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常人には理解できないやりこみゲーマーの世界に迫る──「ゲームプレイ開始まで準備に半年」「リセマラで1ヵ月」絶望と不可能を超えた先に生まれる感情とは【ゲーム実況者:shu3インタビュー】

 ゲーマーなら誰しも、徹夜でゲームに勤しみ、気づいたら訪れていた朝日を浴びて謎の達成感に包まれた経験があるのではないだろうか。

 レア素材を求めてひたすらモンスターを狩り続ける、アイテムや図鑑のコンプリートを目指す……ゲーマーにとってゲームをやりこむことはある意味“性”(さが)のようなものであり、何時間、何十時間と時間を注ぎこむケースも珍しくない。人によって差異あれど、ゲームはやりこんで楽しむものなのだ。

 しかし、世の中には、常人では理解できない狂気の域までゲームをやりこんでしまう人たちがいる。

 彼らは、「本当にクリアできるのか?」と疑問を抱いてしまうほどにきびしい縛りを自身に課してゲームに臨み、信じられないほどの時間と労力を注ぎこんでゲームクリアを目指していく。ゲーム実況者のshu3@shu33333ものそのひとりだ。

shu3のやりこみプレイ動画シリーズ最新作の「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM」は、全敵がレベル99になる絶望的難易度かつ、レベル1&防具なしという縛りを設定したうえで、あらゆるやりこみ要素を達成してクリアを目指すというものだった。
(画像は「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM #1(Lv99の敵しかいない世界)」より)

 彼を知ったのは「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM」という実況プレイ動画で、そこでshu3は、全敵レベル99という世界の中にレベル1かつ裸(防具なし)で突貫、最初のボスへたどりつくための準備として雑魚モンスターを38時間以上に渡って倒したり、最強武器を100時間以上かけて作ったと思ったら数回使って捨てたりと、常軌を逸したやりこみプレイに身を投じていた。

 いったい彼の頭の中はどうなっているのか……? そんな疑問に駆られ、ニコニコニュースオリジナル編集部ではshu3へインタビューを実施。なぜ苦行と言えるレベルできびしい縛りを自身に課すのか、ゲームをやりこんでいるとき何を考えているのか、何を感じているのか、shu3の頭の中に迫った。

文/竹中プレジデント

やりこみプレイは「ゲームクリアの過程を最大限楽しむ手段」

──本日はよろしくお願いします。取材に入る前にひとつお聞きしたいのですが、shu3さんのことはなんとお呼びすればいいでしょうか。shu3氏? shu3さん?

shu3さん:
 よろしくお願いします。shu3で大丈夫です(笑)。

──ありがとうございます、ではshu3で(笑)。今回は、shu3がやりこみプレイのどこに魅力を感じているのか、実際にどんなことを考えながら挑んでいるのかなどを聞きしたいと思っています。

shu3:
 やりこみ界ってけっこう魔窟みたいなところがあって、自分はそんなにすごいほうではないと思っているんですけど、それでもよければ……。

──shu3のやりこみ具合も相当アレだと思うのですが……上には上がいると。

数多くのやりこみプレイ動画を投稿しているshu3。これだけやっても、shu3曰く、そんなにすごいわけではないらしい。
(画像はニコニコ動画「shu3 さんの公開マイリストPart1リンク」より)

shu3:
 やりこみプレイをしている方って、本当に仙人みたいな人もいて、ネット上に出ていないだけで黙々とやりこんでいる方もきっといるでしょうから。僕なんかまだアリアハン【※】をうろついているくらいです。

※アリアハン……『ドラゴンクエストIII』開始時、最初にいる町。

──アリアハンですか(笑)!? そんな魔窟を作り出すほど多くの人を魅了する“やりこみプレイの魅力”とはどこにあるのでしょう?

shu3:
 いろいろ考えたんですが、僕はやりこみプレイのことを“ゲームクリアの過程を最大限楽しむ手段”だと考えていて。

 例えば、同じパズルを解くとしても、答えを知っているパズルを解くより、誰も答えを知らないパズルを解いたほうが絶対楽しいじゃないですか。どちらも“パズルをクリアした”という実績は同じく残りますが、その過程は絶対に楽しいほうがいいと思うんです。 

