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中央アルプス駒ケ岳でライチョウ復活計画 来年度、北アから3家族移す

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 国の特別天然記念物で絶滅危惧種に指定されるニホンライチョウの繁殖計画を進める環境省が来年度、北アルプス乗鞍岳の三家族約二十羽を中央アルプス木曽駒ケ岳に移して繁殖させる試みを計画している。

 中アのライチョウは半世紀前に絶滅したとみられていたが、昨年、北アから飛来したとみられる雌一羽が見つかり、繁殖できる環境にあることを確認。中アの生息地復活に向けた新たな繁殖策として、専門家らの了承を得てライチョウの「移住」に乗り出す。

 計画に先立ち、今年六月、乗鞍岳で採取した有精卵を中アに運び、昨年見つかった雌にひな五羽をふ化させたが、全て行方不明に。中アでふ化したひな五羽はキツネやテンなどの天敵に捕食され、いずれも死んだとみられる。

 一般に、ふ化から一カ月間の死ぬ率が高いことから、環境省は来年度、中アへ移す前に乗鞍岳で、母鳥とひなを夜間に専用ケージに収容して天敵から守る取り組みを行う。ケージ保護は別の場所でライチョウを三倍近く増やした実績がある手法。乗鞍岳でふ化したひなをケージで一カ月間守り、母鳥三羽とともに木曽駒ケ岳に移す。

 これとは別に、乗鞍岳で採取した有精卵を運び、中アの雌が産んだ無精卵とすり替えてふ化させる試みは来年度も継続する。

 ライチョウは、日本の高山環境に適応して氷河期から生き残る固有亜種。一九八〇年代に三千羽ほどいたが、二〇〇〇年代に二千羽弱に減少。地球温暖化が進めば、生息に適した環境が今世紀末にはほぼなくなるとの予測もある。

 成鳥や卵を人為的に移動させる是非について、環境省の担当者は「中アで半世紀前まで生息していたこともあり、生態系に与える影響はほぼないと見ている」と語る。同省の繁殖計画に携わる信州大の中村浩志名誉教授は「人為的にやらないとライチョウは減っていく一方だ」と意義を強調する。

 (宮崎厚志)

 

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