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(剛男)午前中に 届け出を出すためには遅くとも 11時までにここを出なくてはなりません。
それまでに決議する必要があります。
(田辺)分かった。
これで十勝の農協が 更に一致団結すれば今度のことは幸いでないか。
そうなればいいんですが…。
(ノック)・(夕見子)失礼します。組合長 なつを連れてきました。
おお。
(なつ)失礼します。なつさん!
田辺さん お久しぶりです。
いや よく帰ってきてくれたわ ハハ…。
今 まさに なつさんが このタイミングで十勝に帰ってきてくれたことはきっと 天の恵みだ。えっ?
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
昔 なつさんが いてくれたおかげで農協が 農家から牛乳を集めてメーカーに売る共同販売を実現することができたんです。
いえ 私がいたからなんてとんでもないです!
なつが演劇をやってうちのじいちゃんを説得したからでしょ。
(坂場)演劇で?(田辺)そうなんです。あれがなければ今度の工場新設も ありえなかった。
田辺さんは あの時からそれを見据えていたんですね。
うん… だから 私は なつさんになまら感謝してる。
それが 今日実現するか潰されるか 決まるんだわ。
実現させましょう!
おっ 頼もしいな なつさんの婚約者は。
組合が好きなんです。
(良子)なっちゃん!あっ よっちゃん!
(門倉)奥原も来たのか。うん。 うちのじいちゃんたちも来てる。
倉田先生も授業がなければ来たがってたわ。
(天陽)なっちゃん。天陽君…。
なっちゃん 帰ってきてたのか。うん。
(靖枝)こんにちは。あっ こんにちは。 ご無沙汰してます。
(門倉)あっ 天陽 大丈夫だ。
あっ いや 大丈夫って話じゃないけども奥原も 今度 結婚するらしい。
えっ?
あっ 坂場と申します。お兄さんとは いつも 仕事していました。
あっ そうですか…。なっちゃん おめでとう。ありがとう。
おめでとうございます。ありがとうございます。
(正治)天陽。おじさん。
なっちゃんかい!なっちゃん 結婚で帰ってきたらしい。
え… そうかい。いや まあ そうすぐってわけじゃないですけど。
ハハ… おめでとう。
あっ いや…したけど 今は 行かないばなんないわ。
あ… そうだ。今は それどころではないわ。
(門倉)行くべ 行くべ。
工場設置届を提出するため十勝の各農協組合長が決議に集まりました。
これより 会議を始めます。
まずは 音問別組合長そして ここにお集まり頂いた十勝地区農協組合長会の会長でもある田辺政人より発言させて頂きます。
皆さん 今日緊急にお集まり頂いた理由についてご理解頂いてることと思いますが計画中の十勝協同乳業を私は 何としても実現したい。しかし それには 今日の午前中に工場設置届を出す必要が生じました。そうしなければ この計画は国に潰されるでしょう。直ちに届け出を出すことに皆さんに同意して頂きたいのです。
(剛男)これは もちろん満場一致での同意がなければできません。
時間は切迫しております。同意して頂ける組合長は 挙手願います。
(ざわめく声)
♪~
では 反対の方 ご意見を。
田辺さん それは つまり 国が我々のやろうとしてることは無謀だと判断したからでしょう?
(田辺)無謀なんかでありません!
したけどこれ以上 乳業メーカーを敵に回してそれで もし その工場が失敗した時は十勝の酪農民は ますます苦境に立たされるんでないですか?
失敗したら?
失敗などせん!
我々は 一般の乳業メーカーを締め出そうとしてるわけではありません。
健全な自由競争することで共存共栄を図ろうとしてるだけです。
したけど 実際 不安がってる酪農民だってたくさんいるんだ。
(夕見子)なして 分からないんですか。
この工場は そういう酪農民が安心して暮らすために酪農民の誇りをかけて造ろうとしてるんでないですか!
夕見子…。
(田辺)そのとおりです。乳業だけが栄え 酪農が滅ぶような社会の仕組みを変えるためにはどうしても 協同組合で造る農民の工場が必要なんです。
これは 私の… いや 十勝の使命だ!
(菊介)その工場は ほかの乳業メーカーよりもうまいバターが作れるんだべ?
