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【社会】

「表現の不自由展」中止 出展者・中垣克久さんに聞く

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 愛知県で開催中の「あいちトリエンナーレ2019」で、テロ予告や脅迫ともとれる抗議が相次いで中止に追い込まれた企画展「表現の不自由展・その後」。出展者の一人で東京都在住の造形作家中垣克久さん(75)=写真=が四日、取材に応じ、「民主主義の国でこんなことはありえない」と危機感をあらわにした。中垣さんの作品は五年前、「憲法九条を守り」「靖国神社参拝の愚」などと書いた紙片が「政治的」と問題視され、東京都美術館で撤去を求められていた。 (宇佐見昭彦)

 -中止をどう思うか。

 「五年前には『殺す』と言われた。脅迫の電話が美術館や自宅にも相次いだ。今回、脅迫があっても、まずは『警察に言います』でいいのではないか。暴力から市民を守るために警察がある。警備強化のプロセスを飛ばし、いきなり中止を決めた。脅迫や暴力を肯定したことになる。騒げば展覧会を中止にできるという前例を作ってしまった。こんなに軽く主催者側が折れた事例は、知る限りない」

 -来場者の反応は。

 「『頑張ってください』と言ってくれる人が多かった。直接、私への脅迫は聞いていない。ただ、知人の画廊経営者から『こんな(日韓関係悪化の)時期に慰安婦像の展示はおかしい。一緒に出品する中垣さんもおかしい』と言われ、その画廊で来年予定していた個展の開催は難しくなった」

 -慰安婦像をどう見る。

 「純粋芸術ではないが、表現の自由を考える展覧会に出すことは悪くない。見た人が自由に評価なり反駁(ばく)なりすればいい。そういう自由がなくなっている」

 -政治家の発言は。

 「河村たかし名古屋市長の撤去要請は、表現の自由を保障した憲法に反する。補助金交付と絡めた菅義偉(すがよしひで)官房長官の発言も許せない。文化の独立性を汚した」

 -主催者から説明は。

 「三日夜遅く、実行委員会から電話で『展示できなくなった』と。作家抜きの決定はおかしい。これも一種の暴力。四日夜、芸術監督の津田大介氏から謝罪の電話があったが、個々の作品と作家に対し、なぜ展示中止なのか、文書で理由の説明を求めたい」

 

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