彼女の瞳を曇らせたい   作:Momochoco
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誤字報告ありがとうございました。

ここはラウラのことそこまで恨んでいない世界


ラウラがオリ主を歩けなくさせた話 Ending:A

 シャルロットは言った。自分は罰を受けることに依存していると。

 ラウラは思った。その通りだ、罰を受けることであいつとの関係を感じることができたし何より罪を犯した自分が救われていくような感じがしていた。

 このままではいけない。今、彼の足が治れば罪は無くなりラウラは再び孤独になることへの恐怖にとらわれてしまう。

 

 足の治療法が見つかったということを伝えるのは決して簡単なことではない。それを言ってしまえば関係が変わり、元の状態には戻れないかもしれないからである。ラウラは廊下を行ったり来たりしながら思い悩む。どうするべきか考えれば考えるほど頭の中に熱が籠っていく感覚がする

 一旦、風でも浴びて考えをまとめるかと寮の屋上に向かうのだった。

 

 屋上には夏手前の心地良い風が吹いていた。備え付けられているベンチに座り空を眺める。昼は快晴であったため雲がなく月と星々がよく見えた。

 大きな夜空の下の小さなベンチで頭を下げ考える。

 

 そんなラウラの元に一人の少女がやってくる。

 

「なにを黄昏ているんだ。ラウラ」

 

「箒……なぜここに?」

 

「部活が終わって風呂に入った後でな。涼みに来たんだ。それにしても今日は夜空が綺麗だ。月も星も良く見える」

 

「そうだな……」

 

 

 篠ノ之箒とラウラ・ボーデヴィッヒの関係は決して悪くはなかった。転校初日やセシリアと鈴を倒した時などは一夏に続いて嫌悪感を抱いていた箒だったが、いまではラウラの真摯に償いをする姿を見て積極的に話すようになった。またどこか武人然とした性格の箒は軍人気質なラウラとの相性も良かった。

 

「……これは例え話なんだが、もし箒にどこにも行ってほしくない、ずっと側にいて欲しいと思う人がいたとするだろ?そういう時はどうやって思いを伝える?」

 

「くっふふ、まさか、お前に恋愛相談をされる日が来るとは」

 

「な!そんなんじゃ!」

 

「わかった、わかった。例え話だろ?簡単なことだ。口に出していえば良い。ずっと一緒にいたいとな」

 

「えっ?」

 

 思ってもいなかった答えに思わず驚きの声を上げてしまうラウラ。話を続けるように箒は自分の考えを言葉にしていく。

 

「思いというのは口に出さなければ伝わらないものだ」

 

「でももし断られたらどうする?そしたら一緒にいられなくなるじゃないか……」

 

「その時はその時考えればいい。何もせず受け身になるばかりでは何も掴めない。だから私は一夏に告白したんだ。まあ、私の場合は一夏に付き合ってほしいと伝えたら買い物に付き合うことだと勘違いされたんが……はぁ……」

 

「……そうか。ありがとう箒。私行ってくる!」

 

 月明かりの下ラウラは青年の部屋に向けて駆け出す。

 箒は誰にも聞こえないような小さな声で呟く

 

 

 

「まあ、脈なしではないだろうしな。がんばれよラウラ……」

 

 

 

 

 青年は一人部屋で備え付けの勉強机に向かい課題を処理していた。青年は運動も勉強もそこそこできるだけの普通の男子学生である。だが、一つ違いがあるとすれば普通の男性には扱えないISと言われる兵器が扱えることであった。そのため半ば強制的に子のIS学園に入れられた。

 最初は上手くいっていた学園生活だったがある日事件が起きる。暴走したISから友人を守るために戦い下半身不随という障害を負ってしまったのだ。非がないとはいえ暴走したISに乗っていた少女ラウラ・ボーデヴィッヒは償うように青年のために尽くしていた。

 

 最初はそれこそ恨んでいたが今は違う。ラウラが自分の身を削って奉公する姿は青年の心にも響いたのである。そしてラウラは青年にとって掛け替えない存在になった。

 だがそれと同時に懸念もあった。この償いはいつまで続けさせるつもりなのか、ラウラにはラウラの人生がある。自分なんかの世話に一生付き合わせるわけにはいかない。

 

 いつか終わりを告げなければならないと青年は思っている。

 

(ボーデヴィッヒさん……今日の朝から調子悪そうだったなあ。それに午後からの授業にも顔を出していなかったし、大丈夫かな)

 

 ラウラのことが心配で仕方なかった。

 それほどまでに青年の中でのラウラの存在というものは大きかった。

 

(ボーデヴィッヒさんの部屋に行ってみようかな……)

 

 そう思い立ち動き始めようとしたその時、部屋にチャイムを鳴らす音が聞こえる

 

