アルベドさん大勝利ぃ!   作:神谷涼
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 本日はコミケ上京中のため、予約投稿になります。
 本文修正、感想への返答は10日になります。

 すいません、今回はエロ分ほとんどないです。
 主にアルベドさん視点。



6:結婚したし、お仕事がんばります!

 守護者統括アルベドは気を張って、モモンガの護衛を務めていた。

 モモンガはナザリックに残った最後の至高の御方。

 強く、賢く、美しく、慈悲深い……アルベドを伴侶に選んでくれた、まさに最高存在である。

 そんな至高の御方曰く、二人の婚姻のくちづけと同時に世界もろともナザリックは消滅するはずだったという。アルベドを含む全てのNPC、さらにはモモンガすらもろともに。

 

 そんな災厄が訪れず、無事に顔を合わせられたのは……喜ぶべきだろう。

 しかし、まだ完全に去ったとは言えない。

 沼地にあったはずのナザリック地下大墳墓は、見知らぬ草原となっていた。

 空は星空であり……アルベドが去る時には早朝近いのか、朝日の気配もあった。

 常に暗雲立ち込める常闇の世界だったヘルヘイムとは思えない。

 あの草原の端では世界が虚無に飲まれているかもしれないし。

 草原がひたすら続く、何もない――ナザリックしかない世界と化したのかもしれない。

 何もわからない状況なのだ。

 

(……だとしたら、私たちがモモンガ様に必要な全てを生産する必要があるわね)

 

 他のNPCがいない、モモンガと二人きりになった今。

 アルベドは真面目だった。

 真面目モードだった。

 

 創造主タブラ・スマラグディナに、ビッチたれと造られた身だが。

 完璧な美女、守護者統括の地位に相応しい存在としても、造られているのだ。

 多くの仲間がいた中なら、ビッチとして振舞って問題なかった。

 偉大なる至高の御方に伴侶として選ばれた喜びのまま、ほんの少し、ほんのちょっとだけ羽目を外して、女淫魔(サキュバス)の最上級のくちづけを味わっていただきもできた。

 あのナザリック内を見回る道中もそうだ。

 しかし、今は……。

 二人きりである。

 

(モモンガ様は、私が守護(まも)らねば……くふーっ♪)

 

 この状況に、女淫魔(サキュバス)として欲情しないわけがない。

 だが、今この時にモモンガに何かあれば……と考えれば、それどころではないのだ。

 終焉、消滅――それが至高の御方の身に起きぬと、なぜ言えるだろう。

 モモンガの死や消滅が起きれば、たとえナザリックが残ろうとも。

 アルベドは無論、他の誰もが正気ではいられまい。

 だからこそ、慈悲深き主は、己の能力検証においてもアルベドを傍に置いたに違いない。

 アルベドこそ王の守り、防御最強。

 御身に難あらば、一命に代えて……いや、全てに代えて、主を守らねば。

 

(発情してる場合じゃないわ。何があろうとも、絶対にモモンガ様を守らないと)

 

 幾重にも防御スキルを用いて。

 五感を拡大し、あらゆる奇襲に備え。

 事前使用可能なカバーリングスキルも施し。

 HPとMPを削りながら、効果時間の途切れぬように集中し続ける。

 

(そう、これからの結婚生活のためにも!)

 

 モモンガの様子を見れば、鏡に映る己の姿に夢中なようだ。

 会話と言えば、衣装に迷うモモンガへと、軽く肯定の言葉をかけた程度。

 

(そういえば御姿を変えてから、ご自身の姿すら、ろくに見ていらっしゃらなかった……)

 

 シャルティアと二人で、慌ただしくさせてしまったと反省する。

 ほんのじゃれつき()だったが、控えた方がよかったかもしれない。

 今は一人の時間として集中してもらわねばなるまい。

 自身が邪念を抱かぬよう、アルベドは御身から視線をそらした。

 

(いけない、あの御姿を見ていたら警護が(おろそ)かになってしまう)

 

 そんな時、ちょうどデミウルゴスから、伝言(メッセージ)が入る。

 

『守護者統括殿、そちらに問題はないかな?』

 

 モモンガでなく、アルベドに来たということは、彼も己と同様の心配をしていたのだろう。

 もし、モモンガに送って返答されなければ……という恐怖もあったに違いない。

 

