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あとがき

 

 

 

 O God, give us
 serenity to accept what cannot be changed,
 courage to change what should be changed,
 and wisdom to distinguish the one from the other.

 

 Reinhold Niebuhr

 

 プロデューサー各位の情熱もすっかり冷めた頃だろう。最後にこのゲームの仕組みと、これから待ち受ける展開に関する話をひっそり書き残して、「このブログの正体」を明かしておくとする。あとがきというのは読まれないのが常なので、私自身は独り言のつもりでこれを書いている。

 念のため前置きをすると、この話はあの日から何日後になるのかは分からないが、何故かここに辿り着いてしまった貴方がこのゲームに抱いている幻想を消してしまいかねないものになる。私は割と善意のつもりでこの話を隠していた。「主張」でも「推理」でもない、「数字」の話。ただの歴史と経済学、ゲーム理論の講義みたいに退屈な話だ。

 

 断言しよう。

 次回の総選挙は、ない。シンデレラガール総選挙は今回が最終回だ。

 

 現実的な話をしたら間違いなく畳まれる。もしこのままの形式で次回が開催されたとしたら、「デレマス」はかなりの無茶を通してくれている。

 私は総選挙がこの結果に終わることを予想して、このブログを立ち上げておいた。最後の記事で書いた通り、順位も展開も全てが予想通りだった。ならばこの先もきっと当たりだろう。もし私の予言が的中していたら、以下の仮説はかなり信憑性が高いものとなる。

 今の私は悪酒とともに余計な口を滑らせに来たNPCのようなものだ。その話を真に受けるかは貴方次第だし、きっと多くの方にとってそうあるように、怪文書の書き手で片付けてくれても一向に構わない。

 

 それと、本当にこれが何よりも大事な情報なので先に言っておかねばならない。

 私は藍子、加蓮、りあむ、未央の「4人」が本当に好きだ。190人の中でも上から順に綺麗に「この4人」だった。その立場を持ってこの話をしている。そんな彼女たちが活躍してくれたから、きっと私はこの話が出来るのだ。

 前置きは以上だ。開幕ポエムによって読む気も失せ切ったところで、本文に移ろう。

 

 《この世界の仕組み》


 まずはデレマスと、総選挙の歴史を簡単におさらいしよう。

  モバマス内には初め、100種類ほどのカードがあった。
 カードたちには、「キュート」「クール」「パッション」という三つの属性が与えられた。ゲーム内では年に一度、全カード参加型の投票ゲーム、「総選挙」が行われていた。ただしこれは「人気投票」ではなく、それを基にした特殊な投票ゲームだ。

 

 総選挙には、「各属性の上位3名、計9名の中から必ず退場者が出る」という独自のルールがあった。「1位となったカード、シンデレラガールは次世代へバトンを渡すべくゲームから降りる」、そして「CV未実装カードはCVを獲得し、シンデレラガールを目指さずにゲームから降りる」。ふたつの理由でゲームの勝者を「受け継いで」いた。

 

 カードの追加を繰り返しながら、最大で9枚、最低で1枚のカードを取り除く。そのルールが一部の例外を除いてほとんど守られた上で、計7回の総選挙が行われた。

 

 すると問題が発生した。「属性間のバランス」が崩れた。具体的には、パッション属性の得票率が極端に低下してしまった。
 近年は特に顕著で、キュートとクールの二属性による寡占が続いた。過去の総選挙のリザルトを見るだけでも明らかだ。順位差が激しすぎる。最もこの情報はプロデューサー間では常識と言っていいものだし、こういうバランス崩壊自体は遍くゲームを展開する上でいつかは発生するだろう綻びには違いない。

 「パッションの一弱」。これが総選挙が、あるいはこのゲームそのものが長い間抱えていた欠陥だ。


 《新カード追加の意図》

 
 そして第8回総選挙を迎える少し前。運営は現存する183枚の中に、さらに7枚の新カードを追加し、計190枚とした上での開催を宣言した。

 

 この出来事は当時大いに波紋を呼んだ。誰もが一度は疑問に思った。「これ以上新カードを追加する必要はあったのだろうか」と。
 利益と展開力を完全に度外視すれば、総選挙の存続は可能に見えるだろう。そもそも「新カードは総選挙に参加できない」みたいなアナウンスを添えるだけでも、制御自体は可能だったはずだ。

