あま市民病院
ソリューション概要
業界
医療
目的
電子カルテシステムおよび、調剤システム、臨床・検体、細菌検査システム、グループウェアなど目的別に構築されてきた10の部門システムのインフラをそれぞれ統合。個別に構築されてきた膨大な数のハードウェアの設置スペースを大幅に削減するとともに、長期的なコスト削減とシステムの耐障害性向上を目指す。
アプローチ
アプリケーションとITインフラを切り分け、インフラを担うハードウェアベンダーを1社に集約。仮想化共通基盤を構築し、11ベンダーによる各種アプリケーションをこの基盤上に統合する。
IT効果
・11システムのインフラをHPE ProLiant DL380 Gen9をはじめとするHPEのハードウェアに統合し、運用を一元化することで、運用負荷を大幅に低減
・高性能かつ高信頼な仮想化共通基盤上で、11ベンダーによる各種アプリケーションを稼働
・電子カルテなどミッションクリティカルなシステムは、冗長化により可用性を向上
・全システムのバックアップを統合し、ポリシーに基づいた確実なバックアップにより耐障害性を向上
ビジネスの効果
・アプリケーションとインフラの切り分けにより、長期的なコスト削減可能なシステム基盤を獲得
・物理機器の設置スペースをおよそ8分の1に削減
・システムの重要度に合わせて可用性をチューニング。止められないシステムの安全性を確保しながらコスト最適化を実現
・処理性能の向上による業務効率向上
・インフラのトラブル対応を一元化でき、管理業務を大幅に効率化
・インフラの一元化によりシステムの拡張性が高まり、システムを容易かつ迅速に追加可能
あま市民病院が、仮想化共通基盤に11システムを統合し、長期的コスト削減と耐障害性の向上を両立
システムのハードウェア環境をHPEで統合、ITインフラのTCOとスペースを劇的に削減
あま市民病院は、新病院への移転を機に、HPE ProLiant DL380 Gen9をはじめとするHPEのハードウェアを採用し、仮想化共通基盤を構築した。従来それぞれ異なるベンダーによる大量のハードウェアは、HPEの高性能かつコンパクトなハードウェアに統合。大幅な省スペースを実現すると共に、システムの性能や運用管理性も大幅に向上した。また、バックアップの標準化と自動化により耐障害性が高まると同時に拡張性も向上。長期的なコストの大幅な削減も期待されている。
チャレンジ
病院の移転を機にITインフラを一新し、コスト削減と耐障害性向上を目指す
愛知県あま市のあま市民病院は、1947年「甚目寺町国民健康保険組合外6ヶ町村組合病院」として創立。地域の要請に基づき機能を拡張しながら、60年以上にわたって地域医療を支えてきた。
2010年には市町村合併によって、「あま市民病院」と名称を変更。海部東部の中核病院として、地域になくてはならない存在である。
あま市民病院は、最も古い建物が1960年代の竣工と老朽化が進み、耐震性能にも不安があることから、2015年11月新築移転をおこなった。あま市は、万一東海地震が起きると大きな揺れや津波が心配される地域。2000年には大規模な豪雨災害にみまわれた東海豪雨も経験しており、地震や水害への対策が求められた。そこで、新病院は免震構造を採用。津波や豪雨対策として、建物自体を高台に建てるとともに、地下免震ピット層を駐車場として有効活用しながら水害対策にも役立てている。この新築移転プロジェクトを担当したのが、事務局管理課だ。
「管理課は、今回の移転プロジェクトをはじめとする施設・設備管理やシステム企画・運用、財務・会計、人事など、病院内のあらゆる管理業務を担っています。業務は多岐にわたりますが、メンバーは10名以下で、各自多くの業務をこなしています」と、管理課 課長 水野 薫氏は話す。
この多忙な管理課が管理するシステムには、電子カルテシステムと10の部門システムがあり、それぞれ別々のベンダーが構築している。そのため、それぞれのサーバーごとにストレージやバックアップ装置、UPSなどが用意され、その分コストがかかっていた。また、ハードウェアの更新時期には、アプリケーションを含めた見直しになりがちと、システムインフラを担当する管理課 林 健司氏は次のように話す。
「アプリケーションは特に支障がないのでハードの更新だけをしようと思っても、ベンダーはバージョンアップしましょうと言ってきます。価格もバージョンアップをしてもしなくても、あまり変わらない提案をしてくる。部門に相談すると、現行システムで要求仕様を満たしていても、新しいバージョンに変えたい、メーカー自体を新たに選定したいと要望される。結局全部を変えることになりがちでした。逆に、仕様の変更などでシステムの更新が難しいと更新ができず、老朽化したシステムを使い続けることもあり、これはこれで大きな問題でした」
「5年後、ハードウェアは更新しなければなりませんが、ソフトウェアはそのまま使い続けることも可能になります。
これにより、ハードウェアのみの更新で済む可能性もあり、アプリケーション部分に関するコストは、長期的にみて4~5割近くコストダウンできるのではないかと考えています」 あま市民病院 事務局 管理課
林 健司 氏
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- あま市民病院
事務局
管理課
課長
水野 薫 氏
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- あま市民病院
事務局
管理課
林 健司 氏
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- あま市民病院
事務局
管理課
小澤 昌視 氏
