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![]() 【社会】「考える機会」脅かされた 展示中止 来場者「残念」「偏りも」
慰安婦を象徴した少女像展示への抗議・脅迫などから中止が決まった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」。会場の愛知県美術館(名古屋市)には三日、大勢の来場者が押し寄せ、展示中止には落胆の声も上がった。 美術館八階の展示室には午前中から来場者が大勢集まり、急きょ入場を制限。最大で二時間待ちの行列ができた。 来場した男性が少女像の頭に紙袋のようなものをかぶせようとしたり、別の男性が「公序良俗に反する展示だ」と職員に詰め寄ったりする場面も。だが混乱は大きく広がらず、午後六時の閉館まで来場者が絶えることなく続いた。 会員制交流サイト(SNS)で展示への賛否両論を見て興味を持った名古屋市南区の高校二年野口琉晟(りゅうせい)さん(16)は「インターネットと違い、落ち着いて鑑賞できた。表現の自由や日韓関係を考えるきっかけになり、来て良かった」。愛知県の男性会社員(32)は「来る前は反発を感じていたが、考えさせられる作品もあった。中止は残念」と話した。 同県あま市の会社員森健男さん(63)は「内容が思想的に偏り過ぎ」と批判。名古屋市中川区の主婦(55)は「表現の不自由というならグロテスクなもの、性や著作権に関する作品も展示すべきだった」と指摘した。 展示室に続くガラス扉は午後七時前に施錠、シャッターが下ろされた。その後も報道で中止を知った人が訪れ、職員に「再開予定はないのか」と尋ねていた。 ◆「戦後最大の検閲」実行委が抗議声明「表現の不自由展・その後」の実行委員会は三日、芸術祭実行委に対し「主催者自らが弾圧する歴史的暴挙。戦後日本最大の検閲事件となる」との抗議声明を出した。 不自由展実行委メンバーとして同日、記者会見した小倉利丸さん(67)は「電話の嫌がらせに対応できる人員を県は用意しなかった。知事にも毅然(きぜん)と対応する旨を発信するよう求めたのに」と愛知県の対応を批判。岡本有佳さん(56)は「検閲や自粛による表現規制の年表も展示したが、新たに一行が加わってしまった。何が起きたのかを明らかにせねばならない」と憤った。
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