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【社説】

英語能力の向上 教える体制の整備から

 英語を話すことができれば将来の可能性は広がるだろう。だが試験という関門ありきで力の育成を促す手法は危うさもつきまとう。国は教える体制の充実に力を注ぐべきだ。

 高校側の強いいらだちが、文面からにじむ。全国高等学校長協会は、大学入学共通テストで導入される民間検定試験について「まったく先が見通せないほどの混乱状況」として不安解消を求める要望書を文部科学省に提出した。

 来年度から始まる共通テストでは、大学入試センターが作成する試験に加え、民間検定試験の成績が使われる。来年三年生となる生徒は、来年四月から十二月までの間に最大二回検定試験を受け、その成績がセンターを通じて大学に送られる。

 文科省が認定した七団体の試験から選ぶことになっていたが、「TOEIC」の運営団体が七月になって参加を取り下げた。想定したより事務処理が複雑だったという。民間頼みの制度設計のもろさが露呈した。

 民間検定試験を使うのは、これまでの「読む」「聞く」に加え「話す」「書く」力を評価に加えるためだ。「グローバル人材」の育成は経済界からの要望も強い。

 「話す」「書く」力は、日本の英語教育があまり得意とはしてこなかった部分だ。今年初めて中三を対象に実施された英語の全国学力テストでも「読む」「聞く」の平均正答率は50%を超えていたのに対し、「書く」「話す」はいずれも下回った。

 来年度からは小学校高学年で英語が教科化され、授業でもそれらの力の底上げが図られることにはなるのだろう。ただ、小学校は学級担任制のため、一人の先生が大半の教科を教えている。新たに英語が加わることに現場の不安や負担感は小さくない。

 小学校高学年を教科担任制とするなど制度改革の議論も中央教育審議会で始まっている。英語の授業の質の向上も目指すところの一つだろう。だが、まだ時間がかかる。体制充実が追いつかないうちに、成績ありきで躍起になれば、ほころびが出て英語嫌いを増やすことにもなりかねない。

 「話す力」は塾や外国旅行など親の経済力で格差が生じやすい分野でもあろう。溝を埋めるためにも、国は制度や財政措置で学校を支援するとともに、外国人と接する機会を増やす仕掛けや、ITも含めた教材開発など手だてを尽くす必要がある。

 

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