桂報告書が出た時、これを読んだ一般人は、エリート研究者の悪口をこここまで書くのかか?が、第一印象だったのではないだろうか? 小保方氏が実際にESねつ造が確定した暁には、科学界の大反発は、この程度かもしれないが、実際には彼女自身は否定し、ESねつ造は確定していない。 しかし、当時の科学界には、ESねつ造で世間を納得させたいと意向があったのであろう。 それほど、この報告書は、一見、偏向に満ちたものであった。 しかし、世の中、すべて見方が違えば、印象も違う。 桂報告書は、小保方氏の反論には好都合に書かれているとの解釈もなりたつ。 すでに、5年が通過し、その都度、桂報告書を読み返してみると、報告書の書き手は、さまざまな理研のポジションの人が参加したことがわかる。 彼らの科学的技量もさまざまであった事がわかる。 遺伝子解析の細かい部分を執筆したのは、もちろん専門家たちではあるが、理研には専門研究者以外、中間層の研究者層、研究補助者もいるだろう。 数の多い一般中間層の意向が、桂報告書に影響力を持った様相が伺える。 一般技術的な記載(例えば、FACSなどの手技的批判)を書いた研究者層はアンチ小保方色が強く、STAP研究そのものが、一般研究者の大きな誤解を呼んだのではないか? 一方、精度を追及した遺伝子解析の研究者層は、多数派の影響をもろにうけたであろう。 理研の中間層たちは、”STAP細胞はES由来”説で、結束していたであろうから、この人たちを満足させ、かつ、学術的にも正しい結論をめざしたと思われる。 英文論文となった時、多数派の影響は薄れていたと思う。 遺伝子解析をした学者層は、途中から、ES説の限界に気づいた。 その結果、表現の仕方に相当の苦労をしたと思う。 研究不正の調査書の作製のためには、”STAP細胞はES由来”とし、同時に研究者層からの追及にも耐える内容にしなければならない。 桂報告書には、印象操作感が強く感じられるが、その後、出されたBCA論文では、かなりトーンダウンしている。 もちろん、”STAP細胞はES由来”説はかかげているものの、同時にその判断材料が不十分であることを科学的に認めた書き方をしている。 読む人が読めば、ESねつ造説の科学的限界がわかるようにBCA論文は書かれている。 しかし、相反する事実を同時に書きこむことで、皮肉的な様相を帯びた論文となってしまった。 すなわち、一方で、精度高い判断材料とは何か?を解説しているにもかかわらず、その後で、精度高い判断ができませんでしたと書いてあるのである。 過去においても、当然、科学立国日本の人たちは、ここを追及してきた。 TSさん、和もがさん、一言居士さんらである。 そうした状況の中で、今回、このブログでは、カツラ報告書さんの書き込みにより、再度、この部分に光があてられた。 ため息ブログのES派たちは、この議論が再燃した本当の意味がわからない。 以前のデータを持ち出してきただけと、ため息氏らは言う。 なぜ、NGSによるSNP解析が鑑別に必要なのかの意味がわからないのである。 近交系マウス細胞の場合、Del,Dupの共通性が高い。 それゆえ、ESからSTAPが作られた事を証明しようとすると、SNPの高い近似が必要になる。 STAPとESの比較の際、培養中に1塩基が変化しても限定的であるSNPにおいて、高い近似性があれば、両者は同一細胞であると決められるのである。 NGSによるSNPの高い近似が必要であるとの事実が、ため息氏からにはわからない。 Del、Dupの発生機序と、細胞分裂で偶発的における1塩基変化SNPとの違いがため息らにはわからない。 染色体6のB6ホモ領域の詳細がないことに疑問を持たないのである。 以下の図は、BCA論文ExtFig2だ。 すでに、桂報告書スライドには、以下の図が載っている。 学とみ子と体内時計さんが、議論した図である。 129B6F1ES1が、作成時期、親マウスが違ったとしても、AC129、FLS-T1の4Del 1Dupが完全に一致してしまう。 これを見ると、Del やDupの一致では、ESと幹細胞の同一性は証明できないことがわかる。 図dの一番下の”B6 homo SNP type”の欄に、B6 type, 129 typeと書かれているが、これでは、大雑把すぎる。 NGSによる比較が必要だが、129B6F1ES1は、NGS調査をしていないので書けないのである。 NGS調査をしてないのだから、決められない。 さすが、BCR論文といえど、そこまでは書いていない。 しかし、図と本文を読む人であれば、129B6F1ES1にはNGS調査をしていないことはすぐわかるし、判定が不完全であったとわかる。 しかし、本文だけ読む人には、その不完全さがわからないのである。 BCA論文の始まり部分では、FES1と幹細胞の同一性が、SNP一致で説明されているのに、129B6F1ES1の場合は、判定に必要なSNPの記載を欠いているのである。 桂報告書を読んだ後、BCA論文を読むと、桂報告書に疑義を感じるようになる。 その部分に光をあててみよう。 比較すると、いろいろわかってくることがある。 まず、NGS解析をどの細胞でやったのか?は、桂報告書ではわかりにくく書かれている。 BCA論文では、15細胞において全ゲノムを解析した事が明記されている。 さらにその細胞種類の一覧表がある。 ここには、129B6 ES1は無い。 つまり、元になったとされたESのSNP詳細は明らかでない。 129B6 ES1は、AC129の材料となったESと決めることができなかった。 