入試問題は、無駄な回り道をしてでも、答えにたどり着くことが重要だ。
エレガントに解くことにこだわらない。

この問題は、模範的な解答はいたることろで公開されているが、途中で躓いてしまった解き方の例を示す。全然エレガントではないが、これでも正解になるはず(採点基準による)。地道でも、論理的に道筋たっていれば点数になるはず。時間との勝負もあるので、場合によっては、この地道な解き方で答案作成する可能性もあるはず。

もちろん、時間に余裕があれば、最短な無駄のない解法でエレガントに答案作成するべきだ。

問題

2016京大前期文系
第3問

nを4以上の自然数とする。
数2,12,1331がすべてn進法で表記されているとして、212=1331が成り立っている。
このときnはいくつか。十進法で答えよ。

とにかく地味な解法

とにかく、答えの当たりを付けておいて、答えらしきものが見えてきたら、論理的に漏れがないか確認して答案を作成する。

(問題にそんなことはかかれていないが)まずは、nが10以上になることはありえないとして考える。

この場合、答えの候補は、5,6,7,8,9となる。

1、2、3は何進数で表記しても1、2、3のままだ。
ここに注目すると、与えられたn進数の方程式を普通の方程式に書き換えることができる。

※以下、1331[n]のように最後に[n]をつけたら、n進法で表してることにする。
例えば、12[5]は5進数の12なので10進数では、7(十進数では最後に[10]をつけない書き方もあり]
n=6,8の場合
6進数でも8進数でも、1331[n]は奇数となるので(2のベキになりえないので)、まず除外。

n=5
地道に計算
2[5]=2
12[5]=7
1331[5]=125+75+15+1=216
これも除外

n=7
地道に計算
2[7]=2
12[7]=9
1331[7]=73+372+37+1=512
ビンゴ!

n=9
地道に計算
2[9]=2
12[9]=11
1331[9]=93+392+39+1=1000
除外

したがって、n=7が答えの一つだ。

ここで、答えが見つかったしかも、検算まで完了している。ヤッター!

いちおう、n10の場合も考えておく。もしかしたら、一個ぐらい解が残っているかもしれない。
n=10なら
2[10]=2
12[10]=12
1331[10]=1331

212=4096
題意(2[n]12[n]=1331[n]を満たさない。

n=11なら
2[11]=2
12[11]=13
1331[11]=1728

213=8192で題意を満たさない。

ここで、2[n]12[n]1331[n]よりはるかに大きくなっていることに気がつく。
(実は、n=10でうすうす気がついてるはずだ)

なので、n10の場合は、2[n]12[n]>1331[n]であって等号にならないことを示す。

ここがこの問題のコアなところだろう。
マークシート式ならn=7ですぐに答えに結びつくが、記述式であれば、それ以外に解がないことを示さなければならない。

2[n]12[n]>1331[n]を示すためには、n>7

2n+2>n3+3n2+3n+1
を示せば良い。
すでに、n=11までは示してあるから、それ以上のnに対して数学的帰納法適用だ。

n=k
2n+2>n3+3n2+3n+1
が成立していると仮定する。

n=k+1,k>7の時、

2(k+1)+2((k+1)3+3(k+1)2+3(k+1)+1)
=22k+2(k+1)33(k+1)23(k+1)1
>2(k3+3k2+3k+1)(k+1)33(k+1)23(k+1)1
=2k3+6k2+6k+2(k3+3k2+3k+1)3(k2+2k+1)3(k+1)1
=k36k6
=k2(k1)+k(k7)+(k6)
>0

なんとなくめどがついた。

あとは、これらの考えた内容をわかりやすく、書き直せばよい。

考え方のまとめ

  • ためしに、小さな数、4,5,6,7,8,9あたりで式の意味を確認する
    n=7が題意を満たす。
  • 問題をときやすい形に変形する(すべて十進数に変換する)
    2n+2=n3+3n2+3n+1となる正の整数nを求めれば良い。
  • 明らかに適さない解(n=偶数)を除外する。
  • n>7で解がないことを示す。
    2n+2>n3+3n2+3n+1を数学的帰納法で示す。

コメント

たまたまだと思うが、この問題では、2n+2=n3+3n2+3n+1 の右辺が因数分解できる。

2n+2=(n+1)3

この等式の正の整数解を求めよというのがこの問題と同値だが、素因数分解の一意性から
(n+1)は2のベキでなければならない。

このことから、整数解nの条件をかなり絞りこめることができる。