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五輪の医師、無償でいいの? 組織委判断に医療界当惑 東京都医師会・猪口副会長に聞く

2018/11/20

「それに毎年繰り返すかといえば、一生に一度です。もっとも東京では(五輪以外にも)毎年のように大きなイベントがありますから、(一生に一度というだけで無償を受け入れると)結果的に毎年たくさんの医師が必要になる可能性もあります」

「五輪・パラが終わった後にきちんと検証したい」と話す猪口氏

――医師会として有償、無償の明確な基準はあったのですか。

「これまで、ほとんど議論がありませんでした。マラソン大会などのイベントを引き受ける場合、こちらから自治体に『これだけのお金が欲しい』と要求したりはしません。五輪・パラリンピックについて組織委から話があった時もそうです。あえて議論しないできたともいえます」

「今回の一件をきっかけに、きちんと話し合わなければならないと思っています。五輪・パラの無償は正しかったのか、五輪ならしょうがないのであれば、その特殊性が何かを明らかにして、そういう条件に合致するイベントは無償でも構わないが、それ以外は駄目というように線引きができるようにしたいです」

■組織委には「無償」再考促したい

――日本医師会との連携は。

「東京都医師会だけでは判断できないので、日本医師会と一緒に進めます。答えの出し方として、『日本医師会としてこういう提言をまとめました』となるか『(大規模イベントには)こういう疑念があるから、各地区の医師会で話し合ってください』となるかは、まだ分かりません」

――医師会として今後、五輪・パラリンピックの組織委に意見を言ったり要望したりすることはありますか。

「無償か有償かは、再考は促したいなと思っています。それから五輪・パラを検証するための情報を提供してほしい。それがないなら我々は独力でやるしかなくなります。そんな面倒なことにならないようにしたいです」

「今は、組織委がどの病院にどのくらい依頼しているかも我々は把握できていません。セキュリティのためといわれればそれまでですが、匿名化するなどして、もう少し情報公開はできるのではないかと思います」

<聞き手から>

■根本的に議論した形跡なし

五輪・パラリンピックの医師・看護師を無償にした理由について、組織委は「どういう条件なら(派遣が)可能か、いくつかの大きな病院に相談したところ、せっかくの機会なので協力したいというお話をいただいた」と説明する。あるべき論について、きちんと話し合った形跡はない。

さらに病院が医師・看護師に給料を払ったとしても、それは病院の判断であって、組織委は関知しないという。病院にとっては、お金の持ち出しになるわけで、そこまで好意に甘えていいものか。組織委は「(謝意を表すため)ホームページなどで病院を紹介することを検討している」と話していた。

(オリパラ編集長 高橋圭介)

猪口正孝
1984年に日本医科大医学部を卒業後、医学博士号を取得。医療法人社団直和会と社会医療法人社団正志会で理事長を務める。全日本病院協会常任理事、東京都病院協会副会長など兼務。

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