(悠吉)菊介…。
俺らが もっと 俺らの手でおいしいバターを作ろうとしてるだけだべさ?
そうです。
(菊介)したらなして迷うことがあるんだ…。
俺らの手で人に喜んでもらうことをするのになして迷うことがあるんだ!
菊介さん…。
ここにいる人らは ほとんどが開拓者の2世か3世だべ?
おやじらのように荒れ地を耕して開拓した誇りは俺らには ないかも分からんけど…。俺らにだって 開拓できることはまだまだ あるはずだべさ!
俺は 学もない ただの牛飼いだけど俺らの搾った牛乳が人に感動を与えるようなものになるならこったら うれしいことはないもな。
♪~
どうか その工場を 俺らに造って下さい。
俺らに牛飼いの喜びを 作らせて下さい!
賛成! 工場を造れ!
おう! 俺たちの工場を造れ!
工場を造れ!(照男)工場を造れ!
私も 菊介さんに賛成だ!工場を造れ!
(泰樹)工場を造れ!工場を造れ!
工場を造れ!工場を造れ!
(酪農民たち)工場を造れ 工場を造れ 工場を造れ…!
(剛男)分かった! 分かりました…。
それでは もう一度今度は 全員に決を採ります。
工場設置届を出すことに賛成の方は挙手を願います。
(酪農民たち)はい!
よし!
ありがとうございます!
それでは これより 直ちに工場設置届を提出しに参ります。
(拍手)
田辺さん 我々 組合長会も一緒に行きましょう。
農林省や道庁に対する抗議を込めて。
それは すばらしいアイデアだ!是非 みんなで 一緒に行きましょう。
菊介さん 我々も一緒に行きましょう。えっ?
我々 農民も直接 抗議に行くんですよ!
あんた なして そんなに張り切ってんだ?
おやじも俺も 菊介さんと同じ柴田牧場の仲間ですから。
ああ…。みんな 菊介さんに感動したんだべさ。
こっぱずかしいことを…。
何で しゃべったのか自分でも分かんねえ。
行こう 菊介さん 私も行く。(菊介)なっちゃん…。
僕も お供します。
お前のせいだ。えっ?
牛飼いをすることで人に喜びを与えることができるからこそ牛飼いに誇りを持てるんじゃありませんか?
こうなったら 最後まで行くべか!
よ~し 全員で殴り込みだ!
違うべさ。 百姓一揆だべ!
よし 行くど!おお~!
♪~
おやっさん もうわしらの出る幕でないですね。
うん…。
♪~
えっ 新聞やテレビ?
昨日 私が知らせといたのさ。
ほら なつ あそこ。
あっ… 信さん!
じゃ 行きましょう。うん。
(ノック)・はい。
失礼します。
十勝地区農協組合長会会長の田辺政人です。
十勝支庁長 大清水 洋です。
支庁長じきじきに迎えて下さり感謝しております。
ここまで 騒ぎを大きくされてはリーダーである私が矢面に立つしかないでしょう。
(シャッター音)
これは 工場設置届です。
どうか お受け取り下さい。
確かに 受け取りました。
支庁長 あなたも十勝の酪農が…いや 北海道の酪農が今 どんなに苦しい状況にあるかそれを よく分かっているはずです。十勝を酪農王国にしたいという我々の願いをどうか 潰さないで頂きたい!
潰すなんて そんな人聞きの悪いこと言わないで下さい!
それなら 今回のやり方は何ですか!
そうだ!(一同)そうだ!
十勝の酪農を守れ!
(一同)十勝の酪農を守れ!
北海道の牛乳を守れ!
(一同)北海道の牛乳を守れ!
それでも あんたは道産子か!
(一同)道産子か!
私だって道産子だわ!何を言ってんだ!
この十勝を 北海道を思う気持ちはあなた方にも負けない!
この大清水が 必ず十勝を 酪農王国にしてみせます!
そのためにも 皆さんどうか頑張って下さい!
(拍手)
どうも ありがとうございます!
♪~
(剛男)組合長!組合長!
田辺さん!大丈夫だ… 何でもない…。
(拍手)
なつよ 十勝にとって今日は 歴史的な日になったな。