「私だ。入っていいか?」

「ボーデヴィッヒさん!う、うん、もちろん入っていいよ!」

「失礼する」

 

 ラウラにいつもの位置に座るように促し、自分もその隣に着く。

 半日ぶりに見たラウラの顔色はいつもの白さではなく、温かみのある白に変わっていた。目元の隈も薄くなっている。

 

「ボーデヴィッヒさんの体調が良くなったようで安心したよ」

「織斑先生から休むように言われていたんでな」

「そっか。それは良かった。もう晩御飯は食べた?まだなら食堂にでも……」

 

「待ってくれ……私は今からどうしても話さなければならないことがある」

 

 いつも以上に真剣な顔つきのラウラ。思わず青年は息を呑む。

 

「……何かな?」

 

「実はお前の足を治す方法が見つかったんだ」

 

「えっ!?本当!……良かった。もう一度歩けるようになるんだ……」

 

 青年は心から喜んだ。もちろん歩けることになれるのもそうだがこれでラウラに負担を掛けずに済む。しかしラウラは険しい表情はそのままに腕を組んで考え込んでいる。

 自分の足が治ることに不服でもあるのかと青年は心配する。

 

「ボーデヴィッヒさんは……嬉しくないの?」

 

「嬉しいに決まっているだろう!……だが、だが心から喜べない自分がいるんだ!お前の足が治ればきっと用無しになった私は捨てられる……。私はお前と一緒にずっといたいんだ!これからも……ずっと……ずっと……」

 

「……ボーデヴィッヒさん。わかった、こっち来て」

 

 青年はラウラを自分の方に寄せると小さなラウラの手に自分の手を重ねる。

 今こそラウラを罪から解放するときだ。

 

「確かに僕の足が治ればボーデヴィッヒさんの手助けはいらなくなる。そして今度からはボーデヴィッヒさんとの関係も対等に戻る。それなら今度は友達になればいい。気兼ねなく付き合える友達にね。そして一緒に居たいなら好きなだけいればいい。だからどうかこれからもよろしく頼むよ、ラウラ」

 

 本心の言葉であった。青年はラウラに笑顔でいて欲しい、そのためにならいつだって一緒に居れるそれくらいラウラの幸せを願っていた。

 

「……うう……ありがとう、本当にありがとう」

 

 ラウラは車いすに座る青年に泣きつく。ラウラは思い出していた。自分がIS学園に来て多くの友人、シャルロットやセシリア、鈴音に箒、沢山の人が励ましてくれたことに。

 だから今度は自分が彼の友人になって共に歩むことにする。

 どんな時も離れはしない彼が望む限り、ラウラが求める限り

 

「ほら、もう泣かないでよ」

「……わ、わかった」

「……それといつまで扉の前で聞き耳を立てているつもりだい」

「えっ!?」

 

「……バレていたか。さっきのラウラが心配でな、つい」

 

 箒がそう言うと廊下から扉を通って代表候補生達が入ってくる。

 箒から事情を聴いた代表候補生たちはラウラが部屋に入った後に二人の会話を盗聴していたのであった。二人は分かり合えたことで一同はホッとしていた。

 

 その中で一夏がラウラの前に出て頭を下げる

 

「ラウラ、ごめん!俺変な意地張ってラウラのことを許せないでいた!」

「もういいんだ……一夏。私の方こそお前に酷いことをした……、だからこれで仲直りにしないか?」

「ああ!喜んで!」

 

 そう言って差し出したラウラの手を一夏は握り返す。

 そこには昨日まであったわだかまりは全て消え去っていた。

 

 

「まったくあんたらは青春してるわね、ってそれよりもうこんな時間じゃない!?食堂しまっちゃうわよ!」

 

「鈴ったら慌てないの。夜は僕と一夏と鈴で何か作るからみんなで食べよう?」

 

「それはいい案ですわ。私もぜひ腕を振るわせて――――――」

 

「ま、待て。セシリアは私と食器の準備をしていよう。うむ、それがいい!」

 

「そ、そうだな。料理の方は俺たちに任せてくれ」

 

 各々が行動を開始していく。

 今回のことでラウラを取り巻く不安は消え、信頼できる友だけが残った。

 そして彼もラウラも共に友人として一緒に過ごせることになった

 

 

「私も手伝いに行ってくる。お前はゆっくり待っていてくれ」

 

「わかったよ、ラウラ」

 

きっと二人は離れないだろう、その先に何が待ち受けていようとも……

 

 

Ending:A




箒さんの出番が書けて良かったです
これまでバッドエンドしか書いたことないのでハッピーエンドは大変でした
しかもそこまでハッピーではないという
Ending:Bは後ほど


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