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(なつ)じいちゃんのバター?
えっ じいちゃんのバターを 農協で!?(泰樹)うん。
(剛男)十勝の農協が集まって乳製品の工場を作ろうとしてるのさ。
いわば 酪農家自らが設立する乳業メーカーだな。
へえ~ 農協が 今度は乳業メーカーまでやろうとしてんの!
その先頭に立ってるのがうちの田辺組合長だ。
その田辺組合長に夕見は信頼されてるんだって?
(夕見子)まあね。 半分は通訳を兼ねて一緒に ヨーロッパに視察旅行に行ってきたからね。
向こうじゃ 酪農家が自らチーズやバターを作って売ってるのさ。
立派な工場だって持ってる。それを 十勝でもやろうとしてんのさ。
すごいね。(坂場)すばらしい考え方です。
(富士子)おかげで 夕見子も なかなか結婚のことを考えてくれないんだわ。
また すぐ そったらこと言う。
ごめんね 夕見。 夕見より先にして。
大丈夫。 全然羨ましくないから。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(弥市郎)あっ まあ はい。あっ すみません。
(明美)でも おかしいでしょなつ姉ちゃん。あんなに 牛乳や牛が嫌いだった夕見姉ちゃんが結局 なつ姉ちゃんに代わって今じゃ じいちゃんのバターまで作ろうとしてんだから。
そだね… 本当にそだね!
じいちゃん いかったね。
新しいことしなけりゃ十勝の牛飼いは牛飼いの喜びを感じることもできなくなってるんだ。
牛飼いの喜び…。
(妙子)ありがとうございました。
次の日 なつとイッキュウさんは帯広に来ました。
(妙子)いらっしゃい… あれ!
こんにちは。(雪次郎)あっ なっちゃん!おお~!
イッキュウさん!お久しぶりです。
待ってたわ。 昨日 こっちに来たのかい?
うん。 元気そうだね 雪次郎君。元気だ。
いや~俺は こうなると信じて待ってたんだわ。
まあ 座って。 今 うちの人とばあちゃんにも知らせてくるからね。
あっ おばさん これ最近売られてる東京のお菓子。
おじさん 興味あるかなと思って。
そりゃ喜ぶわ。 ありがとう。ありがとう。
ゆっくりしてって。 ね…。
あっ イッキュウさん うちの菓子何でも好きなの食べてみて。はい。
すっかり 菓子職人になったんですね。あ… はい。
結局 役者より職人の方が向いてたのかもしれません。
もうお菓子作ってんの?まあ 最近やっとな。
したけど ここにあるのは 全部おやじが考えて作ったんだ。
自分の菓子が作れなくちゃ一人前とは言えねえべ。
あっ 咲太郎さんや亜矢美さん 元気かい?
うん。 あっ お兄ちゃんの会社もどんどん忙しくなってるみたい。
そうか…。俺がいなくても 東京は回るんだな。
実は 僕も会社を辞めたんです。
えっ? えっ?
(雪之助)なっちゃん なっちゃんなっちゃん! なっちゃん!あ~ なっちゃん いらっしゃい!
(とよ)なっちゃん おめでとう!とよばあちゃん おじさんご無沙汰してます。どれ どれ どれ どれ。
なっちゃんをもらいに来たって人は あんたかい?
はい。頭いいんだってね。
(雪之助)やめれ。なれなれしいべ いきなり。
なっちゃんの相手ならうちの親戚も おんなじだべさ。
親戚でも なれなれしいわ。
なっちゃん お土産ありがとね。ああ いえ。
東京では もう 雪次郎もいろいろお世話になったみたいで…。
いえ こちらこそ。あの 坂場一久と申します。
どうぞ よろしくお願いいたします。
(雪之助)あ… これは どうも。
帯広 雪月の小畑でございます。
まあ 座って。座って 座って…。
柴田のじいさんに殺されなかったかい?は… はい。
なんとか許してもらえたみたい。なんとかかい?
やっぱし ヤキモチ焼いたのかい?いや そういうんじゃないんだけど…。
会社を辞めたから?えっ?まあ… そんなとこ。
えっ 会社って なっちゃんの?
いや 私は辞めてないんですけどこの人は辞めてしまって。
したら 今は無職かい?(坂場)はい。
それは反対されても無理ないべさ。それで よく来たね。
やめれって。すぐに 次の仕事を見つけようと思っています。
(とよ)そら そだわ。それで 私も満足なんです。
なっちゃんにとったら そったらこと苦労のうちに入らんもね。
はい。 ず~っと強い とよばあちゃん見習ってきましたから。
うれしいこと言ってくれるね。(笑い声)
あっ そうだ なっちゃんウエディングケーキはさ俺に タダで作らせてくれよ。えっ?
世界一のな 十勝のケーキ作る。じいちゃんの牛乳でな。
ありがとう おじさん。
なっちゃんには 本当お世話になったからね。
もう ケーキなんて安いもんよ。
幸せになってくれて 本当にいかった。おめでとう。
おばさん ありがとう。すみません。
あっ あの…仕事は なんとかしますから。
大丈夫 イッキュウさん。慌てない 慌てない。
(とよ)あ~れ! ほれ あれ 先生!
ああ… 倉田先生!
(倉田)やあ。何で!
俺が知らせたんだ。なっちゃんが 今日 ここに来るって。
え~!
奥原なつ 元気だったか?はい。
よし。 お前の漫画映画はいつも見さしてもらってるよ。
「神をつかんだ少年クリフ」 あれは…。
すばらしかったな。
お前の魂を感じた ハハハ。
よかった…。
うれしいね…。
ありがとうございます!うん… ん?