 マンネリ化防止、新規層開拓・ユーザー層入れ替え、ヘイトコントロール。そんな理由なんかも当然あっただろうし、実際どれも効果は覿面だっただろう。ただし見過ごされがちな本質は別にある。

 

 総選挙へのテコ入れ。「属性間のバランス調整」だ。このゲームには構造上、「カードの追加・削除」以外でバランスをコントロールする術がない。

 ここは認識の齟齬が発生しそうだが、「新カードを中心に総選挙を行う」という限りではない。運営も実際追加を行うまでは新カードがどれほどの反響を呼ぶかは分かるはずもないし、分かれば苦労しない。
 ただ「プロデューサー側が話題にせざるを得ないほどに、新カードを出来る限りド派手に追加する」だけでバランス自体は調整されるし、副産物として上に羅列したような運営的においしい現象も発生する。

 

 つまり「インフレ」を起こす訳だ。

 例えばそうして新カードたちが話題となり、それぞれがいきなり50万票以上を集めたとする。キュートとクールには100万票を集めるカードがほとんどだった為、新カード介入の余地はなく、当然バランスに変化はない。反対にパッションには50万票に達しないカードが多く、新カードたちがその穴を埋めることとなる。結果としてパッションだけが補強される。これが「新カードたちがそのままパワーカードとなった」形のバランス上方修正であり、後に第8回総選挙はこちらの世界線に到達する。

 

 この表現ではやはり既存カードが切り捨てられたようだが、その認識も完全な正解とは呼べない。もうひとつの世界線、何らかの形で既存カードが新カードに対抗しうるほどに「強化」されているパターンもある。

 この世界にはそうして、運営ではなくプロデューサー側にカードの「レベル上げ」を行える仕組みがある。それは時折「プロデュース」なんて言葉で美しく修飾される。この言葉はしばしば真なるそれとは何かという議論が成され、そんなものは無いとも揶揄されるが、あくまで「特定のカードに総選挙で投票を発生させる為の行動」とだけ定義するのであれば、運営とプロデューサー、両方面から確かに存在する。

 

 運営側には新たなるコンテンツの提供。プロデューサー側には納税や創作、SNS上での応援、さらに反発運動ですら該当する。慰めでも煽りでもない事実であり、その努力が数字として示されれば、運営はそのカードを中心に展開を始める。

 運営は自らの一存で「ゲーム内でメインとするカード」を選べない。それを決めるのは消費者たるプロデューサーだ。ガチャにしろストーリー追加にしろ新カードにしろ、運営にできるのは次の展開を用意することだけだ。どんなに特定カードの出番を増やそうと、実際カネが落ちなければカードはコンテンツ力を持たない。全てのソーシャルゲームにおける共通理念だ。

 

 そして新カードには、直接人気カードになる必要はない。そのきっかけであればいい。新カードに負けないだけのカネや人気、投票を、既存カードが確保してくれてもいいのだ。故に表現としては「インフレ」が適切だ。
 今回の総選挙では、とある1枚のカードがそうして総選挙に「火」を灯した。このカードが最大限に機能したからこそ、今回の総選挙は盛り上がったと言える。このカードはかなり細かなキャラクターデザインが施されており、名前、年齢、容姿、人物相関図、趣味嗜好、あらゆる設定が、どこからどう見ても「目立つ」ようにデザインされている。私個人はどう考えてもパッションをピンポイントで「燃やしに来た」と考えている。

 

 とは言ってみたが、このもう一つのルートはあくまで「理屈」の上の話だ。

 新カードにより発生する「インフレ」が総選挙自体を利用した壮大な「バランス調整」だった場合は、今の説明で片が付く。その上でまだ総選挙を行ってくれるルート自体は何%か残っている、というレベルの説明になる。


 《第8回総選挙における運営の狙い》 


 以上の基本情報を踏まえて頂いて、今回の総選挙自体を、初めから簡単に振り返ろう。

 

 1・「未央と加蓮の一騎打ち」に関して


 此度のゲームは「本田未央北条加蓮の一騎打ち」とされていた。

 この認識にも齟齬がある。厳密には「未央の勝算がかなり高かった戦い」であり、だからこそ未央は勝たざるを得なかった。これもデータが出ている。第7回総選挙の結果を見ると、1位ウサミン、2位未央。3位の加蓮は未央との間に1.5倍ほどの得票差があり、なんなら4位の鷹富士茄子にまくられかけている。加蓮は割とギリギリの3位だったのだ。

