彼女の瞳を曇らせたい   作:Momochoco
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1万文字超えて2万近くになるかもしれないので細かく区切っていきます

本編を読む前に目を通すべき3つの設定
・時間軸はタッグトーナメントから数週間後
・主人公は一夏の幼馴染 ただし名前は出ない
・ラウラは病んでる 主人公はラウラのことを恨んでいる



ラウラがオリ主を歩けなくさせた話
ラウラがオリ主を歩けなくさせた話 Part1


 

 ラウラ・ボーデヴィッヒの朝は早い。

 今日もいつも通り目覚ましが鳴る前に起きて止める。あまりに早い時間にセットしているため同室のシャルロット・デュノアが目を覚ましてしまわないようにという思いがあるためいつも少し早く起きる癖がついている。

 それと最近のラウラの眠りはあることが拍車をかけて酷く浅かった。ちょっとした物音で目を覚ましてしまうし、眠れたとしても夢の中で『あの日の光景』が何度も何度も思い起こされる。そのため眼帯をしていない右目の下には深い隈ができてしまっている。だがそんな病気ともとれる不眠状態についても特に気にしていないラウラだった。これは自分への当然の罰であると割り切っている。

 

 まずは顔を洗うために洗面台へと向かう。蛇口をひねり勢いよく飛び出した水を一度雑に顔にたたきつけ大きく深呼吸をする。さっきまで見ていた夢のせいで頭が酷く重く感じる。顔が熱を持ったように熱かったが少しだけマシになった。

 そのまま洗顔や歯磨き、軽い化粧などを済ませ身だしなみを整えていく。化粧については最近になってシャルロットに教えてもらい、最近ではラウラ一人でもできるようになった。

 ラウラはそれが良い変化かどうかは分からなった。ただ昔の自分では絶対にしないようなことだと考えると自分も変わったんだと自覚する。

 

 少し前までのラウラはまるですぐに噛みつく狂犬のような女性であった。自分の恩師である『織斑千冬』の顔に泥を塗った『織斑一夏』に一方的な敵対心を抱き、周りにいるもの全てに噛みつく。一言で言ってしまえば荒れていた。当時のことを振り返るといつも胸が苦しくなる。自分があのときこうしていれば……、そんな後悔の念が彼女を締め付けるのだ。

 

 準備を整えたラウラはシャルロットを起こさないようにそっと部屋を出る。ラウラにとってシャルロットは唯一といっていい友人だ。

 

(まあ、シャルロットにとっては私なんて目障りで、同室だから仕方なく付き合ってくれてるだけかもしれんがな……)

 

 自虐ではなく本心からそう思うラウラの心は病んでしまっていると言えるのかもしれない。

 早朝の廊下は静かだった。聞こえる音は自分の足音のみ。空気もどことなく冷たく身が引き締まるように感じた。

 

 そして少し歩いたところで一つの部屋に前に止まる。ラウラは前もってもらっていたスペアのカードキーを使い部屋に入る。

 部屋の中は酷く殺風景だった。備え付けの家具以外は置いておらず、見られる小物もシンプルなデザインと色合いをしたものばかりであった。その中でただ一つだけ目を引くものがあった。ベッドの横にある『車椅子』だけがこの部屋の主人の状態を暗示していた。

 ラウラはベッドの横に立つとそこに寝ていた青年をゆっくりと揺する。青年は閉じていた瞼をそっと開けると視界に写るラウラに挨拶をする。

 

「……んー、おはようボーデヴィッヒさん」

「おはよう。そろそろ起きる時間だ。いつも通りゆっくりでいいから体を起こすぞ」

「……うん、悪いけど今日もお願いね」

「お前が気にする必要はない。全部私が……私の罪なんだ……」

 

 ベッドから車椅子に移るその青年の足はまるで糸のない人形のように動かなかった。

 

 ラウラはそんな青年の姿から目をそらしたくなる。何故ならその青年の足を動かせなくしたのは他の誰でもない『ラウラ自身』なのだから。

 

 

 

 今から数週間前に行われた学年別トーナメントにおいてラウラの乗るIS『シュヴァルツェア・レーゲン』は突如として暴走した。理由はISの中に仕組まれていたプログラム『VTシステム』の暴走によるものだった。その際に対戦相手であった一夏とシャルロットはエネルギーが切れ追い詰められてしまう。その時、間に入ったのがラウラと抽選でタッグを組んだこの二人目の男性操縦者の青年であった。青年は決して強くはなかったがそれでも殺されそうになっている二人を助けたいという気持ちがあり、暴走するラウラに飛びかかったのだ。

 

 そこからは必死に時間を稼ぐことに徹していた。だがあと少しで救援が来るというところで遂には青年の乗るISのエネルギーが切れてしまう。暴走したラウラはそのまま青年をISごとアリーナの壁にたたきつけた。その後、教師の救援が来たことで何とか鎮圧することには成功したものの、壁にたたきつけられた青年は重症を負ってしまった。

 

 一命は取り留めたものの脊髄に損傷を負い足が動かなくってしまった青年。

 そのことを目を覚ました時に聞いたラウラは深い自責の念に襲われる。自分のせいでその青年の足を、そして未来を奪ってしまった。

 苦しい、吐き気がする、視界が定まらず頭痛がする。ラウラはその時のこと今でも鮮明に覚えている。止める医者を振り切りその青年の病室へと向かい必死に謝った。最初は恨みを持っていた青年もラウラの謝罪に何も言えなくなる。そしてラウラのことをなし崩し的に許すことにした。許しを出さなければ自害しかねない勢いだったからだ。

 

 それからのラウラは毎日のように青年の世話をしていた。朝も夜も関係ない、いつだって側にいて青年が困っているときに力を貸す。そんな生活を今まで送っていたのであった。

 

 

 

 今日もいつもと同じように、ラウラは青年の朝の準備を手伝いに来ていた。まだ車いすの生活に慣れない青年はどうしても時間がかかってしまう。それを助けることがラウラの朝一番の義務であった。

 最初はラウラの世話になることに抵抗を感じていた青年も今ではすんなりと受け入れるようになっている。

 

「よし、これで一通りの準備は済ませたな。さあ、朝食を取りに行こう」

「そうだね。いつもありがとねボーデヴィッヒさん!」

 

 青年の感謝の言葉にラウラは何も答えない。ただゆっくりと車いすを押しながら部屋を出ていくだけであった。

 

(私は……、結局自己満足でやっているだけだ……。ありがとうで嬉しくなるなんて……

 本当に醜くくてどうしようもないな私は……)

 

 



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