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【茨城】朝鮮学校補助金「外交と教育は別」 支援団体の再開要請も県応じず
県内唯一の朝鮮学校「茨城朝鮮初中高級学校」(水戸市)に対し県が補助金交付を中止している問題で、学校関係者や支援団体は交付の再開を求め続けている。政府の対北朝鮮外交は、安倍晋三首相が金正恩朝鮮労働党委員長との直接対話に意欲を見せるなど変化の兆しもあるが、県は三年前の文部科学省通知を盾に応じる姿勢を示していない。 (宮尾幹成) 「政治、外交と教育は別のもの。補助金交付は県の専権事項であり、国の意向を拡大解釈してストップするのは大きな間違いだ」 学校の尹太吉(ユンテギル)校長は六日、県庁で記者会見し県の姿勢に、そう疑問を呈した。 この日、「朝鮮学校の子供たちの人権を守る会・茨城」など学校を支援する五つの団体が県庁を訪れ、交付再開や大井川和彦知事との直接面談を要請した。だが、支援団体によると、面会に応じた池元和典総務課長らは「再開を検討する状況にない」とする従来の県の立場を説明するにとどめたという。 補助金は私立学校振興助成法(私学助成法)に基づくもので、朝鮮学校など外国人学校にも都道府県の判断で交付できる。県は一九八一年度から補助を開始、最後の二〇一五年度は約百七十万円を交付した。 だが、北朝鮮によるミサイル発射実験などが続いていた一六年三月、馳浩文科相(当時)は「北朝鮮と密接な関係を有する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が教育内容などに影響を及ぼしている」として、交付の再検討を都道府県に通知。交付を取りやめたり、減額するケースが相次いだ。 県も一六年度、予算を計上していたが、橋本昌(まさる)知事(当時)が交付を中止した。それ以降は、予算計上さえもせず、一七年九月に知事に就任した大井川知事も踏襲している。 北朝鮮を取り巻く国際環境はその後、一八年六月に金委員長とトランプ米大統領による史上初の米朝首脳会談が実現するなど、対話ムードの高まりも見られる。だが、文科省の担当者は「今のところ通知を見直す予定はない」としている。 県の交付中止の判断について、学校関係者や支援団体は「民族差別だ」と反発し、朝鮮総連県本部や学校を現地調査せずに中止したことも問題視。交付再開を求める一万五千人分以上の署名を提出するなど、九回にわたり県に働き掛けてきたが、県は文科省通知が指摘した状況は変わっていないとして再開に消極的だ。 会見に同席した高校三年生の白庸哲(ペクヨンチョル)さん(17)も「学ぶ権利を奪われることに憤りと疑問を感じる」と訴えたが、その声はいまだに、県に届いていない。 ◆朝鮮学校への補助金をめぐる県の主な動き1981年度 交付を開始 2015年度 文科省が見直しを通知 2016年度 交付を中止 2017年度 予算計上を見送り
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