 

 未央はゲーム内最強のカードにして、これまでの総選挙存続の立役者だ。実に5回に渡って「パッション上位レースを一人で支え続けた」というとてつもない功績を持つカードだ。
 しかし彼女はNGのメンバー。このゲームの「御三家」の一角であり、いつかは勝たねばならない存在だ。未央が総選挙内に留まり続けている限りは、運営は総選挙を続けざるを得ない。キャラクター性、パワーバランスの両方の理由で、彼女の存在そのものが総選挙を支えてくれていた。だがそんな彼女による制御も時間切れだ。コンテンツのほうにリソース限界が来た。

 

 そんな最強のカードが最後にせざるを得なかった戦いに、加蓮は挑戦者で有らざるを得なかった。最早ストッパー役を演じられるのが、現存するカードでは彼女くらいだった。といった具合に、状況も勝算も込みで絶対に「未央が勝たねばならない」戦い。これが二人の力関係と「一騎打ち」を、数字から見た場合の正しい理解だ。

 もっとはっきり言うと、運営はそもそも未央を勝たせるつもりだった。加蓮は元々、1位争いすらさせてもらえなかった。

 

 2・「夢見りあむ」と「高森藍子」の役割

 

 その「一騎打ち」を支えたのが、「夢見りあむ」と「高森藍子」になる。

 

 りあむの役割は、「未央に切りかかること」だ。未央はりあむに絶対に負けられない。理由なんて言うまでもないだろう。

 りあむの参入により、パッション総選挙には先ほど説明した「インフレ」が発生する。CV獲得を狙うカードたちは得票数、課金票も増加しただろう。今回はナタとヴァリサがその煽りを受けた。
 しかし、りあむはハナからパッション内のどのカードも相手にしていない。最初から彼女の対戦相手は未央だけだ。炎上ブーストによる「敵役」として機能し、そして「倒される」ことこそが真の彼女の仕事だ。

 

 これも断言しよう。りあむには元々1位になる未来だけは用意されていなかった。
 仮に彼女が1位になってしまっても、票結果を隠蔽すればいいだけだ。面白い話で、完全に外側から荒らした人間たちも含めて、総選挙は「票結果がそのまま開示される」ことが一切疑われていないらしい。議員選挙とは違うのだから、票結果なんて操作すればいい。

 

 そしてその争いには最終票結果こそ離れているが、影の支援者がもうひとりいた。それが藍子になる。

 既にCVのある藍子にはどうしても勝たねばならない理由というのはない。CV獲得と総選挙楽曲獲得では重みがまるで違う。だから彼女のポジションは美嘉かしゅがはでも構わなかったはずだ。ただ今回は設定や勝率、周期なども考慮された上でなのだろう、総選挙におけるひとつの役割を彼女が担う形になった。妥当なところだ。仮に私が運営でも彼女を選ぶ。

 

 その役割が「ガチャを貰うこと」だ。総選挙を恙無く行うのであれば「役割」として必要だ。

 今回の総選挙で明確に順位変動の為のガチャが開催されたのは、「北条加蓮」と「高森藍子」だ。

 これはどちらも「勝ちたいなら回してね」、さらに今回に限っては「りあむに負けたくないなら回してね」という性質もプラスされたガチャになる。タイミングが藍子は「中間発表前」、加蓮が「中間発表後」なのもそつがない。加蓮Pと藍子Pはともに、戦いに出ようと思うのであれば回すしかない。加蓮の場合は未央との戦いを見据えている訳で、りあむに負けている場合ではないだろう。

 ふたつのガチャはかなり回ったようだ。加蓮に至っては空になった。運営はそれなりに懐に納めたことだろう。こちらにもインフレだ。

 

 だが、こうして運営が儲けられることがガチャの一番のメリットではない。
 カードたちに「勝つ理由」を作れるのが最も大きい。

 これぞ総選挙の持つ経済効果の根幹、その名も「ガチャブ神話」だ。

 

