エグゼイド&ゲンム in IS 作:Momochoco
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「宝条さん、胃の具合はどうですか?」
「う、うん、大丈夫だから。あんまり心配しないで」
「本当に申し訳ありませんでした。ちょっとアレンジを加えたつもりでいたのですが、まさかこんなことになるなんて思いもよらなくて……。あの、わたくしにできることがあれば何でも仰ってください……」
本来であればセシリアは永夢に対して冷たい態度を取る腹積もりであった。しかし、自分の手料理を食べた永夢が体調不良に陥ったことで仕方なく献身的な看護をしている。
永夢の方はというとあまりにショッキングな味と内容であったため既にベッドに横になっていた。確かに料理は酷いものだったがセシリアの優しさを垣間見た永夢はセシリアの本質について考えていた。
(オルコットさんは自分のせいとは言え体調を崩した僕を心配してくれている。教室の時は傍若無人な人だと思っていたけど本当は違うのかな?)
永夢は思い切ってセシリアに質問をする。
「一つだけ質問していいかな?」
「……?内容によりますが構いませんわ」
「今日のクラス代表を決めるとき、オルコットさんはどうして皆の前であんな態度を取ったの?僕は今の優しいオルコットさんが本当の姿だと思うんだけど……」
「……わたくしは優しさよりも強くならなくてはいけないのです。オルコット家当主としてそして国家代表候補生として。永夢さん、あなたに優しくするのも今だけですわ。いずれ代表決定戦で決着を付けましょう」
セシリアの顔は決意に満ちていた。
セシリアの人生はこれまで苦悩と戦いの連続であった。情けない父親と強い母親の後姿を見て育ったことで女尊男卑の思想が胸の中に残る。両親が死んだあとはオルコット家を守るために全てなげうってでも自分の手で守り通した。そのような環境の中でセシリアが学んだことは男は頼りにならない、自分が一番でならなければならないというプライドを持つことであった。
誰にも負けるわけにはいかない、そういう世界で生きてきた。
「そうですわね……もし、本当に私に勝つことができたならあなたの強さ……いえ、男性の力を認めてもいいでしょう」
「わかったよ、オルコットさん。それならなおさら勝たなければいけない。僕も全力を尽くすよ!」
「……ええ、精々無様な負け方はしないように頑張ってくださいな」
永夢とセシリアはここで正式に今回のたたきに本気で臨むことを決めた。
永夢はセシリアに勝ち、男の強さと優しさを思い出してもらうために。
そしてセシリアは自身のプライドと自分の考えが正しいことを証明するために。
◆
「あ、黎斗さん部屋はどうでしたか?……ってえ?」
翌日黎斗と会った永夢は黎斗のやつれ様に驚く。
「今の私はライフが一つしかないというのに……。千冬だけじゃなく真耶までもが……二度と酒など飲まんぞォ!」
「まあ、僕は医者なんで飲酒は推進してませんから良いんですけど……」
◆
代表選に向けてセシリア、一夏、永夢、黎斗の四人はそれぞれが出来る最善の特訓を各々が実施していた。一夏は箒と剣道を用いて昔の感を取り戻す、セシリアはメイン武装の射撃を入念に調整、永夢はガシャットやウェポンの調整をしていた。
だが四人の中で一人だけ別の作業をしている者がいた。それが新たなガシャットの改修を行っている檀黎斗であった。というのもISドライバーは現状、永夢が持ってきた一つしかないため二人で使いまわすことでしか使用できない。
そこで永夢が使っているとき黎斗は研究に励んでいるのである。
入学式から既に四日が経ち今日は金曜日である。
そして現在の時刻は夜の9時であり、既に学生は寮に帰っている中で檀黎斗、山田真耶、織斑千冬の三人は黎斗との実験の約束のために第二アリーナに集められていた。
千冬と真耶は第二アリーナに着いたのだが、夜間訓練用の大型ライトがついているだけで人は全くと言っていいほどおらず、静かなものだった。アリーナの中央にノートパソコンを座りながら何かを打ち込む黎斗が見える。
真耶と千冬はISスーツに着替えた後に黎斗の元に向かう。
「黎斗、約束通り実験に付き合いに来てやったぞ」
「私も一応約束したので……」
「よし、それじゃあさっそくガシャットのテストを始めるとしよう」
「「ガシャットのテスト?」」
「そうだ。実は新たに二つの変身用ガシャットの修繕に成功していてね。この二つの起動実験をしようと思っていたのさ。前回の戦いで二人の戦い方は見せてもらった。その結果、私と永夢で実験するよりも二人に試してもらった方が良いと感じたのださ」
