【ゴルフ】渋野日向子、メジャー初V 憧れのソフト上野由岐子と東京五輪へ2019年8月6日 紙面から
◇全英女子OP<最終日>▽メジャー第5戦(最終戦)▽4日、英国ミルトンキーンズ、ウォバーンGC(6756ヤード、パー72)▽曇り、24度、南南東6メートル▽賞金総額450万ドル、優勝67万5000ドル▽72選手 次は東京五輪で“シブコ・スマイル”を-。昨夏にプロテストに合格し、実質プロ1年目の渋野日向子(20)=RSK山陽放送=が68で回り、通算18アンダーまで伸ばして、初の海外戦でメジャーを制覇した。日本人女子のメジャーVは1977年全米女子プロで勝った樋口久子以来42年ぶり。世界ランキングの上昇は確実で、2020東京五輪の代表入りも高まった。ソフトボールが大好きで、憧れの上野由岐子(37)=ビックカメラ高崎=と同じ五輪の大舞台で共闘の可能性も大。本紙ゴルフ担当の月橋文美記者が、素顔の日向子を語る。 日本人の弱冠20歳、しかも海外メジャー初出場の選手が、全英女子オープンに優勝するなんて不可能だ、でも…。多くの仲間から“シブコ”と呼ばれる渋野が、単独首位で最終日を迎えるにあたり、日本の女子ゴルフを取り巻く多くの人々がそんな会話をしていた。でも…に続いたのは「あの子なら、やってしまうかもしれない。ニコニコしながら。よっちゃんイカ頬ばりながらね」。だから、このメジャー制覇は驚きより感動、感激。「やっぱりシブコの強さは本物だったんだ!」と、胸を張りたくなるような快挙達成だった。 1998年度生まれの“黄金世代”の中ではアマチュア時代の全国レベルでの戦績は乏しく、ナショナルチームの一員でもなかった『雑草組』。プロテストも2度目の合格。そんな渋野がメッチャ明るいキャラクターだと知ったのは昨年6月、アース・モンダミン杯初日にホールインワンを決め600万円を獲得した時。これがレギュラーツアー初出場大会だった。 そして今年5月。令和初の国内メジャー・ワールドレディスサロンパス杯で鮮やかなツアー初優勝を達成。ラウンド中の笑顔もさることながら、プレーを終えてからの記者会見は「(最終日前夜は)バリバリ寝たし、メチャメチャ食べた。いつも通りと思ったけど、(緊張で)昨日までの笑顔はできなかったかな」「私でよかったんでしょうか?」など爆笑発言の連続で、私たちをすっかりとりこにしてしまった。 小学校でソフトボールを始め、今でも時間が空けばプレーするという。憧れの選手は、上野由岐子投手。今年5月、上野さんが顎を骨折した直後には「今は、上野さんのことが自分のゴルフより心配です」と言ったほどだ。そして、全英出場権が懸かった最後の大会、アース・モンダミン杯直前の6月25日には、一緒に東京ドームで女子ソフトボールの日米対抗戦を観戦した。木更津でプロアマ戦を終え、駆けつけてきた渋野は、日本代表のタオル、帽子、レプリカユニホームを身に着けて熱烈観戦。日本チームのサヨナラ勝利に「メチャメチャ感動しました! 絶対に最後まで諦めないことの大事さを教えてもらった。この余韻で、しばらくゴルフも頑張れますよ!」と大興奮。その言葉に偽りなく、同杯で4位に食い込み、全英切符を獲得した。 天真らんまんで人並み外れた体力を持ち、時には先輩プロの練習をチラ見しながら研究も怠らない。五輪という大舞台に向け「この順位だけで東京五輪は決まらない。まだこれから何カ月もある。気を緩めず頑張るしかない」と話したシブコ。来年の今ごろ、上野さんと一緒に東京五輪代表となり、1年後の霞ケ関CCで“ゴールド・スマイル”を振りまいちゃうんじゃないかなぁ…。 (月橋文美) ◆岡本綾子「日本に大きな風穴」 ソフト出身の先輩も快挙を祝福
実は渋野のソフトボール観戦チケットを手配してくれたのは、世界ゴルフ殿堂入りも果たしているレジェンド・岡本綾子プロ(68)だった。1987年には米ツアー賞金女王となったが、2000年3月のナビスコ選手権まで通算52回の挑戦となった米メジャータイトルはつかめず、“悲劇”とすら表現された過去がある。 自身もソフトボール出身という共通点がある。5月のワールドレディスサロンパス杯での渋野のプレーを見て「こいつは黄金世代の中でもちょっとものが違うっていう感じだね。単純にスタミナがある。体幹の強さを感じるし、4日間競技を何週も続けられる体力と精神的なスタミナ、4日間最後まで同じスイングを続けられる土台があるから、戦える」と語っていた。こっそり、渋野の憧れ、上野投手にサインボールのプレゼントも頼んでくれてもいた。 今大会は、中継スタジオでリアルタイム観戦。「これで日本の女子ゴルフが変わりますよ。今までなぜだかスケールの小さいチマチマした感じになっていた日本ゴルフの雰囲気に大きな風穴を開けてくれた気がします。体幹を強化していけばもっと飛距離は出せると思うし、これからも自分が伸びていくことへの努力は惜しまないでいってほしい。渋野、おめでとう」とコメントした。 ◆東京五輪への道男女とも出場枠は60人。女子は2020年6月29日時点の世界ランキングを元にした五輪ゴルフランキングで決定。上位15位以内の選手は各国・地域から最大4人まで、16位以下は2人まで(15位以内の有資格者を含む)を上限とする。最新ランキング(7月30日時点)で、日本女子のトップは9位の畑岡奈紗で、鈴木愛が26位、比嘉真美子は43位、渋野は46位で4番目。なお、男子は7月30日~8月2日、女子は8月5~8日に、いずれも埼玉・霞ケ関CCで行われる。 <渋野日向子(しぶの・ひなこ)> 1998(平成10)年11月15日生まれ、岡山市出身の20歳。165センチ、62キロ。8歳でゴルフとソフトボールを始め、小6時に球速95キロを記録。中学入学時は野球部に入ったが、その後ゴルフ一本に絞り岡山県ジュニア3連覇。岡山・作陽高入学後は伸び悩むも、2018年受験2度目のプロテストで合格。今季はQT(予選会)ランク40位で第2戦から出場、5月のメジャー・サロンパス杯で初V。7月のアネッサ・レディスで2勝目を挙げた。書道は準2段。好きな色は青、ピンク。
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