──shu3にとって、考えることや失敗することも含めてゲームの楽しさなんですね。

shu3:
 はい。やりこみプレイというのは、自分で目標やルールを定めて進めていくんですが、そこで自分VSゲームみたいな状況を作り出せて、自分の能力をフルに使ってゲームに打ち勝つ……と。それってゲームでしかできない体験だなって。

──ゲームへの挑戦みたいな感じですね。

shu3:
 それに近いかもしれないです。

──ゲームに挑む際に、攻略本や攻略サイトは参考にしたりするんでしょうか?

shu3:
 はい、自分が調べられる範囲ですべての攻略情報をチェックします。攻略本は隅から隅まで読みますし、攻略サイトや動画もいろんなところを参考にさせてもらいます。

 そういった調査もやりこみプレイの範囲なのかなと思っています。攻略情報を全部知ったうえで、そのゲームを最大限楽しむ。自分の能力を全部使ってぶつかっていけるんです。そういう懐の広さも、やりこみプレイの魅力のひとつだと考えています。

やりこみプレイの楽しいとき、辛いとき

──これまでのやりこみプレイの中で、とくに難しくて印象に残っている場面があれば教えてください。

shu3:
 『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』(『聖剣LOM』)のティアマットというボスとの戦いですね。武器を弱くしてペットを使って倒そう、みたいなことを考えて挑んだんですが、いざやってみるとこれがまあ倒せない。そのときは本当に大変で……仕事中もどうやって倒そうかずっと考えていました。

ティアマットに対して「マッッッッッッジで強いボス」「トラウマです」と語るshu3。約4日、合計9時間以上に渡る死闘をくり広げることになる。
(画像は「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM #18(最強ペット育成とティアマット討伐)」より)
ペットの高火力攻撃、主人公が死んだときのシエラ(仲間)の動き、主人公のハメ技を駆使し、約44分の激闘をもってティアマットを倒す。
(画像は「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM #18(最強ペット育成とティアマット討伐)」より)
1999年7月15日にスクウェアより発売されたPlayStation用ゲームソフト。
(画像はAmazon「アルティメット ヒッツ 聖剣伝説 レジェンド オブ マナ」より)

──ティアマット戦では約4日に渡って失敗をくり返していたと動画内でおっしゃっていましたが、何度やっても思い通りに進まない状況に陥ると、投げ出したくなりませんか?

shu3:
 自分が好きなゲームをプレイしているときに投げ出したくなったことは1回もないですね。

 強いボスと戦ってるときは本当に楽しいです。自分の能力をフルに使ってゲームをプレイしてるぞ! という感じがするので。

──やりこみプレイをしているとき、shu3に辛いという感情はないんですか?

shu3:
 やはり人間ですので、単純作業は辛いときがあります。『クラシックロード』で、1ヵ月くらいパラメータのいい馬が出てくるまでリセマラをしたことがあって、カーソルをピッピッピっとやる作業を1日中ずっとしていたときはかなり……。

一度は動画シリーズクリア条件である“G1で8勝以上”を達成するも、突如として縛り条件を追加。最強で無敗の馬を育てるために、パラメータに加えて晩成型の馬を厳選し始める(確率は約1/3000)。その結果、リセマラにかかった時間は34日に及ぶことに。
(画像は「市場最低の史上最強馬を育てる Part6 【クラシックロード実況】」より)
1995年12月15日にビクターエンタテインメントより発売されたPlayStation用ゲームソフト。
(画像はAmazon「クラシック・ロード」より)

──うわあ……そういうときのメンタルケアってどうしてるんですか?

shu3:
 単純作業をやっているときは声を録っていないのでAmazonプライムで動画を見たりしています。それで精神が保てるというのもありますね。

 あと、ずっと作業をしていると「なにかはわからんがこれは有意義なことをやっているんだ!!」ってランナーズハイならぬ作業ハイな気持ちになるんですよ(笑)。

──なるほど(笑)。そういった苦行の数々を見た視聴者からはよく「マゾなのか?」とコメントされていますが、実際のところどうなのでしょう?

shu3:
 そこは否定させてもらいたいです(笑)。マゾというのは苦痛自体を楽しむことを指すじゃないですか。自分のことを振り返ると苦痛自体を楽しんでいるわけじゃないので、マゾじゃないと思います(笑)。

