アットホームな環境を獲得しました。
流されやすく、堕ちやすく、雌の匂いを立ち昇らせていようとも。
モモンガは、ギルドマスターである。
即座に冷静な指示を出し、周辺調査を開始する。
シャルティア、デミウルゴス、マーレには召喚させ、また眷属を大量に出させた。
一定範囲の安全を確認後には、パンドラズ・アクターに弐式炎雷の形態で送り出し。
エントマや恐怖公ら、召喚を得意とする者らをさらに追加。
セバスにはプレアデスと共に
外部情報の集積と分析は、デミウルゴスに任せて。
アウラとコキュートスには内部の再点検を行わせる。
外部に出る者以外には、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを惜しまず渡し、迅速な報告も可能としたのだった。
その指導力と判断力、凛として迷いなく指示を下す姿は、まさしく闇の女王。
主の偉大さに、NPCたちは忠誠を新たにせざるをえない。
あれだけ見せられた痴態も、蓋をするように意識から追いやれた(忘れてはいない)。
そして。
モモンガはアルベドを伴い、ひとまず自室へと退く。
ペストーニャに施された〈
アルベドとつなぐ手は汗ばみ、全身からじっとりと発情した雌臭を発していたが。
モモンガ当人は無論、仕事モードに入ったNPCたち(アルベド含む)も、気づいていなかった。
モモンガは、鏡に映る己の顔を眺めていた。
そう、種族を変えた自身を、モモンガは今、初めてしっかりと見たのだ。
(うーん、すごい美人だな。これなら、アルベドと並んでいても恥ずかしくないぞ)
己自身の姿に、ほうと溜息をついた。
発情した
長く黒い髪に、金の瞳、白い肌。
容貌はアルベドに比べて釣り目で、目元に影ができ……いかにも悪の女王といった風。
ありていに言えば、美人だが悪人面。
(うん、魔王ロールをするなら、これはこれで悪くないな)
何より、縦に割れた瞳孔は、アルベドと同じ。
山羊状の角も同じくだ。
(ふふ、鏡をじっと見ると、アルベドと見つめ合ってるみたいだ……)
鏡の中の瞳がじっと己を覗き込んでいるようで。
欲情した表情になれば、鏡の中からも欲情の視線が向けられる。
体の奥が、疼くように熱い。
フードから流れ出す長い黒髪は、細く柔らかく、しっとりとした手触りで。
触れればモモンガ自身すら、うっとりするほど甘い香りがする。
全身から欲情した雌のオーラが立ち上る。
(と、いけないな)
軽く首を振り、己の内に湧いた奇妙な熱を抑える。
本物のアルベドが横にいるのに、己に見惚れている場合ではない。
傍にいるアルベドをチラリと見る。
彼女はどこか思案するように、モモンガに目を向けずいた。
安堵と同時に、少し不満を感じる。
(……体はどうかな)
顔ばかりでなく全身を見た。
腰からは黒い翼が伸びている。
(うん、おそろいだな♪)
アルベドと同じ翼になっていることが嬉しい。
あちらは肌を露出させて付け根を見せていたが……魔法的な種族ゆえか。
ローブで隔てられても、翼の機能には問題ないようだ。
(おお、風を起こさず空を飛べる……あれ?
少し眉を寄せつつ、さらに肢体を見る。
黒いローブは体型に合わせて変化し、かつてほどの肩幅はない。
だが、白く露出する肌には、かつてと違う
体の正面を大きく開くデザインは、骸骨だった時には何とも思わなかったが。
今では乳首と股間をかろうじて隠すように開かれ、谷間もへそも丸出しである。
恥骨ギリギリまで下腹部が露になっているのだ。
少し恥ずかしかったが……閉じれば、野暮ったい。
「それにしても、このローブがこんな恥ずかしい衣装だったとは……」
くるりと回ってみて、他の露出度が皆無なだけに。
胴の前面をほぼ露出させた姿に、赤面してしまう。
性能を落としてでも、もう少し慎ましい装備に変えるべきかもしれない。
「いえ、この上なくお似合いかと」
落ち着いた声でアルベドが言えば。
モモンガの羽根が嬉しそうにぴょこんと跳ねた。
「そうか? アルベドがそう言うなら、このままでいるとしよう」
かつてのリアルの姿と違い、今のモモンガは、アルベドに比肩する美女でもある。
当のアルベドも、常に腰や尻を半ば露出している。
一部を金属片で隠しただけの、モンスターとしての
(そういえば、装備してた
気配あるし、装備解除もしようと思えばできそうだが……)
下腹部に奇妙な熱を感じ、触れてみる。
体内の
子宮の辺りに収まっているらしい。
人間の体ではなかった奇妙な昂ぶりと共に紋様が浮かび上がった。
哄笑する髑髏のような……ギルメンとしての、モモンガの紋章だ。
(うん?
しかしこれって、ぺロロンチーノさんが言ってたアレ……そう、淫紋みたいだな。
確か、性的な奴隷の証としてエルフや女騎士がよく付けられる一種の呪いだっけ?)
