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【社会】

<つなぐ 戦後74年>広島 令和の原爆忌 「核廃絶、日本が主導を」

被爆から74年の「原爆の日」を迎え行われた平和記念式典。手前は原爆ドーム=6日午前8時15分、広島市の平和記念公園で

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 広島は六日、被爆から七十四年の「原爆の日」を迎えた。広島市の平和記念公園では午前八時から「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が営まれた。松井一実市長は平和宣言で、日本が参加していない核兵器禁止条約への署名・批准を政府に促し、戦争で核兵器を使用された経験がある唯一の国として核廃絶へ一層の指導力を発揮するよう求めた。

 松井市長は昨年の平和宣言で核禁止条約批准について踏み込まなかったが、今年は「政府は署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止めていただきたい」と表明した。

 式典では、この一年間に亡くなったり、死亡が確認されたりした五千六十八人の名前を加えた原爆死没者名簿が原爆慰霊碑の石室に納められた。記帳された死没者総数は三十一万九千百八十六人となった。被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は今年三月末時点で十四万五千八百四十四人。平均年齢は八二・六五歳。

 約五万人の参列者は「平和の鐘」が響き渡る中、原爆投下時刻の八時十五分に黙とう。広島市の小学生から選ばれた子ども代表で、いずれも六年生の金田秋佳(しゅうか)さん(11)と石橋忠大(ただひろ)君(11)が「平和への誓い」を宣言した。

◆「橋渡しはごまかし」 首相に不信感

 安倍晋三首相は六日、広島市で行われた平和記念式典に出席後、被爆者団体の代表者らと面会した。被爆者らは、唯一の戦争被爆国・日本が核兵器の保有や使用を禁じた核兵器禁止条約に加わって核廃絶を主導するよう要請した。首相は「核保有国と非保有国の橋渡しに努力する」としつつ、条約には参加しない方針を重ねて示した。被爆者らは「ごまかしだ」と不信感を募らせた。 (中根政人、妹尾聡太)

 広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(74)は面会で「戦争被爆国の思いとして核兵器廃絶のために努力してほしい」と条約の批准を求めた。広島県労働組合会議被爆者団体連絡協議会の中谷悦子事務局長(69)は、がんに苦しむ被爆二世の窮状に触れ「核兵器禁止条約は戦争や核兵器のない世界の実現を強く願う被爆者やその家族の悲願だ」と話した。

 広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長(90)は、日本政府が米国の「核の傘」に依存する立場から条約に反対してきたことについて「どこの国の政府なのか。被害者をはじめ、多くの日本国民の共通の怒りだ」と語った。

 これに対し、首相は核廃絶の目標は共有する考えを強調した上で「核兵器禁止条約とはアプローチが異なる」と説明した。面会後の記者会見では、条約について「現実の安全保障の観点を踏まえることなく作成された」と指摘し、専門家でつくる賢人会議の提言などを踏まえて核軍縮を推進する考えを示した。

 佐久間氏は面会後、記者団に「核軍縮をやるために核兵器禁止条約が必要だというところまで踏み込まないと、前に進まない」といら立ちを見せた。吉岡氏は核保有国と非保有国の橋渡しをするとした首相の発言について「ごまかしだ。今まで成果が上がったことがない」と批判した。

 日本政府が被爆国として核廃絶に積極的に取り組む姿勢を示さない中、米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効し、米中ロによる核軍拡競争の懸念が強まっている。

面会後、被爆者団体代表と握手する安倍首相=同日午前

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