2019年7月30日11時、フェミ科研費裁判の第2回公判が京都地方裁判所で開かれました
僕は再び野次馬根性を発揮し、スタコラ傍聴へと出かけました
その日、僕が京都地裁にたどりついたのは、だいたい午前10時30分くらいだったでしょうか。裁判所にはすでに多くの人が手荷物検査で並んでいました
裁判所の傍聴席は意外と狭いので、耳目の集まる裁判ですと大法廷をつかっても希望者全員は収容できません。そこで何らかの方法で選別が必要となってきます
前回は先着順でしたが、今回は抽選によって傍聴人が決まります。なので裁判の始まる30分前にでも着けば一番乗りかな、とも思っていたのですが……。たぶん僕は傍聴希望者のなかでも遅いほうだったのではないでしょうか? どうやら僕はフェミ科研費裁判の支援者たちの熱心さを舐めていたようです
手荷物検査も終わり、裁判所内に入った僕は、まだ抽選結果の発表まで時間があったので、喫煙室を目指しました
……が、無い
前回来たときにはたしかにあったはずの喫煙室が、なくなっています。本年7月1日から排除されていたようです。なんてこった!
まあ、しかたがありません。大人しくスマホをいじりながら抽選を待ちました
有り難いことに運良く抽選に当たり、無事に傍聴できて良かったです
あっという間の裁判
抽選に当たり「やったー」と喜び勇んで傍聴に臨んだのですが……
裁判自体はものの数十秒で終わりました
裁判長の発言といえば、「携帯電話の音が鳴らないようにしといてくれ」という傍聴席に対するものと、被告・杉田水脈の代理人に話を振ったくらい
被告代理は一言それに応じ、閉廷となりました(携帯電話の話をしていた時間のほうが長かったんじゃないかな?)
あっという間の裁判でしたが、杉田水脈が「論評の範囲」を武器にして争う姿勢であることがわかりました
つまり「私はフェミ科研費バッシングで牟田和恵さんらの評判を落としたかもしれない。けれど私は牟田和恵さんらの所業を真っ当に論評しただけ」というのが杉田陣営の主張なわけです
まあ、名誉毀損裁判の定番ですね。僕もこのブログを誰かに訴えられたら、「論評の範囲」を武器に戦うので悪しからず
……しかし、後述するように、杉田水脈陣営の武器は「論評の範囲」にとどまらなかったのです
そのことは裁判終了後の支援者集会で明らかになります
支援者集会① 支援者たち
杉田水脈陣営の主張の全容を説明する前に、今回の支援者集会の話を少ししましょう
裁判は即終了だったものの、支援者集会では相当に濃厚な時間を過ごすことができました
集まった支援者たちのスピーチは、それぞれ熱く、また興味深い情報の宝庫でした(念のために言っておきますが、一般の支援者集会参加者がスピーチをさせられるわけではありません)
正直、どこまで集会の内容をレポートしていいのかわからないので詳しくは言えないのですが、杉田水脈の兵庫県西宮市職員時代の話が特に面白かったです
「杉田水脈はかつてはあそこまでエキセントリックではなかった」
「国政の世界で生き残るためにああなったのではないか」
このあたり、青木理『安倍三代』に出てきたエピソード(http://www.jcp-kawajyu.jp/data/abe3generations.htm)と重なる部分があって味わい深いですね
もっとも杉田水脈の場合は"攻撃的な発言をして、市民と取っ組み合いになりそうになったこともある"(https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201808/0011506290.shtmlより)ので、エキセントリックの片鱗はあったわけですが
また、西宮市職員の噂では「杉田水脈の講演は一本40万円」という話があるそうです。ウヨのセミナー・講演に参加するには、左派のそれの3~4倍ほどの料金が必要なので、噂とはいえなかなかリアリティのある数字ですね
国政で生き残るため……
お金儲けのため……
杉田水脈がウヨ業界で果たしている役割は別として、彼女個人の行動原理が少し見えてきた気がしますね
支援者集会の話② 中野晃一
