【ドラニュース】【龍の背に乗って】0ボール2ストライクからの本塁打2019年8月7日 紙面から
その昔、野球界にはルール、いや厳しいおきてが存在した。「外国人の初球に打たれるな」、「2ストライクから打たれるな」…。打たれると怒られる。本塁打などもってのほか。ほとんどのチームで罰金の対象となっていた。 人間は叱られたくない。だから外国人には大きく外すボール球から入るようになったし、2球で追い込んだら外角に外すのがセオリーになってしまった。20世紀の遺物。そもそも、プレーの結果で罰金を徴収することじたいが、今やコンプライアンスに抵触する。 投手が絶対優位。だから一気に攻める。価値観は変わり、3球勝負は罰金どころか奨励される時代になった。防戦の打者はどうするか。6回、2死。福田は追い込まれてからの3球目を、バックスクリーンまで運んだ。 「まずはコンパクトにいこうと思いました。チェンジアップ2球で追い込まれて、高め(のボール球)に1球くるかなと準備はしていました。(ストライクの)高めだったので、振らなきゃ間に合わない。うまく反応できたと思います」 これが通算62本目にして、彼が0ボール2ストライクから本塁打を打ったのは初めてだ。そして、チームは今季64本塁打を放ったが、こちらも初めてである。 今季のセ・リーグを調べてみた。計587本塁打のうち、0ボール2ストライクから打ったのは福田で10本目。割合にして1.7%。10人のうち6人が外国人選手だ。この理由はよくわかる。日本人は絶体絶命でもあきらめず、しつこく、何とか食い下がろうとする。子どものころから「三振では何も起こらん!」とたたき込まれるからだ。あらゆる球種に対応するからスイングは小さくなる。外国人は真逆。不利な状況を打開するために、こんなときこそヤマを張る。外れたらごめんなさい。三振もゴロも同じでしょという考えだ。 確率1.7%の“逆転の一打”を見られたのも気持ちよかったが、この日の福田は4度しかバットを振っていない。凡打どころか空振り、ファウルも一切なしとはまさしく「あっぱれ」。 (渋谷真)
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