唐突に集められたNPCたちの前で、ナザリック終焉が宣言されてすでに十分以上。
(彼らの主観で)涙ながらに喝采していたNPCたちは、主がアルベドと婚礼のくちづけを交わすと同時に、一斉に沈黙した。
唇が離れた時、さらなる喝采を――と、彼らは待っていたのだ。
だが、モモンガとアルベドのくちづけは、既に五分以上に及んでいる。
覆いかぶさったアルベドは、がっちりとモモンガを捕まえている。
モモンガの身を覆うのは体の前面がむき出しになるローブだ。
他の露出を抑えているのに、大きな乳房は先端をわずかに隠す程度でしかない。
下腹部すらギリギリまで露出されたその中に、アルベドの手は遠慮なく這い込んでいる。
いろいろと、気まずい粘液音が二人の間から聞こえていた。
モモンガの手足は数十秒ごとにガクガクと痙攣し、玉座から床にとめどなく液体が
何度か勢いよく流れた様子から、液体が一種や二種でないとわかる。
「…………」
多くのNPCたちが、すっと視線をそらす。
主がアルベドとこのような痴態を晒すのを、
見て見ぬふりをする情が、ナザリック守護者たちにも存在したのだ。
ナザリック――否、ユグドラシル終焉とあらばなおさらに。
享楽に溺れる主を、どうして彼らが咎められようか。
とはいえ、例外はいる。
「うらやましい……」
「モモンガ様、受け身だったっすかー」
ソリュシャンとルプスレギナは普通にガン見していた。
一般メイドたちにも少なからず、観察中の者たちがいる。
「ウソ! こんなのウソよん! なんであんなブスのアルベドが選ばれるのッ!?」
特別情報収集官ニューロニストは号泣していた。
そして彼女の悲鳴が、一人の静かなる怒りを覆い隠す。
(アルベド……コロス……)
シャルティアは激怒した。
必ず、かの邪知暴虐のアルベドを除かねばならぬと決意した。
シャルティアには主の意図がわからぬ。
シャルティアは第一第二第三階層守護者である。
妄想に耽り、
けれども、主の絶頂に対しては、人一倍敏感であった。
(アアア……またおみ足ををををを!!)
同性経験豊富なシャルティアの目には、モモンガが何度も絶頂しているのがわかるのだ。
白く艶めかしい脚がまた、跳ねる。
己やユリにも似た、青白い肌。
アンデッドの相を未だ保つ姿。
体型や角、翼はアルベドと同じ。
黒髪はアルベドの髪と絡み合い、溶け合ってすらいるようだ。
アルベドと互いに押しつぶし合う大きな乳房からは、
だが……欲望に染まり切ったアルベドと異なり、モモンガの貌は蕩けてなお気品がある。
官能に狂う仕草ひとつひとつに、羞恥が見え隠れし、初々しさすら香ってくるようだ。
しかも、
端的に言って最高であった。
最高の最高の最高であった。
かつての姿なら、シャルティアはモモンガを美の結晶と評しただろう。
だが、今やモモンガは美の有頂天、美の天元突破、美の永久機関、美の無量大数。
憎きアルベドに弄ばれ、よがる姿さえ、シャルティアを熱く疼かせる。
憎悪と殺意に囚われながら、なぜか己のスカートの中に手が伸びた。
濡れているし、あんな痴態を見せられて――と。
手が止まった。
――シャルティアにも、NTR趣味だけは目覚めてほしくないですねー。
――ハーレムができたらいっしょに楽しむ! これでしょ!
――えっ? 別にNTRがNGじゃないですよ! でもシャルティアがNTRで喜ぶのはちょっと。
――いいかい、シャルティア。想う人を奪われた時。怒りと憎しみに身を任せ、心に消えぬ傷を刻んだなら、NTR沼に沈んでしまうんだ。
脳裏に偉大なる御方、金色に輝くバードマンの言葉が蘇る。
(はっ、いけない! いけないでありんす!
これがぺロロンチーノ様のおっしゃっていたNTR沼……なんと恐ろしい)
ぶるりと身を震わせ、冷静を取り戻す。
冷静に、観察者の目で、二人の痴態をガン見する。
一度、二度と、繰り返し達するモモンガを見ていれば。
シャルティアに、余裕が戻りつつあった。
(ふっ、ふふっ、よく見ればアルベドはただ勢いに任せて一方的に貪っているだけ。
長く楽しもうとも、楽しませようともせず、乱暴に攻撃を繰り返すばかり。
そう、私ならもっと、モモンガ様をしっかり悦ばせてさしあげられるでありんす)
たとえしばらく、アルベドが楽しもうとも。
ナザリックの主たるモモンガ様が、たった一人の妻で終わられるはずがない。
正妃の地位を奪われても、真の寵愛は間違いあるまいと。
シャルティアは不敵な笑みを浮かべた。
(ああ、それにしてもモモンガ様。なんて感じやすい御体……私なら、あんな乱暴でなく、もっと繊細に、達するギリギリを見極めて攻め、一気に溺れさせてさしあげ……ああ、でもその前にあの御体、全身を隅々まで舐めまわさせていただきとうありんす)
もっとも、次第にいつもの妄想に溺れ始め、欲情しきった笑みに変わっていったのだが。
一方で。
玉座での行為は10分間に及び。
ようやく、唇が離された。
長い舌でさんざん嬲られたモモンガの口は、舌を突き出してアルベドの唇を追ってしまう。
そんなモモンガに、アルベドの全身からピンク色のおぞましいオーラが溢れ出していた。
「あふ……ふぁ……ふぇ? あるふぇと? ゆめ?」
繰り返されすぎた絶頂に、ぴくぴくと断続的痙攣を続けながら。
モモンガは蕩けきった顔で涎を垂らし、アルベドを見上げるしかできない。
彼女の異常な表情に、警戒すらできない。
「はぁはぁ……モモンガ様っ。私ごときを妻に選んでくださりありがとうございます。世界が終わるそうですが、終わる前に私たちの関係をより強固にすべく、このまま新婚初夜に移らせていただこうと思いますが、問題ございませんか? 問題ございませんね? はい、承知いたしました! 不肖アルベド、これよりモモンガ様にこの体捧げさせていただきますっ!」
ぐへへ、と擬音の浮かびそうな表情のアルベド。
早口で一息に、一方的宣言を行うと。
まさしくゴリラの腕力でモモンガを押さえつけ、自らのドレスを引き裂きながら。
モモンガのローブを無理矢理に押し開いた。
「~~~~~~~!!!!」
まさに絹を引き裂くような悲鳴が、玉座の間に響き渡った。
シャルティアよりの内容でした。
NPC勢ぞろいさせたせいで、いろいろキャラ描写せざるをえない状態が……。
病んだ目で見てるマーレも出そうか迷いましたが、話進まなくなりそうなので。
しばらくは、アルベド中心、シャルティアサブです。