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- アルファテック・ソリューションズ株式会社
アカウントサービス事業部
ヘルスケアサービス部
サービスグループ
第1チーム
藤本 有理 氏
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課題
・システムごとにベンダーが異なり、運用面でも課題が多い例:バックアップ方式がシステムごとにバラバラで日々の運用に非常に手間が掛かる
・メーカー、形がバラバラな機器が多数あり、スペースを占有している
・スペースの問題で部門にサーバーが設置されると、保守・管理の頻度が低下する
・システム管理者が少ないため、各ベンダーとの交渉に負荷が掛かる
・各システムでインフラが異なると、管理上のミスが起きる可能性が高まる
・障害発生時、ベンダーごとに保守内容が異なるため、契約内容・連絡先確認に時間が掛かり、対応の開始が遅れた
ソリューション
仮想化共通基盤を構築し、11システムを統合
システムの構築を担当したのは、ヘルスケア分野にも強いITインフラソリューションプロバイダー、アルファテック・ソリューションズである。そして、アルファテック・ソリューションズがあま市民病院に提案したのが、高性能で価格性能比が高いHPE ProLiant DL380 Gen9をはじめとするHPEのハードウェアである。
「基本的にハードウェアメーカーの選定は、アルファテック・ソリューションズの提案を受け入れました。ただ、以前からHPEのサーバーは使っており、障害も特になく、サポートもしっかりしていたので、その実績からくる安心感はありました」(林氏)
HPE ProLiant DL380 Gen9は、高い性能を実現するインテル® Xeon® プロセッサー E5-2600 v3製品ファミリーを搭載した2Uのラックマウントサーバー。最大26台のハードディスクを搭載可能なので、外付けストレージ不要の拡張性を持つ。4×1GbEのNICを装備し、仮想化プラットフォームに最適なサーバーだ。
設計ポイント
・ハード障害時の部門システム業務の継続性
・複数の部門システムが稼働するサーバーの基盤部分のリソース(ハードディスク、NICなど)を如何に論理的に分けるか
・データベースなど高額ライセンスとなるシステムを如何に特定サーバーに集めてライセンス数を減らしコストを抑えるか
藤本氏が語ったポイント
プラットフォームができあがったのは2015年8月中旬。11月の移転に向けて10月上旬からシステムリハーサルを計画していたため、アプリケーションの構築に許された時間は実質1か月半しかなかった。
「個別にシステムを入れていたら、このスケジュールは無理だったと思います。仮想環境だったので、アプリベンダーはリモートでも作業でき、スムーズに構築ができました。基盤構築後も、各ベンダーの構築作業の調整など、藤本さんにしっかりとサポートしていただけたおかげです」(林氏)
あま市民病院の新システムは、新しい病院での診療開始と共に稼働を開始。大きな問題もなく、順調に稼働している。
ベネフィット
コスト削減と性能・信頼性向上を両立よりよい医療サービスの提供に活かす
あま市民病院は、今回の仮想化によって、システムインフラとアプリケーションを切り離すことができた。これにより、次回ハードウェア更新時のコストダウンを狙うと、林氏は次のように話す。
「5年後、ハードウェアは更新しなければなりませんが、ソフトウェアはそのまま使い続けることも可能になります。ハードウェアのみの更新で済む可能性もあり、アプリケーション部分に関するコストは、長期的にみて4~5割近くコストダウンできるのではないかと考えています」
さらに、高性能でコンパクトな2UラックマウントサーバーHPE ProLiant DL380 Gen9を中心にハードウェアを構成することで、8畳間を埋めるほどあったハードウェアを大幅に削減するとともに、性能も大幅にアップした。
運用に関しても、インフラに関しては1つのプラットフォームだけをみればよくなり、管理が非常に楽になっている。医療機関にとって責務と言える、災害対策を含めたシステムの安定稼働を実現するインフラが整った。
「バックアップがすべて自動化されたので、バックアップを気にする必要がなくなりました。何かあっても、冗長化しているシステムはもちろん、冗長化をしていないシステムでも、ストレージから簡単にリストアできるようになったので復旧も迅速にできます。仮に障害が起きても、アルファテック・ソリューションズに連絡すれば済むので、以前のように連絡までの時間もかかりません。もっとも、今のところ安定稼働しているので、そんな問題もありません」(林氏)
あま市民病院は、今回の仮想化共通基盤の構築により、信頼性が高く、性能と拡張性が優れたインフラを手に入れることができた。
最後に林氏が、次のように語って締めくくった。
「従来医療分野はシステム化が遅れていると言われていましたが、例えばスポットチェックモニターの普及のように、IoT領域においても徐々に進化しています。今後も技術の進歩にあわせて、新しいシステムの拡張が必要になるでしょう。地域医療連携も進める予定で、医療機関同士のデータ連携もさらに必要となってきます。そのような時、この基盤があることで、迅速に柔軟にシステムの拡張が可能になります。この基盤を活用して、これからも地域の皆様によりよい医療を提供していきます」
「サーバールーム自体、引っ越す時にかなり縮小しました。それでもまだ余裕があります。現在ハードウェアをサーバーラック2本、1畳分程度のスペースに収めることができ、非常にスッキリしました。処理性能の差も歴然で、以前タワーサーバーで運用していた部門系システムは、レスポンスが非常に改善されました」あま市民病院 事務局 管理課
林 健司 氏