 ガチャブ神話、つまり一部のプロデューサー間では「特定カードのガチャを行えばそのカードが順位を上げる」と信じられている訳だが、実はここに明確な根拠は存在しない。ガチャブは威力が不透明なものだ。ゼロではないのは間違いないが、実数値は定かではない。「だからこそ」未だ盲目的な信者がいる。

 

 そもそもの話をすると、ガチャブ神話には割とツッコミどころ自体は多い。
 特定カードのガチャを開催したからと言って、そのカードが順位を変えるほど票を伸ばせるとは限らない。ガチャ一本で展開が確定した昔と今とでは大きく状況も違う。主展開はデレステへ移りつつあり、投票そのものがふたつのアプリによる合同集計となり、昔の何十倍もの票のやり取りが行われている。ユーザー層も大きく入れ替わっている。そこに果たしてモバマスのガチャブは、どこまでついていけているのだろうか。大体課金すれば票はつぎ込める訳なのだから、誰にだってガチャを回す理由はある。

 

 といった具合に指摘自体は出来るが、信者側にも反論の余地は多い。
 それでも答えとなるデータは出る訳もないし、出す方法があったとしても運営がやるわけがない。「ガチャによってこれだけの票が動きますよ」なんてのが数値として出てしまえば、ガチャブ神話は崩壊する。故に議論は平行線で、神話は永遠たる。

 

 その半永久的なガチャブへの信仰こそが、このゲームの肝だ。
 「ガチャさえ開催してしまえば、そのカードが勝っても違和感がない状態」を作れる。カネが発生する上に、勝利への免罪符として機能する。この二つを併せ持つことが最も運営的においしい。なんなら総選挙を開催する一番の理由でもあるのかも知れない。

 

 《4人の役割》

 

 という訳で運営は、中間発表までに総選挙の結末を確定させた。

 

 1位、2位は予定通り未央、加蓮。3位は両者に敗北を喫し、その「一騎打ち」を阻害しない壁役として機能したりあむ。

 この「三つ巴の成立」は恐らく、運営の最も望んだ展開だ。

 

 「中間順位は早々ひっくり返らない」。これもプロデューサー間に染み付いた常識のひとつだ。後は加蓮にガチャブを行ってしまえばいい。未央にはそもそも追いつけず、りあむには追いつく術がない為。このまま3人がゴールに到達する。

 

 そして残るパッション上位レースの参加者は、CV獲得を狙うナタヴァリサ、そしてガチャブを得た藍子の3人に絞られた。これで藍子が票を伸ばして最終結果属性内3位で終わったとしても、運営的にはCV付与の必要がないので楽な話だ。

 

 本田未央の役割は「勝つこと」。夢見りあむの役割は「未央と加蓮に負けること」。そして、北条加蓮高森藍子の役割はさしずめ、「最後のガチャで集金を行うこと」だったのだろう。

 彼女たち4人の役割は総合して、「最後のお祭り」を協力して「盛り上げる」ことにあった。誰もが未央の勝ちを絶対に阻害しない。そもそも出来ない。その上で各種インフレで大騒ぎを起こし、表舞台では勝負結果をギリギリまで隠蔽すると同時に最後の特大集金を行う、といった感じだ。きっとその戦いには、全員にレールが敷かれていた。誰も悪くなく、誰も拒めない。これはただの宿命だ。

 
 3・結果発表、そして終わりの始まり

 
 此度の総選挙は大いに盛り上がった。
 舞台はゲームの世界を飛び出し、SNS全体に散布した。完全に外野の荒らしユーザーまで巻き込んだ。外部のニュースサイトが結果を取り上げ、話題はパッション属性のカードがかっ攫った上で、過去最高の得票数を記録するという異例の終演を迎えた。内訳としては、全体1位未央、3位りあむ。さらに大きく得票差が開いた上で、9位ナターリア、10位ヴァリサ、15位藍子となった。未央とりあむの票を合わせれば500万票になる。

 

 しかしそれでいて尚、パッションの全体得票率は29.3%。
 三属性の中で唯一30%を切り、最下位というデータが提示されている。あれだけ盛り上げておいて、だ。愉快な話だろう。

 

 総選挙終了から2ヶ月ほどが経過した現在。ひとまずSNS上では大きな問題として取り沙汰されてはいないようだが、この結果とパワーバランスを保ったまま、この世界は1年の時を過ごし、総選挙は次回の開催を待つ形となっている。だんだんと来年に向けての選挙活動なんかが始まっているようだ。

 

 ではここでも考えてみよう。次回は誰がパッションの上位に入るのだろう。
 いや、言い方を変えよう。誰が上位に「入ってくれる」のだ?

