気まずく目をそらしていたNPCたちだが、主の悲鳴があがっては放置できない。
「守護者統括殿、やりすぎです!」
「アルベド様、ひとまずお離れください!」
デミウルゴスとセバスが、同時に駆け寄る。
一瞬遅れて、他の高レベルNPCらも駆け寄った。
「ああああ、モモンガ様の甘露――しゅ、しゅばらしいでありんす」
シャルティアのみ、ゴキブリの如く床を這いながらぴちゃぴちゃと奇妙な音を立てていたが。
幸か不幸か、彼女に目を向ける者はいなかった。
「離せやぁ! これから、モモンガ様をいただくんじゃぁ!」
至高の御方の上では、アルベドが暴れていたのだ。
ほぼ全裸のままで。
「あーふぁ……あは、あるべど、げんきだな……」
モモンガは未だ呆けたまま、暴れるアルベド、取り押さえんとする守護者たちを眺めるばかり。
時折ぴくっぴくっと思い出したように絶頂し、目は蕩け、口は半開きのまま。
その目にはハイライトもなく、体液の溢れた痕跡も明らかな……まさに事後。
「はぁはぁ、モモンガしゃまっ♡」
床を舐めるシャルティアが、足元に近づいても気づきすらできない。
そのまま吸血鬼に足先から付け根まで舐めまわされようかという時。
一時的に離れたアルベドの隙をついて、ナザリックのメイド長がモモンガに触れた。
「失礼いたします、モモンガ様……〈
あらゆる精神異常の強制解除と、一時的精神耐性を与える呪文。
心身ともドロドロにされていたモモンガの意識が、一瞬でクリアになる。
「あ……あれ?」
蕩けた目にも理性が戻り、不安げに周囲を見る。
幸か不幸か、痴態を晒した記憶は飛んでいた。
「……え? え?」
控える無数のNPC。
守護者ほぼ総がかりで取り押さえられているアルベド。
横に立つ
足下で土下座しているらしき少女。
騒ぎ暴れていたNPCたちも一斉に沈黙した。
主の言葉を待つ。
「今、時間はどうなってるんだ? ユグドラシルのサーバーダウンは?」
「今は0時13分……さーばーだうん?」
シズ・デルタが即座に答えた。
「日付がとうに変わっているだと? それはそうだ……よな」
整った眉を寄せつつ、緊急の操作をするが……。
「何……? コンソールが開かない……GMコールも効かない……だと?
〈伝言
〈伝言
(はいぃ、なんでしょうモモンガ様ぁっ)
最後に、試しでアルベドにつなげれば、即座に応答が入る。
「む……アルベドにはつながるか。呪文は普通に使えているのか?」
不明の言葉と共に困惑する主に、NPCらがざわめく。
あの恥辱の後遺症では……と気遣う声もあった。
「あの、こんそーる、じーえむこーる、とはいったい……」
足下からシャルティアが土下座したままたずねる。
「…………シャルティア?」
特徴的なゴスロリドレスと、銀の髪で、顔を見ずとも彼女とわかる。
パンドラズ・アクターを除けば、シャルティアはモモンガが最も製作に関わったNPC。
己の娘のようなものだ。
「は、はい」
今の今まで床を舐めていた口元を瞬速で拭い、顔を上げた。
「………………」
「ひゃっ!?」
モモンガはそんなシャルティアを抱え上げ、膝の上に乗せる。
無心のままに彼女の頭や頬を、その白い手で撫でた。
シャルティアの顔が赤く染まり、ゆるみ、にやける。
間違いなくシャルティアに触れる感触だ。
(NPCなのに表情もある……声で口も動いていた。
匂いや感触もあるし、こんな全身で触れ合うのはR-18に触れるはず……)
横のペストーニャを見れば、彼女も首をかしげて見せる。
ざわめくNPCたちの動きも、プログラムではありえない。
(そういえば、最後に骸骨じゃなくしたんだっけ)
シャルティアを撫でる己の手は白く、ほっそりとしている。
(そうだ、それでアルベドと結婚を……)
ようやく思い出し、さっき結婚したアルベドに目を向ければ。
「あ、あんのガキャアアアア!!」
凄まじい形相のアルベドと目が合った。
「おわっ、ちちちち、違うからな、アルベド! これは浮気とかじゃないぞ!
彼女は私の娘も同然なのだ。み、みんなもアルベドを離してやれ! 状況を説明する!」
ぎゅっと、恐怖のあまりシャルティアを抱きしめながら、アルベドを解放させた。
巨乳大好きなシャルティアとしては、最大級のご褒美である。
たわわな乳房の谷間に埋もれたシャルティアの表情は、モモンガに見えてない。
(うひょおおおおおおおおおおおおお、おほおおおおおおおおおおおおおおおおお)
モモンガはシャルティアに書き込まれた設定をほぼ覚えていないのだ。
AIの制御下だったシャルティアは(アルベドも)特に変態的行動はとらなかった。
親友ぺロロンチーノが作った100レベルNPCという以上の認識は、ほとんどない。
(ふひょほおおおおおおおおおおお!! こ、これはいいってことでありんすね! ね!)