黎斗はこの四日間でガシャット二つの修繕を完成させていた。
黎斗の神の如き技量に千冬と山田は黎斗という男がただの変人ではないということを再確認するのであった。
ここで千冬があることを指摘する。
「変身用ということは私達もお前たちの言う仮面ライダーになれるということか?」
「その通りだ。よし、そうだな、まずは千冬から試してみよう。このISドライバーと『タドルクエスト』を使って変身するんだ」
「あの……私も後でISドライバーを試してもらえるんですよね」
「当たり前だ。千冬のデータが取れ次第変わってもらうからな」
そう言って黎斗は永夢から借りてきたISドライバーと青いガシャットを千冬に渡す。
千冬と山田は正直言って少し楽しみであった。二人にとっては未知の力であるガシャットを体験できるのは心が躍るのである。
千冬は早速ベルトを装着する。
「よしまずはガシャットをベルトに挿してレベル1になれ」
千冬は頷くと意識を集中させ一気にベルトにガシャット挿し変身をする。
「変身!」
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!? アイム ア カメンライダー!』
「そうだァ!それこそが仮面ライダーブレイブレベル1!」
「何度見ても可愛いですね」
千冬の体に装甲がをまとい二頭身のフルスキンタイプのISに変身する。
千冬は感覚を確かめるようにジャンプしたり、空を飛んでみたりしている。
「黎斗、このレベル1の状態は思ったよりも動きやすいな」
「レベル1はそれなりの機動力を持つ状態だ。それよりも早くレベル2に変身しろ」
「いいだろう!いくぞレベル2!」
『レベルアップ!タドルメグル、タドルメグル、タドルクエスト!』
閑散としたアリーナに変身音声が響き渡る。マイティやプロトマイティと違い全身装甲は無くなっており操縦者である千冬の顔が見えるようになっている。ただ一部の装甲はブレイブと同様のデザインをしている。
千冬はすぐさまバススロットからガシャコンソードを取り出し何回か素振りをする。
その後ガシャコソードの機能を確認していく。黎斗は千冬の適応力に驚かされる。
「すごいぞ黎斗!これが仮面ライダーの力か!」
「今回のガシャットの修繕では仮面ライダーよりも試験的にIS本来のデザインに近づけてある。乗り心地は通常のISと大差はないはずだ。……っと、ガシャコンソードをもう使いこなしたか……今度は練習用のデコイを出す。すべて破壊しろ!」
「良いだろう!」
瞬間、ターゲット用の小型ドローンが空中に射出され高速での移動を開始する。通常のIS操縦者では見切ることが難しいこの状況も、ブリュンヒルデの称号を持つ千冬にとっては格好の的と言えざる得ない。
まずは氷剣モードに変化させ高速のドローンの機動力を封じる
『コ・チーン!』
「まずは動きを止める!」
その言葉通りにデコイが一点に集中して集まった時を狙い強力な冷気を叩きつける。
ガギィーン!その一瞬でデコイの動きは凍らせれたことで完全に停止する。
『カ・チーン!』
「そして一気に叩く!」
炎剣モードに変え今度は炎の斬撃を飛ばす。
ヴァアーン!集まっていたデコイは燃える斬撃にすべて破壊されていた。
その光景を見ていた山田と黎斗は驚きを隠せないでいた。いや、黎斗の方は驚きをギリギリのところで表情に出さないでいる。内心は千冬の強さを改めて目の当たりにしたことで得られるデータの量の多さに笑みが止まらなかった。やはり千冬に頼んで正解だったと確信する。
「良いぞォ、織斑千冬ゥ……君のその強さが私の才能を刺激してくれるゥ!」
地面に着地した千冬は変身を解除し黎斗の元に向かう
「悪くないISだ。武器のガシャコンソードも中距離までの戦闘なら問題なくこなす機能も付いている。ただやはり、単純な機体性能だけで見れば第二世代後期のものだ。最新鋭の期待と戦うなら乗り手の技量が求められるぞ」
「……なるほど、やはり第三世代を超えるためにはレベル3を使った方が手っ取り早いという訳か。次は真耶の番だ。君にはこの『バンバンシューティング』を使ってもらう」
そう言ってISドライバーと紺色のガシャットを山田に渡す。
「『バンバンシューティング』ですか?もしかして射撃系のISとか?」
「その通り。宝条永夢とキミの戦いで得た戦闘データをもとに作成したものだ。その時の射撃データを使っているから使いこなせる筈さ」
「わかりました!やってみます!」
内心ワクワクの山田。
まずはベルトを腰に装着する。そして次にガシャットを挿す、そして……
「変身!」