AC129においては、著者らは材料となるESをみつけられなかったのである。 NGSで確かめることのできたのは、ES細胞が異なる下記の129B6 ES6の方であり、明らかにAC129とはB6ホモの長さが異なる。 一言居士さんは、ここを説明しながら大怒りだし、体内さんは、「本文で、同一と書いているじゃあないか?」と言ってくる。 さて、学とみ子の解釈は、BCA論文著者の中には、調査が不完全だったことを正直に示したい人がいるってことだ。彼らは学者だから、嘘は言いいたくない。 結果、こうした表現になっているのではないか?だ。 ここで、一旦、FES1に話を戻す。 BCA論文では、FLS3、 CTS1、FES1, FES2,129/GFP ESのNGSデータが載っている。近交系のマウス細胞において、ある細胞が別の細胞から作られたと主張するには、SNPの近似性は必須だと、BCA論文では、説明している。 FLS3、 CTS1の幹細胞と、FES1,129/GFP ESが、SNP解析でぴったんこであることは、従来から言われている。BCAでは、幹細胞と129/GFP ESが、FES1よりぴったんこと言っている。 Regarding these SNPs, STAP cell lines FLS3 and CTS1 and 129/GFP ES cells are nearly identical, but differ slightly from FES1 (at 30% of these alleles), suggesting that STAP cell lines FLS and CTS were derived from a sub-stock of FES1 ES cells. 注目すべきは、FES2が、ntESG1 ntESG2と、SNP遺伝子背景が酷似している一方で、FES1は酷似していない点だ。 これは、当時、太田氏が使っていた親マウスは、三者(FES2、ntESG1 ntESG2)は同じ親からつくられたと思われるのに対し、FES1だけ、親が違うことを示唆する所見ではないのだろうか? FES1は、FES2と一緒につくられたのではなく、親も違うのではないか? これも、SNPを調べた結果、わかった所見である。 以下の茶字の桂報告書でも、99SNPのうち、FLS3、 CTS1の幹細胞と、FES1、129/GFP ESでは、4か所のヘテロで一致したが、FES2だけ、この4か所が一致しないと書かれている。 SNP解析をすると、一方の細胞群に、FLS3、 CTS1の幹細胞、FES1、129/GFP ESがあり、他方の細胞群に、FES2、ntESG1 ntESG2の一群があるのだ。 以上、SNPから細胞の同一性を決めるためには、NGSが必要になる事を示すものである。 この部分は、和もが氏も早期から指摘していたが、なぜ、一緒に作られたと思われるFES1とFES2がこれ違うのか?に疑問があがっているのである。 桂報告書のこの部分の記載は以下である。茶字 まず、129系統、C57BL/6系統を区別しうるSNPsを比較した結果、以下のことが判明した。 ・・・ (2)常染色体のSNPsも同様にして調査した。その結果、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、およびES細胞FES1、FES2、ならびに小保方研ストックES細胞129/GFP ESは、ほぼ129 x 1/SvJmsSlcxC57BL/6NCrSlcの遺伝的背景を持つことが判明した。ただし、本来は全てのSNPsで129とC57BL/6のヘテロ接合体になるべきと考えられたが、実際は、FES2を除く4株では、調査した99か所中4か所において129由来のホモ接合体になっていた。このことは、これらの幹細胞を作製したマウス系統の遺伝的背景に不均一性があったため生じた可能性と、これら4か所において突然変異が生じた場合とがあることを示していた。実際、若山研で飼育されていたAcr-GFP/CAG-GFPマウス(遺伝的背景はC57BL/6)には、その遺伝的背景に不均一性が見られた( 3)NGSによる解析結果 を参照)。 (3)以上のことから、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、ES細胞FES1、および小保方研で見つかった129/GFP ESの、常染色体に存在する129ホモのSNPsが、突然変異、あるいは遺伝的背景の不均一性によるものとしても、もしこれらの幹細胞がそれぞれ独立に作製されたものであるなら、これらの4か所に共通のSNPsが観察される可能性は低く、これら4種類の幹細胞が共通の細胞に由来することを強く示唆する。 FLS3、 CTS1の幹細胞においては、材料となるESは、FES1と判定されたが、BCA論文では、上記幹細胞とFES1との間でSNPの30%は一致しないと書かれている。 しかし、桂報告書には、ここまで書いていない。 BCA論文では、FES1より、129/GFP ES細胞の方が、より幹細胞にぴったんこと言っている。 起源が不明の129/GFP ESが、FES1よりSTAP幹細胞に近いというのは、大いに疑惑を呼ぶ。 出所が不明な細胞129/GFP ESが、一番、FLS3、 CTS1に近いことが分かった時点で、サンプル調査でものを言うことの限界がわかる。 |
全体表示
[ リスト ]
お断り、
図の引用は、一言居士さん、TSさん、和もがさんらから借用しました。
無断転載ですみません。
2019/8/11(日) 午後 2:58
返信する