アルベドさん大勝利ぃ!   作:神谷涼
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 本日はコミケ上京中のため、予約投稿になります。
 本文修正、感想への返答は10日に行います。
 あと、10日(明日)は投稿お休みです。

 モモンガさんの、封印されしヤンデレ力が解放される……!



7:結婚したのに、抱いてくれないんです

「見ろ、アルベド。私は未だ死の支配者(オーバーロード)であり、チョーセン・オブ・アンデッドであり、エクリプスでもある。何も失ってはいないだろう?」

 

 やさしい声色だが、その目は赤く光り輝き、怒りの炎を噴き上げていた。

 漆黒の〈絶望のオーラV〉に入り混じるように、赤紫の〈欲望のオーラ〉も溢れている。

 後者は女淫魔(サキュバス)のスキルだ。

 

「モモンガ様! い、如何様な罰も甘受いたします! どうかお許しを!」

 

 NPCとして生み出されたアルベドには、主の怒りが恐ろしくてたまらない。

 至高の御方に失望され、捨てられる以上の恐怖などないのだ。

 好色に主を貪り、触れていたのも、不安の裏返しにすぎない。

 何が怒りを招いたかもわからないまま、ただ震え怯え、ひれ伏す。

 

「……〈絶望のオーラ〉は出ているが。

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)のスキル〈負の接触(ネガティブ・タッチ)〉は発動していないだろう?」

 

 許しの言葉はなく。

 ただ、やさしく頭を撫でられる。

 防御力に秀でたアルベドが、モモンガの手でどうなるはずもないが。

 〈絶望のオーラ〉が、頭を握りつぶされそうな――絶対的な死の予感を与えて来る。

 

「あ、あ……シモベの身で口答えなどして、申し訳ありません……っ」

 

 100レベル護衛役として造られた彼女の体が、ガタガタと震えた。

 守護者統括という立場にありながら、呼吸の乱れが治まらない。

 生物を死滅させる〈絶望のオーラV〉は、即死耐性を持たされていても……恐ろしい。

 

「いいや。お前が己の意見を言ってくれたこと、私はとても嬉しく思っているとも。

 怒りなどしないし……罰など与えん。ただ、お前の口から、正しい謝罪を聞きたい」

 

 何が、何が怒らせたのか。

 アルベドにはまるでわからないのに。

 問い返せば、さらなる怒りを招くのではと。思いつくまま、理由を探す。

 

「もしや、しゅ、種族変化は意に添わぬものでしたか?

 私のために斯様な身となられたこと、悔やまれておられたのでしょうか?」

 

 顔を上げ、表情を伺いたくても……頭を上げさせてもらえない。

 モモンガの手は、アルベドの頭を押さえつけたまま離さない。

 

「呪文構成は一部の下位死霊術が消えた程度。

 各種耐性を失ったが、飲食と睡眠が自在ならば悪くない。食事も楽しみだな、アルベド」

 

 緩やかな否定、やわらかい言葉。

 けれど、アルベドの髪を角を撫でる指は、恐ろしい威圧感を込めたままだ。

 変化を咎めたように聞こえたのが問題であったろうか。

 いや、そもそも、終焉の戯れとしての婚姻自体が……。

 

「あ、ああ……私如きとの婚姻を後悔なされておいででしたら、いつでも縁を切ってください!

 この姿を見るすら不快でしたら、どうかこの命を摘み取ってくださいませ!」

 

 伴侶に選ばれ嬉しくて。

 天にも昇る気持ちでくちづけ、甘えていたのに。

 涙をこぼしながら、叫ぶように訴える。

 

「…………」

 

 失望のため息が聞こえ、手が離れた。

 

「え……?」

 

 この慈悲深い方を、失望させてしまった。

 殺されすらせず、捨てられる――絶望のまま、せめて最後に御方の顔をと見上げれば。

 冷え切った目が、紅い光を宿して、見降ろしていた。

 欲望に取りつかれた時のアルベド自身にそっくりな……おぞましい視線。

 

「アルベド。お前は私の、いったい何だ」

 

 紡がれる言葉も恐ろしく冷酷で、まさに悪魔の愉悦に縁どられている。

 

「わ、私はモモンガ様の、忠実なシモベで――」

 

 恐怖に震え、床に額を擦りつけて。

 渇く口の中から、必死で言葉を紡ぐ。

 

「違う!」

 

 モモンガが、杖を床に打ち付け、激しい音を立て、遮った。

 どうしてそんなことを言うのか、と。

 

「ひっ」

 

 アルベドが小娘のように怯える。

 

「お前は私の妻だ。伴侶だろうが!」

 

 モモンガは、アルベドに愛されたい、欲情されたいのだ。

 これ以上アルベドに触れずいるなど、耐えられなくて。

 アルベドの横へと周り、その手を掴んで、立ち上がらせる。

 入り混じる黒と紫のオーラの中に飲み込まれる。

 絶望と欲望が、交互にアルベドの魂を(さいな)み、侵す。

 

「は、は、はい……っ! そうです! 伴侶です!」

 

 身悶えしながら、悲鳴のような声で答えるしか、できない。

 

「婚姻した夫婦が、二人きりになって、なぜ会話をしない? 私を見もしない?