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!? アイム ア カメンライダー!』
いつも通りのスナイプレベル1の姿がそこにはあった。
そして次にレバーを引っ張りレベル2へと変身する。
「レベル2いきます!」
『レベルアップ!ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!』
「これがレベル2の姿……」
「そうゥ!それこそがシューティングゲーマーレベル2、仮面ライダースナイプだァ!」
先程のブレイブISと同様に全身装甲は無くなっており操縦者である山田の顔が見えるようになっている。また一部の装甲も本来のスナイプと同様のデザインが見受けられる。ただ最も他のISライダー達と違う点があるのはそのマントだ。これは電磁コーティングされたマントでありステルス性と防御性を格段に上昇させる。
山田は千冬同様にバススロットからガシャコンンマグナムを取り出して構えを取る。
機動力自体は高くないが、その精密な射撃性能とステルス性は山田の戦闘スタイルに合っていた。
「ターゲットを出現させる!すべて打ち抜け!」
「はい!」
山田はガシャコンマグナムを的確に使い分けてターゲットを全て打ち抜いていく。
『バ・キューン!!』
『ズ・キューン!!』
ライフルモード、ハンドガンモードそれぞれの特性を即座に理解する。
山田自身、射撃性能の高さに驚いている。
「すごいです……打鉄とは違うこの感じ……これが専用機の力!」
そんな山田の反応に千冬と黎斗は共に邪悪な笑みを浮かべている
「素晴らしいィ!まさかここまで適応するとはジェットコンバットの改修も近いなァ!」
「ああ、闘争心が疼いてくる。今からでも試合したいくらいだ!」
そんな二人をよそに山田は全てのターゲットを打ち抜いたのちに降りてくる。
『ガッシューン!』
「ふぅ……黎斗君、ありがとうございました。このISすごいですね。まるで体と一体化したように感じました!」
「ああ、私もこんなに体に馴染むISは昔以来だ」
二人からガシャットを返してもらった黎斗はさも当然という風に説明をする。
「当たり前だ。その二つはキミたちの戦闘データから私が直接調整したものだ。使いこなせて当然といったところさ。さあ、必要な実験は終えた。撤収するぞ」
(これで必要なものは揃った。試合には間に合うはず……)
◆
そしてそれから更に数日が経ち、遂にクラス代表を決めるための試合がここ第三アリーナで行われようとしていた。観客席には1-A以外の生徒も多く、中には教職員も混じっている。それほどまでにこの戦いは注目されているということだった。
控室には今回の戦いに出場する、永夢、黎斗、一夏、セシリアが集められており千冬から説明を受けていた。
「分かっていると思うがトーナメント形式で戦ってもらう。永夢と黎斗は共通のISを使用しているため別々に戦ってもらう。まずは永夢とセシリアの試合を。次に黎斗と一夏の試合。最後に勝った方が戦う。ただ永夢と黎斗が勝ち上がった場合は、永夢の不戦勝とする」
「何で永夢の方が不戦勝になるんだ?」
「私は正確には生徒ではなく教員だからな。生徒である永夢をクラス代表とするのが自然というものだ」
セシリアと一夏はなるほどといった顔をしている。
「よし、話は済んだな。それではさっそく試合を始める。永夢とセシリアはすぐに準備しろ!」
「「はい!」」
それぞれが自分の作業に移る中、黎斗は永夢を呼び止める。
そして懐から一つのガシャットを取り出し、永夢に渡す。
「永夢、今回の試合ではこれを使え」
「これは……『ゲキトツロボッツガシャット』ですか?」
「そうだ。この日のために仕上げてきた。キミの才能であれば問題なく戦えるだろうがそれでは面白くない」
「面白くないって……わかりました。使うかどうかはオルコットさんの強さを見てから決めたいと思います」
「まあ、いいだろう。少なくとも負けることだけは無いよう気を付けると良い。私達には敵は多く、味方は少ないのだからな」
「わかってます」
この試合、永夢と黎斗は立場上負けることだけは避けたかった。自分たちの存在価値を示さなければ研究所送りにされる可能性もあるからだ。
そして遂に戦いの幕が上がる時が来た!
フィールドには既にセシリアが降り立っていた。
永夢もマイティアクションXレベル2に変身した状態でフィールドに現れる。
「それがあなたのISですか……、何とも派手な色ですこと……、精々足搔いて見せなさい!宝条さん!」
「俺は勝つ!オルコットさんのためにも!」
ブザーと共に二人の戦いが始まる!
だいぶ巻きで書いてます。とりあえずラウラまでは書きたい