 

 この枠はCV実装済みカードにしか担えない。

 未央はCGとなりゲームから降りてしまった。もう彼女には頼れない。
 りあむは瞬間的超火力を失った。彼女が集めた浮動票は来年以降キュートとクールに流れ始める。彼女の得票率は運営にだって読めない。こういう話題性自体は残っているのだからパワーカードにはなれるのかも知れないが、やはり確定はしない。余りにも不安定過ぎるカードだ。


 残る候補者は藍子くらいだ。だがこのカードではパワーが足りない。

 先述の通り、彼女はガチャを伴って15位だ。そんな彼女がCV実装済みカードの中では属性内2位となっている。彼女はガチャブ込みでもCV未実装カードたちの躍進を止めることが出来なかった。つまり次回以降は、「どのカードにガチャを入れてもCV未実装カードたちが上位枠に入れる公算がかなり高いゲームが続く」という理屈が通ってしまう。

 

 「既にガチャブは効力を失っているから仕方ない」という弁護も可能だが、そちらを唱えるのならガチャブ神話が崩壊する。ガチャを行っても勝てるカードが居なくなる。ガチャが回らなくなる。

 ガチャの影響がないことによる、「ガチャブ神話の崩壊」。ガチャで持ち上げてこの順位という「パッションの一弱」。どちらかの動かぬ証拠となるのが、今の高森藍子の順位だ。そして彼女のような既存カードには、りあむのように爆発的に票を伸ばす手段も、来年票を伸ばしてくれるという明確な根拠も存在しない。

 

 ならばこの後は、誰がどうやって「パッション」を支えるのだ。

 「各属性の上位3名、計9名の中から必ず退場者が出る」。「毎年、各属性から3枚のカードを総選挙に参加させねばならない」。パッションからカードが上位レースに「出続けられる」ではない。「出続けるしかない」のだ。これは総選挙のルールそのものだ。

 そこに収まるのは誰でもいい。愛もアイドル性も個性も物語も人気も面白さも感情も炎上もプロデュースも不要だ。そこに居るのが自然なカードであれば、それは表舞台で「安定した人気」とか「出来レース」とか呼ばれ、意外なカードであれば「面白い」とか「許せない」とか呼ばれるだけだ。

 

 「来年りあむは失速する」。「未央が居なくなったぶん、藍子が順位を伸ばしてくれるし順当に属性3位はいけそう」。「藍子には勝てるだろうからCV未実装アイドルはチャンスが拡大した」。作戦会議のつもりなのだろうか、ほうぼうでこんな声も挙がるようだけれど、パッション総選挙内にそんなヒヨった会議は許されていない。そんな風に消極的で、誰かが繰り上がり合格をするような流れを続けるようでは、パッションの得票率はますます低下する。雑に計算すると、あくまでバランスを維持する為には、未央とりあむの300~400万くらいの票をパッション属性内で分かち合わねばならない。

 

 もし藍子たちが来年以降票を伸ばせないままだと、CV未実装カードがそれだけ低いハードルを飛び越えられる状態が続く。その流れが続けば順位はさらに開く。なんなら上位枠全員がCV未実装カードという結末もあり得る。

 そんな結末は何度も用意できない。「パッションの一弱」は間違いなく話題になるし、報酬としてCVを与えている以上、さらにパッションからの退場者が例年より増える。次回総選挙を開催するということは、こんなリスクを孕んでいるのだ。

 

 この状態で総選挙をやるのはかなり厳しいと私は考える。だから終わるのだ。原因は特定のアイドルでも、プロデューサーの意識でもない。ただの「時間切れ」だ。

  ゲームバランスが崩壊した。パッションが限界を迎えた。パッションのCGで始まった総選挙は、パッションのCGを最後に終わりへ向かう訳だ。

 
 《総選挙とモバマスの未来》


 と、ここまでがモバマスの歴史と、初回から第8回総選挙の結末まで。その超簡単なまとめだ。

 数字と状況に関しては「まとめた」だけだ。出来る限り削った。この記事の初稿は今の何倍もの文章量だった。さらに詳細なデータとともに記事を書くことも出来るのだけれど、流石に冗長が過ぎた。各々で調べて見識を深めて欲しい。

