エグゼイド&ゲンム in IS   作:Momochoco
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4.Genmuの黒い奴

 開始の合図とともに一瞬で、永夢は距離を詰める。

 これには訳があり、永夢のメイン武装であるガシャコンブレイカーが召喚が出来なかったからである。また、装備のスロットも開放できていないため武装も搭載できていない。

 修正力によって変化したガシャットとゲーマドライバーだったが完全には変化しておらず細かい調整が必要であったのだ。さすがの黎斗でも一日でこれを終えるのは無理だったのだが、それでも、マイティアクションXを仕上げているあたりに黎斗の才能の凄さは十分感じられる。

 

 距離を詰めた永夢は一気にラッシュを決めていく。

 生身の部分や顔が出ている相手に攻撃するのは正直に言えばあまりしたくないと永夢は思っているが、前もって説明された絶対防御の存在を信用し仕方なく攻撃している。

 永夢の激しい連打に山田は一旦距離を取るように上空へと退避する。

 

「空中戦なら、ISに初めて乗った永夢君よりも有利なはず!」

 

 山田を追い永夢もスラスターを開放して飛行する。思っていたよりも安定して飛行できることに永夢自身が驚いていた。

 

「ムテキに比べれば動きに癖がないな……。それに山田先生の機体よりも機動力が高くて、接近戦なら俺の方に分がある。ここは一気に攻めて間合いを作らせない」

 

 安定して飛行する永夢に一瞬驚く山田だったがすぐに、両腕にマシンガンを装備し永夢めがけて引き金を引く。

 接近戦での性能なら圧倒的に高いマイティアクションXであるが距離を置いての戦闘、中遠距離戦は攻撃手段がなく一方的に追い詰められることになる。また、山田の乗る「打鉄」は突出した性能はないものの安定した挙動を取ることが出来る。反対に現在調整不十分のマイティアクションXでは持久戦になればなるほど不利である。総合すると山田の方が有利な状況であると言えた。

 

 銃撃は永夢に数弾直撃するもののそんなものはお構いなしに強引に間合いを詰める。エネルギーゲージの減少よりもペースを掴むことの方が重要だと判断したらしい。

 そのまま強引に体当たりを決める。そのままパンチやキックを繰り出そうとするが寸でのところでまたも山田がアリーナ空中の空いたスペースに退避する、そしてそれを追う永夢。二人はアリーナ内でドッグファイトを展開していた。

 

(思っていたよりも飛行でのエネルギーの消費が大きい。それにエナジーアイテムやブレイカー、キースラッシャーもない……。何とかしてこの膠着状態を攻略する方法を見つけないと。どうやってクリティカルストライクを決めるか……)

 

(永夢君、思っていたよりも慣れていますね。一番厄介なのはあの格闘戦における破壊力。やはりこのまま持久戦に持ち込むのが無難でしょうか……。勝負を焦らなくていい分こちらが有利ですが、攻撃の手は緩めず油断せずに行きましょう!)

 

 背後から迫ってくる永夢を巧みに躱し、動きにわずかなスキが出来れば射撃で確実にダメージを与えていく。ISの機能であるハイパーセンサーを使いこなすなどIS操縦者としての経験は山田の方が上であった。

 永夢も必死に食らいつくがなかなかダメージを当てられずにいた。それでも何度か間合いに入り込み打撃を入れることはできているもの決定打とはならない。

 

 

 ◆

 

 

「思っていたよりもいい勝負になっているな、お前はどっちが勝つと思う?」

 

「戦闘データさえ取れればどうでもいいことですが……、強いて言えば宝条永夢の方が勝つと思いますね」

 

「ほう……、何故そう思う。今の状況は山田先生がかなり有利に見えるが?」

 

「癪に障る話だが私は宝条永夢という男に何度も辛酸を舐めさせられてきたので……、このまま終わるようには思えないだけですよ」

 

