東京電力福島第1原子力発電所構内の地下水をくみ上げて海に流す計画について、福島県は20日、安全性や風評被害の防止策が確認できたとして計画実施を了承した。これを受け東電は21日、地下水約560トンを放出する予定。汚染水対策が一歩前進する。ただ、第1原発では20日、トラブル続きの汚染水浄化装置がまた停止した。問題の抜本的解決は見えていない。
福島県と第1原発周辺の市町村でつくる「廃炉安全監視協議会」が20日、福島市で開かれ、東電廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者と資源エネルギー庁の担当者が出席。県が明確化を求めていた安全対策の細部などについて回答した。
地下水は構内12カ所の井戸でくみ上げてタンクに集め、放射性物質の濃度が、法令基準より厳しい東電の自主基準値未満なら放出する。国と東電は、一部の井戸で濃度が自主基準値以上になった場合「その井戸のくみ上げを停止し、水質検査の頻度を上げて濃度の推移を監視する」とした。タンクでほかの井戸の水と混ぜた段階で基準値を超えないと判断できれば、くみ上げを再開する。
国と東電は(1)くみ上げ開始後は地下水の水位管理を徹底し、原発建屋の地下にたまった汚染水の建屋外への流出を防ぐ(2)新たな風評被害が起きないよう海水の水質検査の結果を広報する――と説明。21日に放出する地下水は国側と東電、第三者機関の水質検査でいずれも自主基準値を下回ったことも報告した。
閉会後、福島県の長谷川哲也生活環境部長は「県が申し入れた項目について確認できた。漁業者にとって苦渋の選択であり、安全、着実に運用してほしい」と述べた。
地下水が原発建屋に流れ込む前にくみ上げて海に流すことで、東電は1日に発生する汚染水を50~100トン程度減らせるとみている。増田氏は「汚染水が減る意義は非常に大きい」と話した。