三章 ユースティアが俺に屈服するまで 03

 ユースティアは、ルーカスに奉公してから迎えた初めての朝は全裸で迎える事となった。


 昨日、初体験だったのに、あの一回では済まされる事なく。あの後も、風呂場で、鏡の前で、何度も、より屈辱的に、より恥ずかしい体位で、ルーカスの思うがままに、辱められた。

 尊厳もへったくれもない恥辱の一晩を思い出し、ユティは耳がかぁっと熱くなるのを感じた。


 ――いつかあの男は殺すとして、どうやら昨日は疲れて、そのまま眠ってしまったようですね。


 ユティはとにかく、裸のままにいるわけにもいかないと服を探す。

 昨日着ていた――ルーカスの目の前で脱いだ、ドレスや下着を探す。

 しかし見つからず、そう言えば、昨日ユースティアが彼の前でストリップをした時に、そのまま着替えは彼の魔法の闇の中に仕舞われたのを思い出した。


 ユースティアは、未だのんきな顔をして、眠りこけているルーカスを起こす――。



                     ◇



 小鳥のさえずりのような声に、起こされて。

 ボンヤリとした目には、恥ずかしそうに毛布を身体に捲いた――きっと、服を着ていないのであろう少女が不機嫌そうな顔で立っていた。


 ――知らない天井に、見慣れない少女。


 ルーカスは、何か非常事態にでも晒されたかと警戒色を強めてみたが、そう言えば昨日新たな拠点と、メイドさんを同時に手に入れていた事を思い出す。

 ――そうだった。俺はもう、ルーベルグ家から完全に解放されたんだった。


「義兄さん――服を、服を返してはいただけませんか?」


「おはよう、ユティ。とりあえず、ユティは昨晩から俺の召使いになったわけだし――せめて、お義兄様呼びにしてくれないかな? 一応、その辺の分別は付けておきたい」


「解りました、お義兄様」


 内心の苛立ち、不満を隠そうともせずに、そう返答をするユティを見て、素直に返そうと思っていた貴族服を、異空間から取り出すのを止めて、代わりに、安物の無地の麻製のワンピースを放り投げるように手渡した。


「え、えっと……これは……」


「今日のユティのお召し物。――さっき分別の話をしたけれど、使用人が貴族服って言うのは流石におかしいかなって思って」


「……百歩譲って、ドレスを返していただけないのは納得します。ですが義兄さ――お義兄様……なぜ、下着も返していただけないのでしょうか?」


「言うて、アレも貴族令嬢のユティが着けていた下着だし、実質貴族服かな~って思って」


 ユティは憤慨し、更に抗議を重ねようかと思って、止めた。

 これ以上は、時間の無駄どころか、ルーカスの機嫌を損ねるだけだ。これ以上下手に食い下がれば「そのワンピースも没収して、これからずっと全裸で生活して貰っても構わないんだよ?」と言われかねない。


 ユースティアは大人しく――昨日あれだけ見られても、やはりまだ恥ずかしいのか、毛布で見られないように隠しながら、ぎこちない動作でワンピースを着た。


 質が悪いワンピースを、下着もない状態で着用するのはチクチクして不快な上に、色々と心許ないのだが、全裸よりはマシだと言い聞かせ、精神の安定を図る。


 ルーカスはそんなユースティアの内心を知ってか否か、見透かしたような小憎たらしい笑みを作る。


「まぁ、でも流石にずっとその格好で過ごして貰うのも、目の毒だし。一緒に買いに行こうか、新しい服」


 ――この格好で?


 不安と羞恥に頬が引きつるユティを愉快そうに眺めながら、ルーカスは最寄りの街に空中戦艦を進めた。



                  ◇



 綿と製糸と織物産業の街『ヨーク』


 それなりの人口を内蔵する、国で五本の指に入る程度の大都市。人がそれなりに行き交う、中通りを、ユティとルーカスは歩く。


 ユティは顔を紅く、心許なさそうに、恥ずかしそうに。対するルーカスは愉しそうに。


 それもそのはず、ユースティアの格好は先程と同じく下着の着用すら許されない全裸の上から、薄手の麻のワンピースだけを着用した格好。

 しかし、それに加えられた犬の散歩に使われる首輪を着用させられていた。


 リードがワンピースの中を介して、ルーカスの手に握られている。


 今でこそ、ワンピースの下の裾が軽くふくらはぎが露出する程度に捲れ上がっているだけだが、ルーカスが首輪をぴっぱれば――或いは、ルーカスから距離を取ろうとすれば、自動的にワンピースが捲れ上がり、何も付けていないユースティアの裸が、この街中での露出を余儀なくされる。


 首輪が揺れる度に、ワンピースの裾が靡く度に、ユティはルーカスにいつでもひん剥かれる状態だと、自分が生殺与奪を握られているのだと否応なしに理解させられる。


 屈辱が不安が羞恥が、ユティの精神を揺さぶる。


 陰湿で悪趣味なルーカスの責め苦に、ユースティアは下唇を噛んだ。



                 ◇



 折角のデートだというのに、ユースティアはずっと耳を真っ赤に染めながら俯いている。ルーカスはそんな彼女を見て、オシャレをした甲斐があったと思う。


 真っ赤なマントに彫られた金色の証。

 ルーカスにのみ着用が許されたマントを羽織る彼は、英雄である証明と共にSランクである証明をしている。


 少女を辱める彼に絡む愚か者が現れない代わりに、注目度は抜群だった。


 そんな注目に晒され、ユースティアは一層恥ずかしがる姿を見せる。


 悪戯に首輪を揺れ動かし、引っ張る素振りを見せる度にぴくりと小動物のような反応を見せる彼女が面白く、ルーカスは半ば癖になっていた。

 もっと、そんな彼女を見ていたい。


 その思いが首輪を引く。


 ハラリと、ユースティアの白い――形の綺麗なおしりが覗いた。


 そんな調子で、愉快にユースティアを辱めながらルーカスは街を歩き、とうとう呉服屋に到着する。


 ルーカスの少し行き過ぎた女遊びは、界隈ではちょっとした有名な話。

 服屋の店主がそれを知ってか否か、特に、ユースティアに何か反応を示す事なく、メイド服をすぐに仕立て用意してくれた。


 ユースティアの本来のサイズよりも、ワンサイズ小さくて、丈の短く、上質そうだが生地の薄いメイド服。


 下半身が心許ない上に――視線に晒され、緊張したのか、ユースティアの勃起した乳首は容赦なく主張される、卑猥なメイド服。

 ルーカスは、この店と店主を評価する。


 散々恥ずかしい目にあったユースティアは空中戦艦に帰った後に、新調したメイド服を汚されてしまうけれど、それはまた別の話。

 晴れて、彼女の使用人服は購入された。

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