 黎斗と千冬はアリーナの観戦席で二人の試合を見ていた。黎斗はノートパソコンとそれに接続されている紫色のガシャットを世話しなくいじっている。次にテストが行われるのは自分であるため最後までプロトマイティアクションXの調整を行っているのであった。

 それに反して千冬の方は楽しそうに山田と永夢の試合を見ていた。学園内ではここまで高度な戦闘をする者は数が少ない。久しぶりに良い戦いを生で見たことでブリュンヒルデとしての血が騒いで仕方ないのである。

 そんな千冬を冷めた目で見ている黎斗だった。

 

「よし!決めた!黎斗、お前のテストは私がやってやろう」

 

「……わかりました」

 

 黎斗は更にノートパソコンを打ち始める速度を上げる。

 その姿を見て千冬は嬉しそうに顔を歪める。もしかしたら自分に迫ってくる者が二人もいるその状況が堪らなく嬉しかった。人類最強と言われようが所詮は人間。本来、戦い好む千冬はこれまでの疲れを忘れ山田と永夢の試合に没頭している。

 ふと千冬は永夢に言われたことを思い出し、黎斗に話しかける。

 

「黎斗、別に私の前では猫を被る必要はない。お前の本性は永夢から聞いているんでな。それとお前がやってきたことも」

 

「……なるほど全部お見通しという訳か。織斑千冬ゥ、この私に戦いを挑むとは無謀なことだとは思わないのか?」

 

 黎斗の挑発に嬉々としてのる千冬。

 

「それでいいぞ、黎斗。お前に勝ったらいずれ永夢とも戦う。楽しみなんだ。異世界の戦士の強さとやらが」

 

「……精々、負けた時の言い訳を考えると良い、織斑千冬」

 

 内心、黎斗は非常に喜んでいた。黎斗にとってブリュンヒルデである織斑千冬との戦闘データはガシャットを改修するうえでかなり有用なモノになる。

 

 二人は別々の思いがあったがこの後に行われる自分達の闘いを楽しみにしていることは一緒であった。

 

 

 

 

 アリーナではいぜんとして山田と永夢による戦闘が続けられていた。

 山田が銃撃を当てたと思えば永夢が何とか接近し一撃を与える。一見五分五分に見える戦いも飛ぶ際のエネルギー消費量や装備の差、また経験の違いから永夢の方がエネルギーの消費量が多かった。

 

 このままでは負ける。そう考えた永夢は打開のための策を必死に模索する。

 

(何か手は……。マイティアクションではやっぱり地上戦が一番だけど地面に落とすのは難しい。……地上戦?、いや違うマイティアクションはアクションゲームだ。ジャンプや踏み付けでの攻撃がメイン。だとすれば……!)

 

 永夢は何かを思いついたのかスラスターをめい一杯ふかし速度をさらに上げていく。

 そんな永夢の行動を山田は冷静に分析していた。

 

(速度を上げてきた!確かにこのままじゃ埒が明かないとはいえ……だけど、その判断は間違っています。勝負が決まるよりも先にエネルギーが底をつく)

 

 速度を上げ一気に加速していく永夢に対して山田は緩やかに上昇しながらマシンガンで牽制を続ける。

 永夢は的確に山田をアリーナ中央上空へと誘導していく。

 

(チャンスは一度きり、たぶん二度目からはすぐに対応されてしまう!行くぞ!)

 

 そして、山田がアリーナ上空で逃げ場がなくなった瞬間一気に加速する永夢。

 無意識のうちに瞬時加速を活用し距離を詰め、最大限加速した状態で渾身の蹴りを放つ!

 

 だがあくまで直線的な軌道を描いた蹴りは山田に先を読まれてしまいギリギリのところで躱されてしまう。

 

(あとは永夢君がエネルギー切れになるところ待つだ―――え!?)