 私の求めることは、そんなに贅沢か? 私はお前にとって我儘な伴侶なのか?」

 

 ねめつける目には涙が溜まっている。

 だが、アルベドは悲哀より同情より、恐怖を感じた。

 

(逆らえないNPCまで、私を捨てるつもりなのか?)

 

 モモンガは心の中で、そう叫んでいた。

 身勝手な欲望で、アルベドを睨み(あぶ)っていた。

 その目は、偏執的な愛情と欲望に満ちている。

 

「い、いえっ! ごく当たり前のお望みかと!」

 

 シモベに、他にどう答えられるだろう。

 

「なら、私から離れるな」

(私を一人にするな)

 

 モモンガとアルベドは、吐息の絡む距離にいる。

 ふくよかな乳房の先端が、互いにつと触れた。

 

「は、はいっ!」

 

 互いの肢体が、そっと触れ合う。

 答えは震え怯えていたが。

 それでも、モモンガが待ち望んだ回答だったのか。

 安堵したようにモモンガが大きく息を吐き出し――〈絶望のオーラV〉が霧散した。

 ただ薄紫の〈欲望のオーラ〉のみが二人を包む。

 

「……離れるなよ、アルベド。お前は私を捨てたりしないのだろう?」

 

 潤んだ目で、見つめ。

 腕を絡め、抱き寄せながら、懇願するように言う。

 モモンガは、女淫魔(サキュバス)の情欲に完全に取りつかれていた。

 

「もちろんです……モモンガ様。モモンガ様が捨てない限り、私は必ず傍にいます」

 

 酷く危うい主に、内心の怯えを隠しつつ。

 アルベドは、真剣な顔で答えた。

 そう答えなければ、主の魂が壊れてしまいそうに見えたのだ。

 

「……それが本当なら、もっと傍によれ」

 

「は、はい」

 

 決して、逆らわない。

 全身がぴったりと触れ合い、互いの脚が交差し、乳房が押しつぶされ合う。

 モモンガの体がひどく熱い。

 心臓が、激しく脈打っている。

 アルベドも女淫魔(サキュバス)である。

 己への欲情を感じて、何も感じないわけではない。

 動悸は伝染し、脈打つ鼓動が共鳴し合うように高まる。

 

「まだ、もっと近くに寄れ」

 

 もう密着している。

 

「は……はい」

 

 だがそれでも、逆らいはできない。

 ただ、言われたように、ぐいぐいと身を押し付けるようにする。

 

「んっ……♡」

 

 100レベル戦士職のアルベドに押されて、魔法職のモモンガが耐えられるはずはない。

 あっさりと、モモンガの体が背後に仰向けに倒れる。

 

「あ、モモンガ様っ」

 

 抱き寄せようと伸ばした手を掴まれ、引っ張られ……。

 

「何をしている。離れるなと言ったぞ」

 

 仰向けに、ベッドに倒れ込んだモモンガの上に。

 アルベドは覆いかぶさる体勢になっていた。

 

「は、い……」

 

 ふかふかの布団とベッドは、二人の体を包み込むように受け止めている。

 

「……すまない。ここから先は、よく知らないのだ。アンデッドだった、からな。

 アルベドよ。お前に任せて……いいか? 私よりは、詳しい……だろう?」

 

 はぁはぁと、甘く熱い息を吐きながら。

 その白く官能的な肢体は、小さく震えて。

 濡れた目でアルベドを不安げに見上げていた。

 

「承知いたしました、モモンガ様。私も実践は初めてですが……努力させていただきます」

 

 先の恐怖がなければ飛びついていただろうが。

 今は緊急時でもある。

 アルベドは慎重に言葉を選び、モモンガに奉仕すべくドレスを脱いだ。

 

「……夫婦だろう。これからはただ……その、モモンガと呼べ。アルベド」

 

 脱がせろと、視線で訴えながら。

 シモベたるNPCにとってさらに無茶な要求をする。

 

「わ、わかりました……モモンガさ――ん」

 

「……まあ、いいだろう。呼び捨てるよう努力をしろよ」

 

 不満そうに唇を尖らせる。

 

「……ん」

 

 ごまかすように、互いを裸にしていきながら。

 アルベドは、モモンガの唇を封じた。

 

「んんんっ♡ んぢゅっ♡ んぶっ♡ ふーっ♡ ふーっ♡」

 

 再び、玉座の間でと同じ行為。

 口の中を犯され、体中を指でいじめられ。

 感じやすいモモンガの体は、呆れるほどに絶頂を繰り返す。

 

 ただ。

 

 今回は、キスだけでは終わらなかったけれど。

 




 めんどくさくなって、キスで黙らせるアルベドさん! 
 さんざんパワハラしておいて、決して攻めには回らないモモンガさん!

 タイトルが置いてけぼりになってきた件。

 次はR-18投稿にしたものか、地上組その後をすべきか……。


女淫魔(サキュバス)のスキル

〈欲望のオーラ〉
 ユグドラシルでは接触対象の精神耐性にデバフ。
 転移後は精神耐性のない相手を自身に欲情させる(理性で抑えられる程度に)。
 この欲情効果は、接触ならほぼ貫通。精神抵抗弱ければ、姿を見ただけでも効果あり。
 アニメ3期のアルベドさんがOPで出してたやつ……という扱い。


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