臨時国会が召集され、参院選の結果を反映した新しい国会が始まった。国民を代表する唯一の立法機関として、国民のための法律をつくり、行政を監視できるのか。全議員にその自覚を問いたい。
一日に召集された臨時国会では新勢力となった参院本会議場の風景が少しだけ変わった。
参院選の比例代表で「れいわ新選組」から初当選した筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦、重度障害者の木村英子両参院議員の初登院に合わせて、出入り口に近い最後方に、大型の車いすが使える空間が確保されたり、介助者の立ち入りや採決時の投票代行が認められたためだ。
意思疎通のためのパソコンの持ち込みも必要に応じて許可し、体調に配慮してネクタイや上着の着用を求めないという。
こうした対応は当然のことなのかもしれないが、前例を重んじる国会では大きな変化だろう。
しばしば「永田町の常識は世間の非常識」と言われる。国会が政界の常識にとらわれて、国民から遊離すれば、国民のための政治などできるわけがない。
今回の参院選では、性的少数者(LGBT)の石川大我氏も初当選した。女性の当選者数も過去最多の二十八人に並んだ。
社会の多様性に合わせて国会も変わる必要がある。参院の新勢力は、国会や社会に変革を迫る国民の意思と受け止めるべきだ。
にもかかわらず自民党議員から理解に苦しむ発言が飛び出した。
安倍晋三首相に近い萩生田光一幹事長代行が、国会での改憲論議が停滞するなら大島理森衆院議長を交代させ、「改憲シフト」を敷く必要があると述べたのだ。
与野党の反発を受けて、同党の二階俊博幹事長が慎重に発言するよう注意し、萩生田氏は「言葉足らずで誤解を与えたようだ」と釈明したというが、七月の参院選で国民が示した意思を理解していないのではないか。
参院選では自民、公明の与党が改選議席の過半数を確保したものの、与党と日本維新の会などを合わせた「改憲勢力」は改正発議に必要な三分の二を割った。
国民が改憲に慎重な意思を示したのに改憲シフトを主張するとは国民の声に真剣に耳を傾けていない証左だ。猛省を促したい。
臨時国会はきょう閉会し、本格的な論戦は秋に召集予定の次の臨時国会に持ち越される。新勢力の国会が国民の声を受け止めているか。しっかり監視したい。
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