  私は途中から妄想混じりの総選挙終了説や陰謀論を唱えたように見えるかも知れないが、数字のほうは絶対に妄想になってはくれない。ここまでに出た数字は全て事実だ。バランスは間違いなく崩れている。こんな場所でくらい目を覚まそう。この世界は「ソシャゲ」であり、「カネ」を動かす「ゲーム」なのだ。

 

 そしてもっと「そもそも」の話をしよう。これは総選挙終了説の更なる根拠でもある。もしかすると順序が逆で、先にこちらが決まってから、その為に運営が上のような総選挙の終演を形作ったのかも知れない。

 

 「モバマス」自体が終わる。

 

 だが「デレマス」が終わる訳ではない。その展開がデレステメインにシフトするだけだ。この世界は既にモバマスから未来へ、「次世代に繋ぐ物語」を続けている。そういう伏線や情報をばらまいている。これに関しては根拠を一つに絞るのは難しい。サンプルは多い方がいいだろう、雑に挙げておく。

 

 まずもってデレステのほうが新アプリだ。新しいものに舞台が移るのは自然な流れだ。Twitterアカウントのフォロワー数、公式ツイートのリアクションもデレステが圧倒的に多い。
 結局のところ「展開を多く望まれている」のはデレステだ。全てのアイドルがこのアプリでのSSRやイベント出演、何かしら優れた展開を欲しがられ続けている。かたや倍率の厳しいカード一枚、かたや入手難易度も低ければイラストカードに3Dモデルまでが付いてくるアプリとでは、課金欲の煽られ方が段違いだ。
 一方、「課金なしでも遊べる」ゲームは、実はどちらかといえばモバマスだ。ボタンを押すだけでなんとなくプレイしている気分に浸れる。意外とデレステ側は音ゲープレイそのものに影響が出る。
 今やデレステを通して以外にモバマスを始める人はほとんど居ない。ユーザー層は時とともに入れ替わる。


 バンナムとのコラボイベント、デレステからの流用カードガチャ、復刻イベントの増加。どれもこれも末期のソシャゲがよくやるコスト削減のための手法だ。

 モバマス内のガチャが回っていない。総選挙外も含め、あらゆる形でデータが出た。到底ここには書ききれない。

 flashが2020年に終わる。継続するのであれば予算を割いて新たなプラットフォームの構築が必要だ。

 シンプルに考えれば、モバマスを畳んだ分のコストはデレステに回せる。集金先が絞られるので展開もしやすい。世は未だソシャゲ激戦区だ。モバマスに割いているリソースは削りたいだろう。

 本家を畳むのはお隣、ミリオンと同じ歴史を辿るだけだ。度々ボヤも出るが、お隣さんとの関係はとても「良好」だ。同一コンテンツにある以上、永遠の仲間でもあり競争相手でもある。二者が競い合い、美点をシェアし、時に協力して展開を広げ続ければお互いにカネと人気を「内輪」で回し合える。実に理想的な関係だろう。

 

 表舞台の話もしよう。

 ニュージェネレーションがシンデレラガールの衣装を纏って登場した。まるで華々しい最終回を飾るようだ。

 シンデレラガールズ劇場はクライマックスシーズンらしい。
 「あかあきりあむ」が三属性の「ニュー・ニュージェネレーション」とも謳われている。デレステへの移植も恙無く済んだ。デレステ側の展開にはボイスが不可欠だろう。もし必要な状況とあらば、「りあむにボイスがついたこと」を理由に与えてやればいい。もっと陰謀論的な言い方をすると、「最初から新アイドル7人にボイスを与えるつもりだった」のだとしたら、やはり総選挙はこの結末を迎え、りあむは「3位」獲得が最も望ましい。

 肝心のりあむのガチャ追加・ボイス発表が遅い。実は彼女は割とコンテンツ的には冷遇されている。既に彼女の担当も増えたのだから、少なくともモバ側はさっさと貢がせるべきなのにそれをしない。

 同様に、モバ側ではちとせたち4人がかなり冷遇されている。追加こそされど、どう考えても「こちらで話題にする必要はない」と判断したような、申し訳程度のストーリー追加だ。反対にモバ側の3人はデレステSSRすら頂戴した。
 「トリクロマティック・ナチュレ(響子・加蓮・藍子)」なんかの、「新たな可能性」なんて言葉で飾られた「次世代NG的ユニット」が増加した。