「大丈夫。私もモモンガ様もここにいるわ。ナザリック内も今のところ問題なさそうよ」

 

 小声で答えた。

 アルベド自身の落ち着きと、異常のない状況を知ってもらうためでもある。

 

『それはよかった。相応の分別を持って仕事にあたってくれているようだね』

 

「何? シャルティアが邪推でもしてるの?」

 

『はは、そんなところさ』

 

 困ったものね、と小さく眉を寄せた。

 結婚したからこそ、今この状況でアルベドが焦る理由などないのに。

 むしろ今は、守り手として働きを見せる時だ。

 

『こちらでは夜が明けつつあり、森林と山脈を見つけた。また、宝物殿守護者殿は人間種の村を見つけたらしい。今、詳しい調査に入ってもらったところだよ』

 

「人間種……」

 

 あまり好ましくない。

 アルベド自身も含め、ナザリックには人間種に敵意を抱く者が多い。

 周囲が人間種の生息域で囲まれていたなら、対処方針を固めておくべきだろう。

 

「それで? モモンガ様から消費アイテムを無闇に使わないよう言われてたでしょう。司書長(ティトゥス)やその配下あたりを呼んで代理はさせられなかったの?」

 

『彼らを第一層に呼ぶのは周辺の安全確認後……つまり今、呼びにやっているところさ。とはいえ、モモンガ様の状況は我々全員の士気に関わるからね。御身の安全はもちろんだが……アンデッドから女淫魔(サキュバス)に変わられたのだ。感覚の違いなどから暴走なされたりは、していないかい?』

 

 キミ自身も含めてだよ、と皮肉っぽく付け加えられた。

 

「まさか、私だって半分演技なのよ? モモンガ様がそんな暴走するわけないわ。

 いくらなんでも、不敬な心配じゃないかしら。私だってこの状況で色に狂ったりしないもの」

 

 夢中でキスをしていたアルベドは、モモンガの無惨な連続絶頂を知らない。

 

『ならいいんだが。引き続き情報を集めておくよ。次はモモンガ様に直接連絡させてもらおう』

 

「ええ、情報の集積と解析は任せるわ。よろしくね」

 

 通話が終わった。

 じゃれあうならシャルティアは(ビッチ仲間として)いい相手だが。

 仕事の話となれば、デミウルゴスこそ最も信頼できる守護者だ。

 彼を指揮官に配置しただけでも、モモンガの的確で冷静な判断力は疑いない。

 

(まったく……モモンガ様が暴走なんてするわけないじゃない)

 

 己やシャルティアこそ、そうして見せて、至高の御方を楽しませる立場。

 茶化していい状況か否かの判断くらいはできる。

 今やアルベドは、ナザリックの正妃。

 至高の御方の伴侶として、今まで以上にできる女たらねばならない。

 

(くふーっ♪ 安全確保できたら、この部屋が私の部屋にもなるのね……と、いけないいけない)

 

 浮かれ気味になる気持ちを抑える。

 モモンガの自室に来てから、アルベドは直立不動の姿勢を崩していない。

 ひらすら警護に意識を割いている。

 モモンガを視界の隅で確認しつつ扉を見据え、転移等の気配はないかと気を巡らせるのだ。

 

「んんっ」

 

 と、不意に。

 モモンガから、容姿に似合わぬ、かわいい咳払いが聞こえた。

 呪いやバッドステータスでは、とアルベドがモモンガに視線を向ける。

 

「しかし、超位魔法〈星に願いを(ウイッシュ・アポン・ア・スター)〉を用いたとはいえ……。

 最後には運営の審査も適当になっていたのか? あるいは様々なチェックが緩まっていたのか?