何日もかけてボスを倒したshu3が「これが楽しいんだよ」と言った際には、驚きのコメントが数多く書きこまれていた。
(画像は「絶望を越えた超やりこみ聖剣LOM #18(最強ペット育成とティアマット討伐)」より)

──では、何がそこまでshu3を突き動かしているんでしょう?

shu3:
 やはりやりこみが楽しいからですね! 楽しくないとできないです。

 個人的にはみんな共感してくれる感情だと思っていたのですが、何日もかけてボスを倒して「楽しい!」と言ったときはさすがに狂人に見えたみたいで……。そのギャップから「マゾだ……」というコメントが書きこまれたのかなと思います(笑)。

──なるほど(笑)。ちょっと気になったのですが、shu3ってゲームを普通に遊ぶことってできるんですか?

shu3:
 できます! 新鮮なゲーム体験ができればすごく満足するタイプです。

 ただ、難易度設定があるときびしいものを選んでしまったりとか、コンプ要素を見つけるとやりたいなと思ったり、ちょっとはやりこみ願望が見え隠れするんですが、そこはやらなくても普通に楽しめます。

ゲームは1日1時間、遊べるゲームの数に制限、今に繋がる幼少期の経験

──ここからは、shu3がこれまでゲームとどう歩んできたのかお聞きしていければと思います。今では夜通しゲームをプレイするほどゲームにのめりこんでいるshu3ですが、小さいころからゲームは好きだったのでしょうか?

shu3:
 好きというより、小さいころから家にゲームのある生活だったので当然そこにあるもの、という感じでした。兄がひとりいるんですが、兄もゲームが好きで、よくプレイしているところを見たりもしてました。

──お兄さんもゲームをやりこむタイプだったり?

shu3:
 どうでしょう。けっこう遊んではいましたが、ライトゲーマーだったと思います。

──小さいころのshu3はどんなゲームが好きだったんですか?

shu3:
 遊ぶことが多かったのはRPGです。

──それには何か理由が?

shu3:
 ほかのジャンルよりRPGのほうが長い間遊べる、というのがありました。

──幼少期からゲームをやりこむのが好きだったため、RPGを選んでプレイしていたということですか?

shu3:
 やりこみというより、やりこまざるを得ない理由もあって、小さいころからひとつのゲームを長く続ける癖があったんです。

──やりこまざるを得ない理由とは?

shu3:
 ファミコンのソフトって1万円くらいしたじゃないですか。家庭がそんなに裕福でもなかったので、1本買ったらずっとそれを遊ぶんです。

 あと、僕の小さいころって、ゲームはよくないものっていう風潮が強くて、親から1日1時間という制限をされていたんですよ。でも、そのゲームをプレイできない時間もずっとゲームのことを考えていました。学校で自分の机に攻略手順を書いたり、解けない謎をずっと考えていたり、それがとても楽しかった記憶があります。

──今のように明確にゲームをやりこむスタンスに切り替わったタイミングっていつごろなんでしょう?

shu3:
 中学、高校くらいまでは友達と集まってゲームを遊ぶ機会も多かったんですが、仕事を始めてからはゲームから離れていた時期がありました。なので今みたいに異常にやりこむようになったのは動画投稿を始めてからかもしれません。

──動画投稿を始めたきっかけって何かあるんですか?

shu3:
 ほかの方のゲーム実況動画を見て興味を持ったのが最初のきっかけです。

──最初に見た動画は覚えていますか?

shu3:
 初めて見たのは、キリンさんの「【訛り実況】 ワンダと巨像」シリーズだったと思います。

2005年10月27日にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたPlayStation2用ゲームソフト。
(画像はAmazon「ワンダと巨像」より)

──当時動画を見たときはどんな感想を抱きましたか?

shu3:
 なんだこれ、声ついてるじゃん! って驚きました。最初のころはゲームのプレイに声がついていることに違和感を感じていたんです。そこから徐々に徐々にその状況を受け入れられるようになって、いろんな人の動画を見て、最終的には自分で実況をするように。

 最初は「自分でもできるかも」と軽い気持ちで始めたのですが、見るのと実際にやるのでは大違いでした。本当に難しくて、今でもその難しさを感じています。

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