はじめまして。すももと申します。Twitterとnoteで男女に関する色々な話題について書いています。このサイトの読者層は「20~30代の働く女性」だとうかがっています。そこで今回はみなさまに、”あるお願い”をするためにコラムを書きました。
「女性のみなさん、男性に幸せをおすそ分けしてもらえませんか?」ということです。
ここまで読んで「あっ、わたしにはメリットのない話だ」と読み飛ばさないでいただけるとありがたいです。この後を読めば今の社会の実態を正確に認識することができ、今後のあなた自身の行動にきっと活かせるものになると思いますので。
日本の女性は世界一、男性よりも幸せ
まずはこちらのデータからごらんいただきたいと思います。
画像出典元:「世界価値観調査」HP、「世界価値観調査・第6波調査」(2010~2014年)より筆者作成:http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp
このグラフから読み取れるのは、日本は女性の幸福度から男性の幸福度を引いた差(女性超過)が先進12か国の中で最も大きいということです。
日本の女性を幸せにする専業主婦
女性の幸福度が高いのはどうしてでしょう?
女性の中でも特に幸福度が高いのは「若い女性」と「専業主婦」です。”若い女性は幸福である”、これは日本に限らず、他の国でも共通の特徴だと思います。
一方で「専業主婦」というのは日本独特の特徴です。日本は、他の国と比べると、女性の「専業主婦」の比率が高く「専業主婦」を肯定的に捉える傾向があるからです。
日本の未婚男性の惨状
それでは逆に、男性の幸福度が低いのはどうしてでしょう?
男性の中でも特に幸福度が低いのは「未婚男性」です。「未婚男性」は成人男性全体の約3割を占めており、決して特殊な人たちではありません。先進12か国別、性別、未既婚別のすべての組み合わせの中で、日本の「未婚男性」はダントツで幸福度が低いのです。
画像出典元:「世界価値観調査」HP、「世界価値観調査・第6波調査」(2010~2014年)より筆者作成:http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp
さらに、こちらのグラフをご覧ください。
画像出典元:総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」HP総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」HP、総務省「就業構造基本調査」(2017年)より筆者作成https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html
「男性は年収が低いほど、未婚になってしまう」という関係が読み取れます。さらに未婚男性は、未婚女性と比べると、幸福度が低いだけでなく、社会階層が低く、健康状態も低く、人生における家族や友人の重要性も低いということもわかっています。
「性役割はダメ」という建前と、実際の行動のギャップ
ここまでをまとめると、日本では専業主婦が肯定される傾向があり、専業主婦になることは女性の幸福度を高める原因となっています。その一方で、お金を稼げない男性は未婚になり、非常に幸福度が低い状態になってしまうという現実があります。
日本では建前としては「男性は外で仕事をし女性は家庭を守るべきだ」という性役割意識に反対するようにはなりましたが、実際に異性を選択する場面においては、まだまだ性役割が強い国だということです。
女性の「幸福への道」は「未婚への道」にもつながりやすい
女性の気持ちはとてもよくわかります。少子高齢化で将来が不透明な時代、これから生まれてくるであろう我が子のために自分が享受したのと同じくらいの環境を与え、投資したい。今よりも生活水準を落としたくない。そのためには高年収男性が必要だ。
しかしこれをみてください。2019年度版「少子化社会対策白書」からのデータです。
画像出典元:内閣府「少子化社会対策白書」HP、内閣府「令和元年版 少子化社会対策白書 全体版」に掲載の内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」(2019年)の結果より抜粋https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/index.html
7割強の未婚女性(20~49歳)が結婚相手の条件として年収400万円以上の男性を望んでいるのに対して、それを満たす未婚男性(20~49歳)は3割弱しかいません。女性が将来の我が子のために「高年収男性」を望んだとしても、現実的にはそれを手に入れるのが非常に難しい状況になっているのです。
また「出生動向基本調査」(2015年)では、年齢が高い未婚女性ほど「理想の相手を待つ」と回答する比率が高まる傾向があります。これは「理想が高い女性」ほど「残ってしまう」ということを示唆しています。(男性も同様の傾向がありますが、女性の傾向の方が顕著です)