 矛盾ある種族とクラス構成が、問題なく成り立っているようだぞ……」

 

 モモンガが、紅く光る目をアルベドに目を向け、自身の能力について話しかけて来る。

 その目が少し濁って見えるのは、自身の能力検証の結果だろうか。

 

「矛盾……ですか?」

 

 警戒態勢を解かず、真面目な表情で問い返す。

 集中を解かずでは、会話はともかく移動や姿勢変化がしづらい。

 やはり会話相手役として一般メイドか、プレアデスの一人を呼ぶべきだろうか、と内心考える。

 

「ああ。私が彼の魔法で起こした変化は種族レベル中の骸骨の魔法使い(スケルトンメイジ)死者の大魔法使い(エルダーリッチ)を、お前と同じ小悪魔(インプ)女淫魔(サキュバス)に変更するものだ」

 

「そのような種族変化を……さすがは至高の御方たるモモンガ様でございます」

 

 NPCを一瞬で玉座の前に集めた点も含め、世界の法則を大きく歪めた力に、心からの感嘆する。

 が、モモンガの機嫌はなぜか悪くなった。

 

「……ああ。だが、これは矛盾する種族やクラスを消滅させ、レベルダウンをもたらしもする。私なら少なくとも死の支配者(オーバーロード)とチョーセン・オブ・アンデッド、さらにはエクリプスも失っていた、はずなのだ。まあ、消滅の間際であり、お前を伴侶とできるなら安いものだが」

 

 どこか得意げに微笑むモモンガの言葉を。

 

「そんな、モモンガ様のレベルを私如きのためになど!」

 

 アルベドは聞き流しも、感謝も、できない。

 至高の御方にとって、経験値やレベルがどれほど大切か――どのNPCも、己の創造主から多かれ少なかれ耳にしている。アルベド自身、多くの御方の言葉を介して知っていた。

 死の支配者(オーバーロード)、チョーセン・オブ・アンデッド、エクリプス。

 合計レベルは20。

 シモベ如きのために、100レベルの御身を80レベル――アルベドより下に落とそうとしたのだ!

 不敬どころか、死んで詫びても足りるものではない。

 

「アルベド」

 

 主が声をかけても、アルベドの言葉は止まらない。

 今後、いや今まさに同じような判断をされては。

 自身が誰を何のために守っているのか、その意味は――

 

「どうか、どうかそのようなことは、今後お控えください! 経験値が必要なら我らのものを!

 第八階層守護者ヴィクティムのように死亡発動スキルとて、喜んで使って見せます!」

 

 防衛スキルの持続使用すら忘れ、必死に懇願していた。

 己を主のため犠牲にするのはいい。

 シモベの喜びだ。

 だが、主がシモベのために己を犠牲にするなど――

 

「アルベド」

 

 酷く重い声であった。

 あのくちづけの後……いや、それ以前ですら、モモンガのこんな声を、アルベドは知らない。

 吹き付けるような〈絶望のオーラV〉が、アルベドを床に押しつぶす。

 (ひざまず)き、ひれ伏すしかない。

 強力な即死効果の奔流は、即死耐性を持つ彼女にも圧倒的恐怖を感じさせた。

 

「も、モモンガ、様……」

 

 それでも食い下がろうと、見上げるアルベドの前に。

 スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン(レプリカ)の先が、激しく打ち下ろされた。

 目から深紅の光を溢れさせ、漆黒のオーラで身を包む彼女は。

 

 まさしく死の女王(オーバーロード)であり。

 まさしく闇の女神(エクリプス)だった。

 

 そして彼女は、かつてないほどの怒りに身を震わせ。

 アルベドに絶望をもたらしていた。

 




 モモンガ、キレた!

 次回、アルベドさんがメンヘラ上司の理不尽な要求に晒されます


モモンガ「アルベドのためならレベルダウンもできるよ! 褒めて! 襲って!」
アルベド「やめて!」

 なお、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン(実物)は、地上の視察前に円卓の間へと戻されてます。このモモンガさんは、原作に比べてスキルとか呪文の検証を適当にしかしてません。色ボケてるので……。

■モモンガさんの種族&クラス変更
 骸骨の魔法使い(スケルトンメイジ)  → 小悪魔(インプ)
 死者の大魔法使い(エルダーリッチ) → 女淫魔(サキュバス)
 変更はこれらのみ。
 本来はアンデッド種族を前提とする種族&クラスを喪失するはずでした。
 (超位魔法星に願いを(ウイッシュ・アポン・ア・スター)の限界として)
 喪失してないのは、最終ギリギリ時のご都合ないし、運営隠しサービスのせいです。
 アンデッド分入ってるので、肌が異様に白かったり、眼が紅く光ったりします。
 深海棲艦っぽいビジュアルな気もしてきました。


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