セットアッパーのパットンは冷蔵庫を殴り、正捕手の伊藤光はファウルチップを受け、5番打者の宮崎もスイングした際に、全員骨折&長期離脱。そんなDeNAに負けた。優位に試合を進めていたはずなのに、5回に今季6本目の満塁被弾で暗転した。いや、本当に勝てるのか…。僕の心にさざ波が立ったのはもっと前だった。
ビシエドの2ランと筒香のソロが飛び交って迎えた2回。2死二、三塁のチャンスをつくり、大島が打席に立とうとしていた。そのときにはすでに、ラミレス監督はベンチを出て、一塁を指していた。申告敬遠。アルモンテ勝負。ウソでしょ? いいの? 僕には塁を埋める意味が見つからなかった。
詳述は避けるが、この時点での2人の打率、右投手との対戦打率、平良との相性はどれも似たり寄ったりだった。決定的に違うのはここ5試合の状態(大島2割1分1厘、アルモンテ3割8分1厘)と長打率(大島3割6分、アルモンテ4割7分9厘)だ。つまり、DeNAにとってリスクに満ちた選択であり、中日には一気に試合を決められる局面に思えた。ところが、申告敬遠を決断したラミレス監督は違う数字を重視する。
「数字的には得点圏打率が違う。大島は3割5分(2厘)あり、アルモンテは2割5分。ああいう状況で大島を打ち取るのは難しいと思ったからだ」
僕たちは打った後、抑えられた後に参考にすることはあるが、彼は試合前に必ず把握し、采配の根拠にする。得点圏打率は押し出しや長打のリスク、直近の状態を上回るデータなのだ。
アルモンテは4球目を打った。強いゴロが一塁線を襲ったが、ロペスの好守に阻まれた。最近のアルモンテを見て、僕は得点圏での弱さを感じたことはない。だが、結果として絶好機を逃した。この瞬間、僕の胸に広がった嫌な予感が、1時間もたたぬうちに現実になってしまった。