浮かんだ紋章を指でなぞりながら、ぼんやりと考える。
(性的な……奴隷……アルベドの、だよな……)
ちらりと、アルベドを見て。
ずくんと体の奥が熱く疼くのを感じる。
そう思って、己の体を鏡で見れば……。
(本当に……見れば見るほどいやらしい体だなぁ)
手足はほっそりとし、ウエストも締まっているが……乳房や尻は明らかに大きい。
太腿も、下品なくらいむっちりとしている。
この体をアルベドの自由にされるのだと思えば、悦びで背筋が震えた。
だが、ふと思いもする。
(アルベドはこんなに脚、太くないよな……)
おそらく、魔法職と戦士職の差だろう。
モモンガの肉付きは、柔らかい。特に乳房や二の腕、太腿は顕著だ。
アルベドの乳房は筋肉に支えられ、肉の丘といった風に盛り上がっており。
モモンガの乳房は重力のままに柔らかな曲線を描く。
おかげで、少し歩くだけで胸が揺れる。
ローブで乳首が擦れ、胸の先端がじんじんと痺れる。
淫魔の種族特性〈再生能力・弱〉が働いていなければ、最初に胸部下着を求めていただろう。
もっとも同じく〈鋭敏感覚〉のせいで、ただ歩くだけでも昂ぶる体になっていたのだが。
アルベドとシャルティア以外の守護者が視線を合わせづらかったのは、先の痴態だけでなく。
現代進行形の痴態もまた、理由だったのだ。
(胸が大きいのは……シャルティアも喜んでたし、いいよな?)
自分の胸を軽く揉んでみる。
「んっ♡」
驚くほど感じやすい体に、喘ぎ声が漏れてしまった。
「……!」
慌てて、アルベドを見るが……どうやら〈
何かぼそぼそと、やりとりをしている様子で。
モモンガを見てはいなかった。
なぜか、無性に不愉快になる。
形のよい唇を尖らせたが、それすら気づいていないらしい。
(……見られていなくてよかった。いや、待てよ。見たくなどないのでは?
今の私の体はいわゆる男好きのする体型だが……アルベドの――女性視点ではどうだろう?
もっとほっそりした、胸や尻も小さめのスレンダーな体型の方がよかったのではないか?)
対話が終わっても、モモンガに報告するでもなく何か考えている様子で。
モモンガを見ていない。
(私の主観なら美人なのに。やはり、アルベドの好みではないのでは……)
沈んだ気持ちになってしまう。
完全に雌の発想に至っても、感情抑制のない体では己の変質に……気づけない。
(いや、そんなはずはない。アルベドは私の妻だぞ。
本人は喜んでいたし、さっきからあんなにさわって来たし、
初めてのキスだって捧げたし、すごく欲情した目で私を見てたじゃないか)
さっきまでの、アルベドの顔を思い出す。
あんな目でまた見られたかった。
己に欲情をぶつけてほしかった。
(むう……どうして二人きりになった途端、落ち着いているのだ?
私より気になることがあるのか? まさか、やたら張り合っていたシャルティアが本命……?)
嫌な想像を打ち消すように、己の体を撫でまわし、手触りを楽しみ。
時折、意図せず刺激した性感に、小さく息を吐き。
様々な表情やポーズをしてみる。
吹き飛んでしまいそうな、己への自信を取り戻したかった。
アルベドが向けていた欲情が嘘でないと、信じたかった。
(よし)
前かがみに乳房を強調するポーズをとってみたり。
(よし)
アルベドを真似て、舌なめずりしてみたり(めっちゃ長くなってた)。
(よし)
パンドラズ・アクターのようなちょっとオーバーアクションをしてみたり。
(よしよし、美人は何をしても絵になるって本当だなぁ)
鏡に映る怜悧な美貌は、まるで損なわれない。
美貌ゆえ沈んだ顔はさせたくない……表情にも自信が蘇る。
調子に乗って淫らなポーズ、挑発的なポーズもとってみる。
かつての己なら、間違いなく男として反応しただろう。
(うん、これならアルベドも、私に――え?)
鏡越しに、伴侶の視線を伺う。
アルベドは、モモンガを見ていない。
足下が崩れていくようだ。
信じられないほど衝撃を受けていた。
鏡越しには、アルベドが息を荒げ、今にも襲い掛かろうとしていると。
こうして視線を伺った途端に押し倒され、貪ってもらえるのだと。
信じていたのに。
裏切られたのだ。
どろりとした雌の情念で、モモンガの瞳に赤い光が灯った。
アルベドさんは真面目に警護してるだけなのに。
次回アルベド視点。
TSモモンガさんのビジュアルイメージは黒髪ロングな悪の女王系。
セミラミス(Fateシリーズ)、ミラクル・トー(Ranceシリーズ)、羽衣狐(ぬら孫)あたり。
■
〈再生能力・弱〉
常時発動。トロールほどではないが、HPを常時回復。外傷バッドステータスへの抵抗力。
性的絶倫をイメージしている。粘膜擦傷や粘膜劣化を抑える効果もある。このため、衣服で乳首が擦れたりしても一切のダメージを受けず刺激のみ受け続ける。
〈鋭敏感覚〉
ユグドラシルでは奇襲や不可視化への対抗ボーナス。一部の盗賊職スキルへのボーナス。
転移後は、五感全般が鋭くなり、性的感度上昇。指や舌の(一部状況での)器用度上昇。