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差別問題研究部会

差別問題研究部会長 澁谷 真明

「北海道開教150年」の検証
 「平成31(2019)年、北海道教区は「開教150年」を迎える。
もともと「北海道」は、先住民族アイヌの人々がアイヌ・モシリ(人間の暮らす静かな 大地、の意)と呼び、「カムイ」と共に暮らしてきた土地である。その土地に明治維新以 降、和人が陸続と入植、それに伴い設立、維持されてきた大谷派寺院の数は今や北海道全 域に約〇〇か寺。そして、その事業は教団内にあって、「歴史的偉業」としてこれまで概 ね認識、伝統されてきた。
 しかし、この歴史理解には大きな注意が必要である。なぜなら、和人による「開拓 150年」の歴史は、先住民アイヌの人々にとっては、その土地、母語、生業といった生 活基盤を収奪されてきた「和人隷属の150年」の歴史とも重複するからである。
数々の大谷派寺院の堂宇が建つ境内地はどのような経緯で取得されたのか。さらに、そ こで説かれてきた教えは、アイヌの人々の生活をも幸せにしてきたものであったのか。「 北海道開教は偉業」としてきた私たちは、その根拠をどこに見定めてきたのだろうか。 「開教150年」を迎えようとする今、その検証作業の必要性を切に感じている。

差別問題研究部会員 
( 任期:2017年8月1日~2020年7月31日 )

部会長澁谷真明(16組 聖台寺)
実行委員熊澤 覚(4組 大満寺)
藤原顕弘 (14組 還来寺)
竹村貴士(15 組常樂寺)
澁谷界雄(20組 龍谷寺)

2017年度開催事業

第1回実行委員会
日時10月11日(水)
会場教務所
内容開教150年を、アイヌ民族差別との関連でどう検証するか。
開教150年の歴史上、大谷派教団はアイヌ民族とどのように関わってきたのか。総論と各論のテーマを洗い出すことを目的として開催。
所感・報告開教150年をどう見直すか、について様々な観点から意見交換ができた。今後の活動に期待の持てる手応えを感じた。
第2回実行委員会
日時12月1日(金)
会場教務所
内容大谷派教団とアイヌ差別
開教150年の歴史上、大谷派教団はアイヌ民族とどのように関わってきたのか。総論と各論のテーマを洗い出すことを目的として開催。
所感・報告2回目にして、自らレジュメを作成し、発表する部会員の前向きな姿勢に注目させられる。
第3回実行委員会
日時2月20日(火)~21日(水)
会場新ひだか町・平取町
内容アイヌ民族の社会的現況に学ぶ
北海道の地で、アイヌ民族が抱える現在の問題に対し、キーパーソンを訪問し、聞き取り。
葛野次雄(くずのつぎお)氏(エカシであった父の遺志に目覚め、遺骨返還運動に取り組む・静内)
萱野公裕(かやのきみひろ)氏(アイヌ民族の寄り辺の確立を目指す・平取町二風谷)
鍋澤保(なべさわたもつ)氏(仏教者、キリスト者との交際の歴史&海外でのアイヌ文化紹介活動・平取町二風谷)
所感・報告お三方との対話を通して、日本という国の先住民族に対する閉鎖性を強く感じた。
第4回実行委員会
日時5月16日(水)
会場教務所
内容初年度総括
2017年度事業報告・決算
2018年度事業計画・予算案
和人によるアイヌ民族からの土地収奪について、ワークショップを実施することも計画に盛り込む。
所感・報告各自がテーマを持ち、それぞれに調査、学習を深めることを確認。「部会に参加するようになって以来、新聞・テレビのアイヌ民族報道が自ずと耳目にひっかかかるようになった」との部会員の発言が印象に残った。
いまだ先は明確に見えてこないが、部員間で緊密に情報共有を進めていきたいと思う。
全体総括
内容 2017年度全体総括
所感・報告・アイヌ民族差別という問題に焦点を当てて、北海道教区150年の歴史を見直し、検証するという作業は教団の歴史においても緒についたばかりである。
その意味では、取り組むべき課題の洗い出しに時間を費やすことに終始した初年度であった。その間、部会員の間に当初横たわっていた意識の差は、会合を重ね、実際にアイヌ民族の人々を訪ねることを通じて、ある程度埋められてきたように思う。自発的にレジュメが作成されたり、資料の紹介が出てきたり、とスタートラインに立つまでに1年間を要する必要があった。
・現地学習は1泊2日で行った。が、部会自体が初年度ということで、相手方と対等に質疑を行うという形にはならなかったように感じている。
部会側の問題意識、論点の絞り込みにはもう少し会合を重ね、教区のアイヌ問題差別部会として、「問い」の吟味を行う必要があると考える。