関係なしに、ルーカスのルーカスが欲しいとよだれを垂らしてしまう。


 そんな葛藤に耐えながら、結局、60回ほども打たれてしまった。


 腹立たしいのは、ここまで打たれても、そのたびに中途半端な回復魔法で癒やされるせいで、感覚が麻痺することなく、ずっと痛い思いを味わい続けた。

 恥ずかしい思いを、十数分にわたり味わい続けた。


 ひりひりと痛む尻をルーカスに掴まれて、そのまま犯される。


 濡れた性器をなじられて、更に恥ずかしい思いをする最中、ルーカスはユティに新たなる絶望への宣告をする。


「明日、この船にゾイド博士が来る。くれぐれも、俺の使用人として、失礼のないように頼むよ。ユティ」

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