「坊主丸儲け」とはいかない住職の厳しい懐事情

収入は不安定な上に福利厚生も皆無だ

ですから、お寺に年会費を納めるというのは、檀家さんにとって、お寺の維持続の為の費用であると言えます。ちなみに、本堂の保険は店舗特約になってしまうので(お寺は店舗?)保険料も掛け捨てになります。なんとも世知辛いことでございます。

先ほど述べたように、不動産収入でも無ければお寺の収入というのは一定しません。高給かと言われると困ってしまうくらいの不安定さですね。「お寺さんだったらお金持ってるだろう」と見られがちですし、「税金払わなくてもいいんですよね?」という誤解に満ちた質問をされることも少なくありません。

「坊主丸儲け」とはいかない懐事情

また税金の面でもメリットだけではありません。固定資産税がかからないだけです。公益法人みたいなものだから、個人のものではないという考え方ですね。固定資産税が課されたら、明治神宮や浅草寺みたいな大きい寺でも潰れてしまうと思いますよ。

大きいお寺ですら大変なのですから、とくに都内の小さいお寺なんて軒並み潰れてしまうでしょう。だから、固定資産税が取られないというのと、法人収入が一定金額(8000万円)以上の収入でなければ法人税は免除になるというわけです。

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新興宗教で収入の大きいところは法人税免除が生きてくるでしょうが、寺の世界でそんな巨大な収入があるところは少数派ですし、不動産など副業を展開したりすると「営利事業」になっちゃうんですよ。たまにニュースになりますが、観光寺院や有名な神社でお守りとかお札とか、どこまでが宗教行為、どこまでが営利行為なのかという線引きは税務署の匙加減ひとつですね。

檀家200軒、250軒の世界では年収1000万円なんていかないわけです。法人として寺の収入が500万だとしてもそこから法人職員である住職への給与という形で払われるのでいろいろ引かれていきますから、個人に対して税制上の優遇というのはありません。

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  • 賞味期限切れのもやし40e6cb161a46
    もっとお金が欲しい。
    もっと周りからチヤホヤされたい。
    僧侶の皆さんは、こんな煩悩を捨てるために出家したのではなかったか。
    東南アジアのような信仰心の強いエリアと比べて、現代の日本の僧侶は尊敬もされていないし社会的な影響力もないが、それは彼らが信仰の為に日々精進しているリアリティが感じられないからだと思う。
    筆者は「僧侶は意外と稼いでいない」言い換えれば「僧侶はもっと金銭的な報酬を受け取るだけの価値がある」と主張しているが、市井の人間が自発的なお布施をしたくなる価値という観点で見ると、
    ・優れた宗教家であれば、そもそもそれほど金銭的な報酬に執着しないはず
    ・宗教家ではなく優れたマーケターであれば、もっと自分達のセールスポイントをうまく売り出している
    どちらの観点でも「お金を払うべき価値」を見出せないので、「僧侶は自分の価値に比べて稼げていない」という命題は一般論としては同意できない。
    up20
    down8
    2019/8/4 16:36
  • tori88f8c7943e45
    一部の観光系寺院の素行は問われるべきだし、税金が免除されているのは不平等。政治に深く入り込みすぎている問題のある宗教に対する宗教界としての自浄作用もない。これでは批判されて当然。
    up14
    down3
    2019/8/4 16:31
  • 蕎麦湯79cc06dcfba5
    成る程大変なんですね。
    ですが必然かな?寺が担う役割が薄れつつあり、存続が厳しいなら潰れるでしょう、むしろそうあるべきです。固定資産税がかからない、条件付きとはいえ法人税免除。利益が第一の目的では無いと言いつつ、霞を食べて生きて行けるわけではないのでしたら、住職も世俗の人。税金面での優遇はとても世間の理解を得られないでしょう。どうぞ世の荒波に揉まれて、生存競争を勝ち抜いてください。
    up16
    down7
    2019/8/4 17:50
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