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【社会】

<この空の下>被爆の「祖母」私を変えた

 東京に住む中華系マレーシア人、レオン・シャオインさん(36)には忘れられない人がいる。世田谷区の女子高に留学中の二〇〇〇年八月、広島での平和学習で会った当時八十四歳の青木愛子さんだ。

 爆心地から一・七キロの広島駅で被爆。自身は無事だったが、皮膚がぼろ布のように垂れ下がったり、水を求め川に落ちて亡くなったりした人を多く目にした。「戦争を二度としてはいけない」と涙ぐみ、レオンさんの手を握ってくれた。

 ショックだった。第二次大戦で日本に占領された母国の教科書は「原爆が投下され戦争が終わった」と一言のみ。「戦争で日本は加害者だけど、日本の一般の人たちは被害者だった」。帰京して青木さんに手紙を書き、文通が始まった。

 月一度の文通は六年続いた。部活で演奏した「荒城の月」など琴のテープを送ると「聞いてなぐさめられます」と返事が。文通を重ねるうちに「原爆投下は防げなかったのか」と疑問を持ち、東京の大学と大学院で国際関係学を学び、国際機関に就職。広報担当として活躍した。

 三年前、百歳で亡くなった青木さんにレオンさんは感謝している。「平和を考え行動するきっかけをくれたおばあちゃんだから」 (増井のぞみ)

 

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