びちゃびちゃれろれろじゅるじゅると、酷い音を立ててモモンガの乳房を舐めていた。
手で揉んでもいる。
NPCたちの顔がまた、うわあ……となるが。
表情の見えないモモンガは、〈
「まったくシャルティアは、思っていたより甘えん坊だな」
女性の体となった影響か、モモンガの中には確かな母性愛がある。
「ぐうぇへへへ、ひゃい~、シャルティアは甘えんぼでありんす~♡」
慈母の表情で髪を撫でるモモンガに、さらに調子に乗るシャルティア。
その笑い声に純真さなど皆無だが、主は気づかない。
「――シャルティア、控えなさい」
ようやく衣服を整えたアルベドが、冷たく言い、シャルティアを引きはがす。
「チッ」
舌打ちしつつも、シャルティアは離れた。
主が、己を憎からず思っているとわかっただけで、彼女としては満足だ。
(そんなに子供相手に嫉妬せずともいいだろうに)
モモンガは一人、状況を理解せず、苦笑して二人の髪を撫でる。
それだけで二人は恍惚とした表情を見せた。
(やっぱり感情や意志があるみたいだな……それにしてもなんだか胸や下半身が冷たいなあ)
そんな二人の様子を他人事のように観察し。
己が晒した痴態の記憶もないまま――モモンガは立ち上がった。
胸の谷間はシャルティアの唾液に濡れ、下半身はいろいろ溢れたままである。
――が、
「すまないな。無様を晒した。アルベドも、許してほしい」
アルベドの手を取り、握る。
やわらかな暖かい手だ。
モモンガ本人としては、空白の10分間は、パニックを起こしたと考えており。
まさか手を握る相手による、痴態と恥辱の連続だったとは覚えていない。
「そんな、妻として許すも許さないも……くふーっ!」
手を握り、下卑た笑みを浮かべたアルベドだが、モモンガはNPCたちに目を向けていた。
各階層守護者、セバス、パンドラズ・アクターら、高レベルNPCらが前に進み出ていたのだ。
「どうやら至高の御身にすら不測の事態の様子ですが……
もしや、さきほどおっしゃられていたユグドラシル終焉と何か関係が?」
代表として発言するデミウルゴスは、敢えて主の言葉をスルーする。
アルベドの邪笑と、先刻の痴態を話題にせぬよう、気遣ったのだ。
「ああ。本来ならあの時……日付の変わると同時にユグドラシルは消滅したはずだった。
このナザリック大墳墓も、私も、お前たちも、すべてもろともに、だ」
不安からアルベドの手を強く握り、無意識に身を寄せてしまう。
「くふーっ!」
互いの黒い翼を絡め合うように互いの腰を抱き寄せつつ。
モモンガは説明と推測を述べ始めた。
NPCたちが裏切るなら、もうとっくに空白の時間の間に殺されていただろうし。
今もそっと肩を抱き寄せてくれるアルベドがいれば、なぜか安心ができた。
それが
そう、『ユグドラシル』ではフレーバー情報だったが。
そしてモモンガはあのくちづけの中、アルベドによって繰り返し何度も“屈服”させられたのだ。
性的に。
モモンガの純潔はボロボロである。
その異常経験は、モモンガの隠された性的レベルを上昇させつつ。
鈴木悟ではない……
今やモモンガは、アルベドに体を密着させ、その存在と体温を感じてこそ満たされる。
あの恐ろしい笑みを見ても、魅力的としか感じない。
あらゆる状況において、無意識下にアルベドを優先し、頼ってしまうのだ。
(シャルティアに無防備なのは、天然だが……)
かくして、べったりと密着し、触れ合いながら。
モモンガはリアルの説明を除き、ほぼ全てを包み隠さず話すのだった。
■捏造設定
・〈
公式呪文〈
以後、少しの間モモンガさんは感情抑制付の強制賢者モードなモモンガさんになります。
ただし、種族に引っ張られたサキュバス的価値観は変化ナシです。
・
ユグドラシル時のフレーバーは「相手を誘惑し襲うが、逆に屈服させられれば隷属し、従順な使い魔となるという」程度。特にそんなマイナススキルはなく、単なる設定。
しかし、モモンガさんはアルベドを屈服させる前に、屈服させられまくったので、いろいろ酷い状態です。「ギルドへの執着」が「アルベドへの偏愛」にチェンジしつつあります。そしてアルベドさんは目下、モモンガさんラブではなく、至高の御方に欲情するビッチに過ぎません。
モモンガさんはヤンデレ力を溜めています。
・アルベドとシャルティア
設定変更されていないので、ナザリックの処女ビッチ双璧です。
アルベドが処女じゃなくなりそうで、シャルティア焦ってます。
アルベドもはよヤらな!と焦ってます。