彼女の瞳を曇らせたい   作:Momochoco
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正直一話に詰め込み過ぎたので改良して再投稿します


千冬に死ぬほど嫌われている話 Part5

織斑千冬がその少年と出会ったのは全くの偶然であった。

 

 

 千冬が一夏を連れて研究機関を出てすぐ後の話

 束からの情報提供と依頼を受け、自身と同じような完璧にして究極なる生物の完成を目論む研究施設の破壊を行っていた千冬。今日も闇夜に紛れ束からのサポートを受けながら各地に点在する施設の破壊を行っていた。この活動に束がどう思っているのかは分からないが自分にとっては、過去へのケジメであり、科学者たちへの報復の意味もあった。だからこそ躊躇はしない。後れを取ることもない。ただ成すだけであった。

 

 今日の施設はいつもより生臭く感じた千冬。それは無残に破棄されたクローンの山を見たからなのか、痛々しくバラバラにされた少年の介錯をしたからなのかは分からない。だがここで行われたことは他の施設よりも残酷であることは分かった。怒りはない、あるのは起きてしまった結果に対する悲しみだけであった。

 

『本当に胸糞悪い施設だね~』

 

「ああ、全くだ……」

 

 通信機越しに千冬に話しかける束の声色も酷く低かった。頭のねじが外れている天災にとっても、この異様な世界に対して嫌悪感を覚えるのだなと千冬は感心する。粗方、施設の処理は終らせた。これまでもそうだが捕まっていた中で生きている人間は開放し、死を望む者には安らかな死を与える、これが千冬の生存者への処理であった。残酷かもしれないが幼い千冬にはこのやり方でしか人を救う術を知らないのである。

 

 データや情報、設備や機材の破壊、回収は束の担当である。欲しいデータや機材があれば頂くし、なければぶっ壊す。まさに天災の名の通りの行動をしている。だが今回は不参加で、理由は気持ち悪いから。

 

「よし、これで最後だな」

 

 そう言ってバックパックから最後の爆弾を設置する。使わない施設はキレイさっぱり吹き飛ばすのが束なりの拘りであった。

 

『ちょっとまって、ちーちゃん。そこの施設の最重要データベースを解除して中身を確認したら……どうやら、もう一体だけ未覚醒の実験体がいるみたいなんだ。悪いけどその子を回収してもらえないかな?束さんからのお願いl』

 

「いつものお前なら未覚醒の実験体は放置するのに珍しいな。何か訳ありなのか?」

 

『うーん、簡潔に言えばちーちゃん達の弟にあたる存在なんだ。データベースの情報によればクローン計画を進化させ天才である束さんをも超える存在を作る計画だったみたいでね。その計画で唯一、成功した実験体があって回収して欲しいのはその子なの』

 

「お前を超える存在だと…………私は反対だ。そんな奴が世に解き放たれてしまってはこの世の終わりだろうが」

 

 千冬の意見は至極当然である。一人でさえ何をするか分からない束に加えて、それ以上の実験体まで覚醒した日には日本の、いや世界の終わりといっても過言ではない。もちろん千冬も助けたい気持ちがない訳ではない。自分の弟と呼べる存在なのだ見捨てておけるはずもない。千冬の頭の中で二つの意見がぶつかり合う。さっきは回収に反対したが、自分の弟と呼ばれて考えが揺らいでいるのだ。

 そんな悩む千冬に束がアドバイスをする。

 

『心外だなあ。それならさあ、まずは見てから決めない?』

 

「見てからだと?」

 

『そうそう。悪そうな顔だったら放置で良いし、優しそうだったら回収。わかりやすくていいんじゃないかな?』

 

「……はぁ、仕方ない、それでいこう。案内は任せた」

 

 どういう決断にするにせよ一目見るくらいは構わないかと納得する千冬。

 しかし実際は束の思惑通りに動いてしまっていた。千冬は冷徹であるが残酷ではない。自分の弟である存在を目の当たりにしたならば情が移ることを束は読んでいたのだ。 

 

『おっけー、それじゃあまずは次の通路を――――――』

 

 束の指示通りに進みついた場所は施設の最奥、薄暗い保管庫であった。

 置いてあるのは一つのカプセル型装置のみ。ガラス越しに見える人影は背丈から子供と判断できる。

 千冬は近くに歩み寄ると中の子供を覗き見る。長い金色の髪に白い肌をしている少年であった。自分とは似ても似つかない容姿をしていたがその無垢な顔つきに心を奪われる。人間というよりもどちらかと言われれば作られた人形に近い。

 

「これがお前の言っていた実験体か」

 

『うん。可愛いでしょ。拾って育ててみようよ!』

 

「まったく、犬や猫とは訳が違うんだぞ――――――だが、まあ、いいだろう」

 

 出会ってしまったのならば捨ててはおけなかった。千冬は装置を起動させ中の培養液を輩出し装置から少年を引きずり出す。ぐったりとした四肢は生気を感じさせず、眠っているというよりは死んでいるようであった。それでも小さく息をしていることから生きてることが確認して取れた。

 そして千冬が見守る中、少年の瞳がゆっくりと開かれる。それは思わずくりぬいて飾っておきたいと思うほどに綺麗な青色をしていた。うつろな瞳は千冬を捉える。

 