 

 永夢は山田に避けられた後もそのまま直進していく。

 しかし、そのままではアリーナ全体を覆っているバリアにぶつかるだけだけだ

 

 永夢はバリアにぶつかる直前で体勢を逆にし、何とバリアに着地したのである。そしてそのままバリアを足場に蹴り上げ空中でジャンプする。

 先ほどの加速よりも断然早くなっていることに驚く山田に対して、永夢は予想通りの動きをしてくれたISに感謝する。

 

(やっぱりバリアを足場にジャンプの蹴り上げが出来る!このまま一気に決める!)

 

 永夢はガシャットを瞬時にキメワザスロットに差し込み技を繰り出す。

 

『マイティクリティカルストライク!』

 

 永夢はこの一撃にすべてをかける気持ちで全スラスターを開放し、全力の一撃『キメワザ』を山田に叩き込む。

 

 『ズドォォオオン!』と巨大な金属がぶつかる音が響き渡る。

 

『会心の一発!』

 

 空中から一気に地面に叩きつけられ山田の乗る打鉄はそのままエネルギーが切れ、試合終了のブザーが鳴る。

 勝者の座は辛くも永夢が手に入れたのだった。

 永夢の方もほんの数秒後にエネルギーが切れ地面に着地すると、急いでISを解除し山田の元へ向かう。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 山田も地面にできた穴の中から出て来た後に、ISを解除する。

 

「大丈夫ですよ!それにしても強いですね永夢君。まさかアリーナのシールドバリアを足場に使うなんて」

「……たまたまですよ。それより怪我とかはないですか?」

「えーと、久しぶりの試合で、ちょっと、疲れちゃったんで肩を貸してもらえますか?」

「はい!」

 

 永夢は自分がやりすぎたと思っていたが山田に怪我がないようで一安心した。二人は控室に戻るとそこには黎斗と千冬が戻ってきていた。

 

「宝条永夢良くやった。君の戦闘データでプロトマイティアクションXの調整は完壁に済んだァ!私の活躍をゆっくりと見てるといィ!」

 

「山田先生いい試合だった。次の黎斗のテストは私が引き受けるからゆっくり休むと良い」

 

 そう言うと二人はISの格納庫へと向かう。

 

 「……何か二人ともやる気満々でしたね、山田先生」

 「そうですね……。あんな織斑先生を見るのは久しぶりです」

 

 

 

 

 その後すぐに整備され元通りになったアリーナの上に二人が立っていた。

 千冬はラファール・リヴァイヴを装着しており、反対に黎斗はいつものスーツ姿で立っている。

 

「さて、早速試合を始めたい。お前の変身を見せてくれ黎斗」

 

 黎斗は千冬の言葉に反応せず淡々とベルトを装着する。

 

「……グレード1、変身」

 

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!? アイム ア カメンライダー!』

 

 その瞬間、これまでになかった円盤型の物体エナジーアイテムがフィールド中に散乱する。また、足場となるブロックも形成され黎斗に有利なフィールドになっていた。

 フィールドの代わり様に驚く千冬。

 

「何だこれは!?」

「それはエナジーアイテム……、取ることで様々な効果を発揮するアイテムだ」

「エナジーアイテム?なるほど、試合が始まってから試してみるとしよう!」

 

 永夢と同じく2頭身のISに変身する黎斗に千冬が思っていたことを質問する。

 

「一度その形態に変身する意味はあるのか?」

「いずれ教えてやる、グレード2」

 

『レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクションX!』

 

 アリーナにに響き渡る音声と共にレベル1の状態から変形、また永夢のマイティアクションXと同じようなISに変化した。しかしの永夢のマイティXと違い色が紫と黒を基調とした毒々しいものに仕上がっている。目の色も赤く強烈な印象を受ける。

 

「それがお前のISか……。持ち主に似ているな」

 

「好きに言え。勝つのはこの私、檀黎斗だァアアアア!」

 

 そして戦いを告げるブザーがいま鳴らされた。

 

 

 

 

 

 

 



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