支援者集会のメインイベントは、中野晃一上智大学教授の講演です(この講演については事前に告知されていたこともあり、また、中野晃一さんは反・安倍政権として有名な方なので、内容を書いても迷惑にはならないと判断します)
講演では、フェミ科研費裁判やそこにいたる過程というよりも、もっと大きな、いわば現代における右派全般のことを年表を使って話されていました
中野晃一さんによると、右派が嘘だろうがデタラメだろうが、あらゆる手段をもちいて難癖をつけてくるのは、傍目に「論争がある」という状態をつくりだすことにあるそうです
実際には「ウヨが噛みついているだけ」でも、論争っぽく見えれば右派にとっては充分だそうで
この効用は、歴史教科書を見れば一目瞭然ですね
論争がある→諸説あることを教科書に載せられない→大日本帝国の罪が教科書から消える
……という流れです
こうした「論争効果」とでもいうべきもののために、沖縄戦強制集団自決や「慰安婦」問題は教科書から消えていきました
論争っぽいものがあるからといって、思考停止してはいけないことを中野晃一さんは訴えます
まったくもってそのとおりで、冷静に「それは論争にはなっていない。ウヨが噛みついているだけ」と見極めることが肝要です
中野晃一さんの話を聞いて思い出したのが、キリスト教ファンダメンタリスト(原理主義者)の手口です
進化論を否定し、聖書に書かれていることの全てが真実だとする考えが、なぜ21世紀の西洋社会で一定の力を持ちえているのか
そのことを解説した文章が↓です
"通常の科学説も一つの仮説、反進化論者の主張も一つの仮説というふうに並べてしまえば、どちらの妥当性もフィフティ・フィフティだという印象が生まれるでしょう。確率が半々であれば、信者は反進化論を堂々と選べるわけです"(中村圭志『知ったかぶりキリスト教入門 イエス・聖書・教会の基本の教養99』より)
つまり「論争の効用」は「信じたいものだけを信じる」という態度を呼び起こすことにもなるのです
なぜか国家と自分を同一視しているウヨさんたちが歴史修正主義に飛びつくのはこのためなのです
さて、中野晃一さんの話のキモは上で述べたとおりなのですが、その他の細かい部分も面白く、さすが人気のある学者さんだなと感心しました
細かい話のなかから、ひとつだけ紹介したいと思います
その内容というのが、こちらの記事にも見られる「ジャパンタイムズ」の問題です
リベラルな紙面で有名だった日本の英字新聞ジャパンタイムズ
しかし、最近は様子が変わったようで……。というのも、オーナーが交代しちゃったからなんですね
新オーナーで会長の末松弥奈子
末松弥奈子に連れられやってきた水野博泰・取締役編集主幹
そして水野博泰がジャパンタイムズにやってくるまで勤めていた「グロービス」のグロービス経営大学院で学長をつとめる堀義人
これらがことごとく安倍政権寄りというか、ズブズブの関係でして……
「ジャパンタイムズを押さえられてしまった意味は大きい」と中野晃一さんは語っていました
海外メディアは、まずジャパンタイムズを読んで日本の状況を知るからだそうです
なんとも恐ろしい事態が進行しているのですね……
それにしても、ホントに面白かい講演でした。この日、裁判所まで足を運んだ甲斐があったというものです
支援者集会③ 原告団弁護士は語る、杉田水脈陣営の武器を
では、予告していた杉田水脈陣営の武器についてお話しましょう
裁判中に明らかになった武器のひとつが「論評の範囲」というのは、上でも述べました
しかし、原告弁護団によると、それはサブウェポンにすぎないのだとか
どうも杉田水脈陣営はあのフェミ科研費バッシングを「社会的評価を低下させるものではない」をメインウェポンにするらしいですね。そちらの主張のほうが「論評の範囲」よりウェイトが重いそうで
いやいやいやいや
学者の研究を捏造扱いしといて、研究費用を不正使用しているよう言い立てておいて、その主張はおかしいでしょ
原告弁護団の報告者も「(比重が)逆だったらわかるんですけど……」と困惑してましたよ……
……そんなわけで、ますます興味深いものとなったフェミ科研費裁
第3回期日は2019年12月15日です。支援者集会も面白いので、僕もできる限り参加したいと思います