右前打の阿部がけん制悪送球で二塁に進み、代打・亀沢の犠打で三進し、京田のスクイズで決勝のホームに滑り込んだ。
「(スクイズは)ドキドキしましたよ。1本出て良かった」と胸をなで下ろした阿部は、この4打席目で規定打席に追いついた。開幕直後を除けば、長らく遠ざかっていたレギュラーの証明書。閉幕まで紙面の打撃成績表から、その名を消してはいけない。
さて、ここからが本題だ。6安打5得点の中日が、11安打4得点のヤクルトに競り勝った。僕はずっと、ひたすら、この日が来るのを待っていた。偶然だが、1日の敗戦後、与田監督はこうコメントしている。
「打率を上げるのではなく、野球は点を取らないといけない。点を取る方法を、ずっと春から模索しながらやっているけど、なかなか難しい」
誰もが知っているように、野球は得点を競う。得失点のもととなるのは安打数だ。今季の中日の戦いを「安打数と勝敗」で分類してみる。相手より上回ったのが、半分を超す51試合もある。37勝14敗。同数が10試合で4勝6敗。そして、この日のように下回ったのが36試合。強調したいのが3勝33敗という厳しい数字である。つまり、中日は安打数でいえば貯金が「16」もあるのに、14敗喫している。ところが下回るとほぼ試合も負けてきた。勝ったのは6安打と7安打で3-2の4月10日と、2安打と6安打で1-0の6月30日。僕が3度目を待ちわびていたのは、相手よりたくさん打ったのに、負けた試合でこの話を書くのはあまりにも切ないからだ。
本塁打の少なさは大きな要因だが、得点のもと(安打)で上回る試合が多いのは、素直にプラスにとらえていいはずだ。もとはある。そこから先の効率の悪さは得点圏打率が原因ではないと思う。3発で4点、1安打で決勝点。5本も少なくてつかんだこの勝利は、与田竜が歩むべき道を照らしてくれるはずだ。