7月19日(金)に公開された新海誠監督の新作『天気の子』が期待に応える大ヒットスタートをきった。土日2日間の動員は83万人、興収は11億8500万円。初日から3日間の累計の動員は約116万人、興収は約16億4400万円。これは、3年前の8月末に公開されて歴史的大ヒットを記録した同監督の前作『君の名は。』との興収比で約128%という、出足としては文句なしの成績。もっとも、最終的に約1年にわたってロングラン上映が続き、累計動員1928万人、累計興収250億3000万円を記録した『君の名は。』は、世代を超えての社会現象化をともなったあまりにも特殊な作品だった。この時点での、軽率な興行成績の比較は避けたほうがいいだろう。国内最大手の東宝配給で、年間を通じて最もヒットが期待されている時期の一つである7月後半の公開作品として、その責務を十分以上に果たしたということ。そして、『君の名は。』に続いての連続大ヒットによって、新海誠監督が名実ともに国内トップのアニメーション映画作家の一人となったということ。現状ではっきりと言えるのは、その二つのことだ。
通例なら、他のニュースサイトの記事より先んじて「興収100億円突破確実」などと記すことも多い当コラム(もちろん、独自の裏付けがあってのことだが)だが、今回の『天気の子』に関してどうしても慎重になってしまう。というのも、『天気の子』という作品にとって、『君の名は。』との過度の比較はあまり相応しくないと思えるからだ(ここで詳しくは語らないが、今作に「新海ユニバース」と呼ぶべき仕掛けがあったことも踏まえた上で)。
新海誠監督がどこまで意図したかどうかは別として、『君の名は。』は菊田一夫原作のラジオドラマや映画である年代以上の日本人だったら誰もが耳覚えのあるタイトルや、山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』やその映画化作品の大林宣彦監督『転校生』に共通するモチーフも功を奏して、少年少女を主人公とする作品でありながらも結果的には世代や性別を問わない万人向けの作品となった。海外(特にアジア圏)でも大ヒットしたことや、ハリウッドでの実写映画化が早々に決定したことも、それを証明しているだろう。
一方で、同じく少年少女を主人公とする今回の『天気の子』は、世界的な気候変動や、一世代前と比べて確実に「貧しくなった」日本の現状など、社会的なトピックを物語に取り込みながらも、より新海誠監督の作家性が深く強く刻印された作品となっている。本作のプロモーション時のインタビューでも新海誠監督が「(『君の名は。』は)本来なら見るはずがなかった人たちが映画を見て(批判もされた作品だった)」「彼らが怒らない映画を作るべきか否かを考えたとき、僕は、あの人たちをもっと怒らせる映画を作りたいなと」(https://www.sanspo.com/geino/news/20190721/int19072105040001-n1.html)と語っている通り、決して万人向けの作品ではない。
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