あっ 先生 その映画を演出したのがこの人 イッキュウさんです。
(倉田)イッキュウ…?あ… じゃなくて 坂場一久さんです。
この人と 今度 なっちゃんが結婚することになったんですよ。
ああ そうかい。 君が あの映画を…。
うん あれを作った君になら奥原を安心して任せられる。
奥原なつを どうかよろしくお願いします。
こちらこそ よろしくお願いします。
いかったな なっちゃん。うん ハハ…。
(雪之助)あ~ いらっしゃい。
あ~!(門倉)おお… 奥原!
よっちゃ~ん!
(良子)なっちゃ~ん!
なして よっちゃん! なして私を置いて こんな人と結婚したの!
えっ?ごめんね なっちゃん…。
なっちゃんがいなくて つい寂しくて…魔が差したの!ええ?
よっちゃ~ん!なっちゃ~ん!
まあ いいじゃないか一緒には なれたから。
そうっすね…。な。
(雪次郎)はい どうぞ。
ありがとう 雪次郎君。
ここで みんなに会えるとは思わんかったわ。
なんも なんも。お前 天陽は呼ばなかったのか?
えっ?バカでないの あんたは!
あっ すまん…。なんも なんも。
もちろん天陽君にも会いたいと思ってんのさ。
あっ この人も天陽君の絵が好きなんだわ。
はい。 できればたくさんの絵を見たいと思っています。
あいつは 今や 立派な画家だ。
あっ もちろん職業的にという意味ではなくなあいつの生き方そのものが画家なんだ。
土を耕し 牛の乳を搾り家族と生きている その手から自分の作品を生み出している。
したから あいつの絵は 純粋で尊いんだ。
あっ 天陽んとこ おととし男の子が生まれたんだわ。
知ってる…よっちゃんのとこは 2人いるんだっけ?
気付かないと思うけど 今 ここに3人目。
いや… たたいちゃダメっしょ!
雪次郎 お前もグズグズするな。いつまで 一人でいるつもりだ。
根性入れて 相手を探せ!ねえ おばさん。
本当。 もっと言ってやって。
俺は いんだよ まだ。(門倉)何で?
寄り道したから まだ半人前だ。フフッ。
あっ 倉田先生。(倉田)うん?
農協が 今度 自分でバターを製造する乳業会社を作ろうとしてるみたいなんです。
バターを?(倉田)奥原も聞いたか。
いいかい?これは 非常に画期的なことなんだ。
農民が 企業を頼らずに自ら作った乳製品を消費者に届けようとしているんだからな。
(門倉)北海道の牛飼いは8割から9割が赤字経営だ。
良子の家の牧場 俺が継いでよく分かった。
(良子)メーカーが買う北海道の牛乳はほとんどが バターとかの加工用で安いんだわ。
(門倉)柴田牧場だって 楽じゃねえべさ。
そうなんだ…。
だから 農協自ら工場を作ろうとしているのさ。
まあ それこそ 田辺組合長の言っていた酪農王国への道なのさ。
酪農王国…。
(田辺)この十勝全体を全国一の酪農王国にしたいんだ。
それを 夕見子ちゃんもやってるんだな。うん。
(ノック)組合長 大変です!
どした? 夕見子さん。
国から横やりが入りました。横やり?
十勝の市町村長宛てに集約酪農地域についての速達文書が届いたみたいです。
それは 十勝全体を集約酪農地域に指定するということかい?
そういうことです。それも 今日届いたのにその返答を あさってまでにしなくちゃならないそうです。
あさって?
あさっては日曜でないかい!
そうです。ほとんど こっちには時間がありません。
組合長 どうしますか?
これは どう考えても工場建設に対する妨害です!
その集約酪農地域っていうのに指定されると どうなっちゃうの?
酪農地域として 国の補助が受けられる。
あっ ありがとう。それって悪いこと?
勝手に乳製品工場を建てられなくなるのさ。
国が 我々の計画に反対してるってことよ。
恐らく 裏でメーカーが働きかけてるのさ。
(剛男)したからそういうやり方で潰しに来たんだ。
恐ろしいわね。
世の中の仕組みを変えようとしてることですからね。
それで どうなるの?工場は建てられなくなるの?
いや 建てる道は 一つだけある。
明日中に 届け出を出せばいいんだ。
明日中に?(夕見子)そう。
集約酪農地域に指定される前なら工場新設の届け出だけで工場は建てられる。
(坂場)明日は土曜日ですね。(剛男)そうなんだよ。
明日中といってもお役所は午前中しかやってないからそれまでに 組合長会議で決定して届け出も出さなくちゃならない。
午前中に全部かい。
その準備に追われて今日は こんな時間になったの。
わしらにも できることあるかい?
お義父さん。じいちゃん…。
そだ じいちゃんらもできれば 会議に出て!
えっ?なして?
酪農家が結束してるところを見せれば組合長たちも迷わないべさ。
あっ… したら 明日の朝できるだけ人を集めよう。
えっ したら 私も行く!僕も行かせて下さい!
えっ?あっ いや…なつさんが大切にしている十勝の酪農のことを少しでも知りたいんです。
勝手にすりゃいいべ。
はい!
そういうことでみんな 農協へ向かってくれ。
(菊介)はい。(悠吉)おやっさん 分かった。 行くべよ。
菊介さん先日は申し訳ございませんでした。
は?
皆さんの苦労を何も知らずに軽はずみなことを言いました。
いや…。
皆さんの工場を 必ず造って下さい。
応援しています。
なつよ この人はこういうことが 本当に好きなんだな。
うん。