東京電力福島第二原発の廃炉が正式に決定した。3・11を境に経済的に見合わなくなったこともあり、世はすでに「大廃炉時代」に入っている。出遅れを取り戻し、時代の先頭を走ってもらいたい。
福島県と県内の全市町村が、県内の全原発を廃炉にするよう求めていた。住民感情に照らしてみれば、当然のことではないか。
原発事故から八年余。東電は再稼働による収益改善にこだわった。「遅すぎた決断」との批判も、また当然だ。
廃炉決定の報告を受けた福島県の内堀雅雄知事は、安堵(あんど)の表情を見せたという。だが、本当に大変なのはこれからだ。
三基がメルトダウン(炉心溶融)を起こした第一原発と合わせて計十基。同時並行の廃炉事業は世界に例がなく、並大抵のことではない。完了までに四十年超とする東電の見込み通りに作業が進む保証はない。危険な作業に携わる人材が、将来にわたって確保できるかどうかも定かでない。
それ以上にやっかいなのが、廃炉に伴う“ごみ”である。
まずは使用済み核燃料。福島第二原発の燃料プールには、四基計一万七十六体が保管されている。搬出先は「今後検討」。とりあえずは空冷の金属容器に入れて、地上で厳重管理(乾式貯蔵)するしかない。
その上、廃炉解体によって生じる放射性廃棄物の総量は、五万トンを超えるという。どうすれば、福島は心から安堵できるのか。
核のごみの最終処分場を探し始めてかれこれ二十年。いまだ候補地が見つかる気配はない。
東電は、もう一つある柏崎刈羽原発の再稼働に前向きだ。しかし、こと原子力に関しては、未曽有の事故の当事者として、ごみ処理を含む廃炉事業に全力を傾注すべきではないか。
福島の事故以前に表明した三基を含め計二十四基が廃炉を決めた。
法律で定められた四十年の寿命が尽きて廃炉に至る原発は、今後も増える。なのに、政府は運転延長や新増設を視野に入れ、原発を「基幹電源」に位置付けたままである。時代遅れというしかない。
効率的な廃炉技術の開発や最終処分場の選定を政府も全力で後押ししつつ、再生可能エネルギーの普及を加速-。廃炉時代とは、そういう時代なのではないか。
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