 PCS、TP、ポジパの「三属性ユニット」の露出が多い。明らかに登場頻度が高い。「御三家」とそれに関わりのある「次世代」がセットで物語に登場し続けているし、これから先のデレステ内ガチャにりあむ、加蓮、藍子がそれぞれ確定している。

 デレステSSR実装周期が早くなった。いよいよ全アイドルのSSR実装も夢ではなくなってきた。

 

 楽曲面はどうだ。

 「自分の足で歩けシンデレラ」と歌う「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」。その言葉とともに現れた「7枚の新カード」。そもそも声優とともに新カードを追加したのであれば、展開自体はまだやるつもりだろう。
 「これまでのステージ」に別れを告げ、次へと進む「Stage Bye Stage」。最早この曲の歌詞が「モバマス」あるいは「スターライトステージとのお別れ」とまで解釈できる。イベントもご丁寧にNGと三属性ユニットの面々だ。
 来たる7thライブでは「属性を考慮しない」「お城を使わない」「シンデレラからの脱却」「これまでとはひと味違う」ステージを用意するそうだ。ライブをやるには曲が必要で、その準備もやはりデレステが中心だ。

 

 そもそも「シンデレラ」を辞めるのであれば、「シンデレラ城を出る」のであれば。「シンデレラガール」も不要ではないか。

 

 挙げればキリはない。この世界が見せている夢が「次」「変化」「未来」にシフトしている。こんな理由でモバマスは物語としても、ゲームとしても終了に向かっている。

 なので私は、モバマスも終わると考えている。情報を基に私に出来る予言は以上だ。私は割と常識的な立場を持ってこの記事を書いているつもりだけれど、これがハズれるパターンも勿論ある。

 

 あくまで、「まともな運営だったら畳む」という話をした。まともじゃなかったら来年も「完全にこの形」のままやってくれる。その時は運営に本気で感謝するといい。かなりの無理を通してくれているのは分かっただろう。
 実際、可能性がゼロな訳じゃない。パッションを支える為にりあむや藍子たちが頑張ればいいのだ。バランス自体は崩れている訳だが、彼女らのうち1人がなんやかんや属性3位を守ってくれる最低限の可能性自体はそんなに低くもない。そちらに賭けてくれるかも知れないので、その時は彼女たちを応援してあげて欲しい。

 

 もしくは総選挙がこのガッタガタのバランスと怪しい経済効果を維持したままGOサインが出るほど、あるいはただのお祭りとして開催し続けられるほど、モバマスデレステともにハチャメチャに儲けており、変わらずに総選挙をやってくれる説を信じてもいい。もう誰が上位に入ろうが問題ないです、CVはじゃんじゃか与えます、そう決めてくれているに違いない。そんな優しい未来を支持しても構わないけれど、このゲームはカネを動かすソーシャルゲームである、ということだけは忘れないで欲しい。

 

 そう盲目的に信じるよりかは、もう一つの仮説の方に望みをかけるべきだと私は思う。

 総選挙の「ルール変更」だ。これがうまく決まればバランスは回復するか、無視できるものになる。やりようはいくつかある。私がぱっと思いついたものを書いて置く。

 

 「更なる新カードの追加」。
 追加ドローだ。だがりあむのような前例が出来た為、彼女の程の瞬間火力は見込めないし、コストがかかるので現実的ではない。

 

 「既存カードを総選挙、もしくはデレマスから取り除く」。
 上と反対の操作になる。運営的に楽ではある。物語としても違和感はない。ただこれはデフレ調整になってしまうし、ゲームそのものからの削除に関してはユニットなんかの都合もあるので、あまり取りたくない手法だろう。

 

 「属性の再編成」。これが通れば話は早い。
 システム面で大きな操作が必要になるのだろうが、削除よりはマシだろう。信じられないくらい優しい調整なので、全身全霊で感謝するべきだ。

 

 「新アプリの登場」。
 モバマスと入れ替わりでやってくる。もっとセンセーショナルなものだと、デレステも終わって全員で新アプリにお引越しも考えられる。投票会場がガラっと変わるので、戦術もまた変化するだろう。面白い可能性のひとつとして頭の隅に置いておいて欲しい。実はそんなにありえなくもない。私は最近これを密かに楽しみにしている。