画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」HP、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査・独身者調査」(2015年)より筆者作成http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp
一見「幸福への道」にみえてしまう「高年収男性探し」は、確率の低い博打を打つようなもので、失敗すると「未婚への道」となってしまうのです。
理想と現実が離れてしまう理由
「働く女性が増えている」というニュースはよく見かけると思います。バブル崩壊以降、男性の賃金が伸び悩む一方で、女性の賃金は長期的には一貫して伸びてきました。しかし、その一方で、女性が結婚相手の条件として「経済力」を重視する比率が高まりました。
【賃金、男女間賃金格差】
画像出典元:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」HP、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より筆者作成https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
【女性が結婚相手に重視する条件=経済力】
画像出典元:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」HP、国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査・独身者調査」より筆者作成http://www.ipss.go.jp/site-ad/index_Japanese/shussho-index.html
常識的に考えれば「女性が経済力を付けたならば、男性の経済力に依存しようとしなくなる」と思うでしょう。しかし実際は逆の動きが起きたのです
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。ここはあくまでも仮説ですが、次のような理由があると考えます。①親世代の価値観の継承、②高学歴化、③自身の世代体験、です。
①に関しては、今の20~30代の親の多くは好景気を知っています。親のライフスタイルや金銭感覚などが子に継承された可能性があります。さらに近年は親子の親密化が進んでおり親の影響は強くなるでしょう。親のように専業主婦になったり、男性は若くても年収が400万円以上あるということが当然であるという固定観念があるのではないでしょうか。
②に関しては、今の20~30代は大学進学率が高いです。高学歴になると、男女かかわらず結婚相手に求めるものが高まります。女性は特にそれが顕著です。「出生動向基本調査」(2015年)の「結婚相手で重視する条件」の質問では、大卒の女性は高卒の女性と比べると「学歴」が14.0%、「職業」が13.5%、「経済力」が8.3%も高まります。
③に関しては、特に今の20代に該当することなのですが、新卒の就職活動において就職氷河期やリーマンショックなどのような厳しい体験をしていない(もちろん個人差はあるでしょうが)ことで、①の認識が修正される機会がなく、温存されてしまうということです。
女性のみなさん、男性に幸せをおすそ分けしてもらえませんか?
さて、私は最初に「幸せをおすそ分けしてもらえませんか?」と申し上げました。それは言い換えれば「男性に経済力を依存しようとする考えはやめませんか」ということです。
男性に経済力を依存しない女性が増えるということは、専業主婦のような立場の人が減るわけですから、女性全体の幸福度が下がってしまうかもしれません。しかし日本の女性の幸福度は世界的に見て決して低いものではありませんし(「世界価値観調査」(2010年)では男性が先進12か国中8位、女性が同5位)、未婚であるよりも既婚であることの方が幸福度が高まります。未婚になるかもしれない博打(高年収男性探し)を打つよりも確実な利益(既婚になる)を獲りにいくほうが賢明なのではないでしょうか。
「男性を経済力で選ばない」ということは必ずしも「魅力的ではない男性を選ぶ」ということを意味しません。確かに男性において「高年収であるほど、人間的な魅力もある」という経験則があるかもしれません。しかし、日本型雇用慣行が崩壊し非正規化が進んだ結果、もしバブル崩壊以前の経済環境に生まれていたならば高給を稼げたであろう「人間的に魅力的な男性」が、現在の高年収ではない層に多く含まれているはずです。そのような男性を選べば、仕事も、家事・育児も、協力し合って幸せな家庭を築いていけるのではないでしょうか。
どうかそのような男性に対して幸せをおすそ分けしてもらえませんか?