【芸能・社会】職員個人を攻撃する電話も… 【2日】津田大介芸術監督ステートメント2019年8月3日 23時11分
展示作品への抗議を受け、8月2日に名古屋市内で津田大介芸術監督が開いた会見で報道陣に配布されたステートメントは次の通り。サイトアドレスを削除しました。 ・河村市長が少女像の撤去及び「表現の不自由展・その後」の中止を求めた件について 「表現の不自由展・その後」という企画は、日本の公立美術館で、一度は展示されたもののその後撤去された、あるいは展示を拒否された作品の現物を展示し、撤去・拒否された経緯とともに来場者が鑑賞することで、表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、議論のきっかけにしたいということが展覧会の趣旨です。あいちトリエンナーレ実行委員会、表現の不自由展実行委員会、芸術監督である自分が企画内で展示されている作品に対して何らかの賛否を述べるものではありません。 ・展示内容についての行政の責任についてどう考えるか 展示内容の決定については、まず芸術監督がテーマを決定し、そのテーマに沿って作家の選定を行うことになっています。順番としては、ほかにもさまざまな作家を選んでいる中で、表現の不自由展(実行委員会)を提案し、キュレーター会議で協議を重ね、一作家として表現の不自由展という過去のグループ展が参加することが決定しました。表現の不自由展の趣旨については、県庁の関係部署や、施設側でも説明し、展示した際に起こりうるリスクについても事務局や県民文化局と調整してきました。 あいちトリエンナーレの企画をどのようにするかは芸術監督に一任されています。そして県の事業として、またたくさんの作家が関わる展覧会として、様々な確認や承認を経てそれぞれの企画が実現しています。 行政はトリエンナーレのいち参加作家である表現の不自由展実行委員会が「表現の自由の現在的状況を問う」という展示の趣旨を認めているのであって、「展覧会内で展示されたすべての(個別の)作品への賛意」ではないという立場です。その前提にのっとってお答えすると、行政が展覧会の内容について隅から隅までロを出し、行政として認められない表現は展示できないということが仕組み化されるのであれば、それは憲法21条で禁止された「検閲」に当たるという、別の問題が生じると考えます。 実はコンセプト文にも書かせていただいているのですが、この世の中のほとんどの事柄は白黒はっきりつけられない、グレーなものだと定義しています。そのグレーの濃淡を考えるという意味でも「表現の不自由展」を参加作家に加えています。 ただ、余波があまりにも大きい。分断がこれほどまでに進んでいて、その量によってまたーつ日本の表現の自由が後退したかもしれない、そうした実証になってしまっているように、今起こっていることを捉えています。 ・協賛企業についてどう考えるか トリエンナーレのテーマである「情の時代」やそのコンセプト、また男女平等や教育普及の試み、またこれまでトリエンナーレが育んできた文化的役割にご賛同いただき、協賛・協力してくださっている企業の皆さんには、大変なご迷惑をおかけし、あらためてお詫びをしなければならないと考えています。また、トリエンナーレに協力・賛同していただいているのは企業だけではありません。参加作家、地元の方々、ボランティアのみなさんを始め、トリ工ンナーレの開幕を楽しみにしてくださり、今回の件でご不安にさせていただいた方すべてに対してもそう思います。 ・安倍首相と菅官房長官を模した人物がハイヒールで踏まれている作品について このツイートを契機に、安倍首相や菅官房長官を侮辱する作品が今回の企画で展示されている誤情報がネットには流れていますが、事実と異なります。過去のあいちトリエンナーレで展示されたこともありません。表現の不自由展に展示されるすべての作品と解説についてはサイトで閲覧できます。 ・今後について この企画が報道された7月31日(水)から連日、事務局への電話が殺到しております。その中には、テロ予告や脅迫とも取れるようなものや、また電話に応対しただけの職員個人を攻撃するものも多く含まれています。また、事務局への電話は夜間にもなされ、その数は増え続けています。この状態が続き、来場者及び職員の安全が危ぶまれる状況が改善されないようであれば、展示の変更も含め何らかの対処を行うことを考えています。ただし、日本が、自国の現在または過去の負の側面に言及する表現が安全に行えない社会となっていることをそうやって内外に示すことの意味を、よくお考えいただき、自制的に振る舞っていただくことを期待しております。
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