「ここ……どこ?」

 

「ここは…………病院だ。それで……そう、お前は私の弟で今から家に帰るところでな。おぶってやるから安心してもう少し寝ていろ」

 

「うん。わかった……」

 

「……はぁ、何とか誤魔化せたか。さて、一夏には何て言うべきか」

 

『うーんとね、ちーちゃんの隠し子ってことで「言い訳あるか!それよりも早く回収を頼む」

 

『はいはい……わかりましたよーだ』

 

 そう言って束は千冬と少年の回収をするためロケットを操作する。問題はこの少年を一夏にどう説明するかだ。まあ、優しい一夏なら何の疑いもなく受け入れてくれる筈。千冬はそう思いながら青年を背負い研究所を後にする。千冬が出て行って数分後に爆発し、研究所は跡形もなく消え去った。

 

 

 家に変えると既に一夏は眠っていた。

 時刻は既に12時を回っており、健康的な小学生である一夏はぐっすりと眠っている。

 千冬は室内のソファに少年(裸ではまずいので一夏のお古を着ている)を座らせる。

 千冬は少年の目覚ましを促すように肩を揺さぶる。

 

「ほら、起きろ。家に着いたぞ」

 

「……家?ボクは病院にいたはずじゃ……」

 

「さっきも言ったが私が家に連れてきた。私の名前は織斑千冬。お前の姉でこれから言一緒に暮らしていくことになる。そしてお前は手術の後遺症で記憶が欠落しているところがある。まずは確認のために自分の名前はわかるか?」

 

「わからない……なにも覚えてない……」

 

「分かったもう少しテストしてみるか。まずは―――」

 

 千冬がいくつかの質問をしていく。それに対して少年は自分の家族や誕生日、自分の周りに関することは何一つ覚えておらず。それとは逆に一般教養や知識、計算など勉学や学問や一般常識などは完璧に覚えているのであった。

 つまりは自分とその周囲に関する記憶がないのである。

 

「ごめんなさい……ボク、これぐらいしか思い出せなくて……うぅ……」

 

 自分が何もかも忘れてしまったことへの恐怖と、そんな自分に対する悔しさから自然と涙が溢れ出てきてしまう。

 そんな少年を抱きしめ千冬は優しい声で語り掛ける。

 

「謝ることはない。大丈夫、お前と私が家族であるのは私が保証する。記憶がなくなってしまったなら、これから思い出をまた作っていけばいいさ。違うか?」

 

 千冬に抱きしめられ心音を生で感じる。

 自然と温かい気持ちになった。自責の念も消え去る。

 

「あ、ありがとう……姉さん」

 

「……姉さん。いい響きだな……おっと、それより何かお腹は空いてないか?簡単なものでよければ私が作るが?」

 

「えっと、姉さんが作る物なら何でもいいよ」

 

「それが一番困るんだがな。まあいいオムライスでも作るか」

 

 千冬は数日前に学校の調理実習で、オムライスの作り方を習ったばっかりであった。

 千冬は手際よく料理を作り始める。

 そのあいだ少年はまるで借りてきた猫のように大人しくなってしまった。千冬は家族だと言ってくれたが正直まだ怖い。

 

 そんな少年を横目にパパっと調理を終える千冬。

 

「ほらオムライスだ。味に関しては期待しないでくれよ」

 

 少年がスプーンですくったオムライスを口に運ぶ。

 おいしい、心の底からそう思える味であった。

 

「おいしい……ありがとう姉さん」

 

「そうか、そう言われると作った甲斐があるというものだ。おかわりもあるからすきなだけ食べてくれ」

 

「うん!」

 

 少年の心の壁は一気に崩れ去り、千冬に正直に感想を述べる。

 実際は千冬のオムライスはそこまで上手に作られてなかった。それでも、久しぶりの食事であり、何より千冬の思いが伝わったことで美味しく食べることが出来たのだった。

 

 食べた後はまた急激な眠気が少年を襲う。カプセルの中ではずっと睡眠状態であったためその癖が残ってしまっているのだ。

 

「姉さん……何か、また眠くなってきたんだけど……」

 

「保存カプセルの影響か。分かった私の部屋を使って寝ると良い」

 

「姉さんは?」

 

「ここのソファで寝るから問題ない。お前はゆっくり休め」

 

「あの……一緒に寝てください……一人は怖いから」

 

 少年は暗い培養液の中でずっと育ってきたため、人と人のつながりを無意識に欲しているのである。また、この世界に対して恐怖心を抱いているため強い人間を本能的に近くに置いておきたいのであった。

 千冬は一瞬意外そうな顔をするが、弟に甘えられるのも悪くないと考えその提案を了承する。

 

 

「今夜だけだぞ」

 

「……うん!」

 

 千冬の言葉に嬉しそうな笑顔を返す千冬。

 この少年を助けるという選選択が正しかったのか、それとも間違いであるのかこの時の千冬にはまだ分からない。だが少なくとも一緒に寝てあげるくらいはかまわないと思うくらい千冬はこの少年に惹かれているのであった

 




分割するのでPart6まで延長
その後にエンディング


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