 

 「報酬内容の見直し」。妥当なのはこれだろう。
 CVを報酬から消してしまう。ただこれもデフレになる。こうして総選挙からボイス獲得組まで退場させてしまうと、結局カネが回らない。属性格差もさらに如実になる。同様の理由でCV総選挙の独立も考えにくい。やるとすれば報酬のボーダー吊り上げだ。「各属性1位の場合のみ」「属性無視で全体10位以内」とかだろうか。

 といった具合に、「この状態でCVが与えられていること」が変化すれば、属性バランスが崩れたままでも総選挙自体を継続できる見込みは多少ある。
 

 他にもやりようはあるだろうが、後は貴方の想像にお任せする。
 なんにせよ、「この形式」の第9回シンデレラガール総選挙だけは絶対にあり得ない。私は数字に基づいた至極現実的な話をしただけだ。

 モバマスが終わるか、総選挙だけが終わるか、ルールが変わるか。はたまた大穴、デレマス自体が終わるか。

 第9回総選挙が開催されたとしても、大きく状況や戦略性は変更されていることだろう。その総選挙を「従来通りの総選挙」と考えるかも含めて、その時を迎えたプロデューサーたちに任せるとしよう。


 《私の話》

 

 以下は個人的な話だ。


 という訳で、私は今回の総選挙が始まる何ヶ月も前から、総選挙は今回がラストであると考え続けていたし、結末も予想通りだったし、諸々を悟った上で踊っていた。

  私がこの話を黙っていたのは、本当に優しさのつもりだ。そのまんまの意味で「つまらない」だろう。「今回で総選挙は最終回です。開幕から閉幕まで全て運営の手のひらの上です。プロデューサーどころか荒らす側も含めて全員踊らされてます」なんて話をしても、相手にされる訳がない。仮に読み手が信じてくれたとしても、シラけさせたり虚無を与えたりして、ゲーム性や経済効果を阻害するだけだろう。だったら何も知らせないまま、アイドルたちや総選挙の結果に関して、ああだこうだと騒いで貰っているほうが幸せだろうと思っていた。

 

 私が終始これだけ楽しく踊れていたのは、最初に書いた通り「この4人が好きだから」だ。仮に私の予想が全て外れだろうと、記述に誤りがあろうと、どんなに疎まれたり、反対に相手にされなかろうと、次回以降総選挙を開催するのであれば、「この4人が引き続き上位レースに入り続けるしかない」ことに変わりはない。次回以降は「加蓮がCG筆頭候補かつ、りあむ、藍子、未央のうち誰か1人は、あるいは全員を上位に入れないとマズいゲーム」が続く。

 そして何より、「この4人を上位に入れないといけない展開」そのものを、運営が、プロデューサーたちが作ってくれる。だから私は向こう1年、このゲームと彼女たちの物語を楽しめる訳だ。好きなカードたちがメインとなるゲームが「継続」する。

 彼女ら全員が上位から引きずり落とされることはほぼほぼありえない。何億パーセントかの確率で全員まとめて引きずり落とされる状況になった場合でも、更なるインフレとか面白い展開が起こっていることになるので、経済効果や話題性のほうが復活している。なので総選挙終了予言は、「外れてくれる」ほうが私的にはおいしい。

 

 ただそこまで「理想的な」、こんなに最高のゲームが続く未来はやっぱり訪れないと思うので、きっと今回でおしまいだろう。寂しい話だ。

 といった理由で、半年前に新カードが追加された瞬間から、この結末を想定して、私は期間中にこのブログを作っておき、楽しく狂人を演じていた、という訳だ。

 

 最初の記事の目的を一言で言うのなら、本当に「面白くすること」になる。
 その後発生する現象に言い換えると、「パッションへの投票」だ。あれを読んで票先を選んでくれた方も居ると思うので、その票先を当てようか。パッションだっただろう。万が一加蓮に行ってしまっても私個人はそんなに都合は悪くない。簡単なマジシャンズセレクトだった。

 

 

 

 なんてことはない。

 私はあの日、「毎日は続かない」という話を、誰よりも早くにしておこうと思っただけだ。

 

 

 

 #毎日末期外伝